74と同じタイトルですが、こっちは本力で……とか思っていたのに、変態の魔狼と泥酔オジサンの話になりました。なんで(涙)??
いつもより短い話なので(恥ずかしすぎてあえて)別枠にいれます。
夜空の星を見上げると、本郷さんを思い出す。
「力石よ。星はどうして輝いてるか、知ってるか?」
酒を飲むと、本郷さんは饒舌になる。
楽しくて、俺もついつられてしまう。
普段の生活では、考えもしない事を考えさせてくれるのだ。
本郷さんはすごい。
「……太陽の反射と……」
「おいおい、夢がないなあ」
「……夢って」
「あれ、蜂蜜で出来た飴玉なんだぜ」
トレンチコートを粋に着こなし、髪もきちんと整えて、かぶる帽子の角度も考える。
そんな格好いい本郷さんには、甘さと優しさが込められているのだ。
これに落ちない相手はいない気がする。
「蜂蜜って……宇宙で溶けないのか?」
「おお、力石。よくぞ聞いてくれた。宇宙はな、寒いんだよ……」
うっかり、納得してしまう。
本郷さんの言葉の響きには、深い説得力がある。
ただ、酔いが覚めると笑ってしまう事も多いのだけれど。
そこがたまらなくて、とてもいい。
「あれを蜂蜜と言うか……」
詮索はしない。
本郷さんだって、俺に対しては同じだ。
俺と出会う前の長い間に、きっとそんな話をした相手はいただろう。
さすがに今まで一人でいたとは信じられない。
強いて言えば、今は俺にだけ、だと嬉しい。
「せめて、あの星のどれかひとつ……」
そっと手を伸ばした。
星なんて掴める訳がない。
けれど、本郷さんの見ている物を見たいし、知っている事を知りたい。
この先も、ずっと一緒に食事が出来たらいい。
本当に、俺は本郷さんを気に入っている。
「ッキイッシ〜、アンポンタ〜〜ン……」
不思議な音程の歌らしき音が、俺の耳に届いた。
視線で追って、少し先をフラフラしながら歩く姿を見つけてしまった。
相変わらずの本郷さんだ。
「本……」
「リッキイッシ〜〜」
ご機嫌に酔った本郷さんは、ややガニ股で楽しそうに身体を揺らして歩く。
思わず見入ってしまった。
声をかけてもいいけれど、このまま見守るのも悪くない。
まるでストーカーだ。
「この時間にあの様子じゃ、無事に帰り着くか不安だな……」
本郷さんは、どれだけ酔っても家に帰ると言っていた。
あの言葉を確かめる、いい機会だ。
「よし。何事もなかったら、蜂蜜の飴でも差し入れしよう」
フードを深くかぶり直して、両手をポケットにつっこむ。
なるべく夜に溶け込むようにして、本郷さんの後を追う事にした。