忍者ブログ

おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

153 □ のんびりした昼間の話

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

153 □ のんびりした昼間の話

タイトルが……つけられなかった。
甘さ増し増し。いつも通り。

※ちょっとどころか、たくさん追加入れました。より甘い……





「本郷さん、マンゴー食べる?」
「なぬ? 帰っていきなりか」

甘くて美味いマンゴーは、果物の王様だ。
高級店の、普段なら絶対に買わないような美しい南国の奇跡を、実家に寄った時に貰った。
俺が実家に帰ると、家族は学生時代の俺を思い出すのか、やたらとたくさんの食べ物を用意してくれる。
ちゃんと食べなさいね、だの、もっと食べてもバチはあたらないよ、だの。
いまだに大事にしてもらっているのは嬉しくて、くすぐったい。
その気持ち、全部本郷さんにそそぎたくなるくらいに。

食べ頃のマンゴーは、丁寧に包んで本郷さんちに持って帰って来た。
まだ片付けてないこたつの上に、ひとまず袋ごと置いた。

「ぬ……お主、チャレンジャーだな」
「嫌いだった?」
「俺、食べた事ないぜ」
「ほんと?」

珍しい。
食に関しては、結構幅広く食べ楽しんでいる本郷さんが、マンゴーを食べた事がなかったなんて。
言われてみれば、果物を率先して食べている姿は見た事がない。
本郷さんの初めてだなんて、なんだか笑いが込み上げてくる。

「……何笑ってんだ?」
「いや、すまん。早速切るよ」
「え? 今ここで?」

驚いた声に時計を見た。
四時。
おやつの時間はとっくに過ぎたし、晩ごはんのデザートにはかなり早すぎる。

「ん……微妙な時間かな。本郷さんが食べる顔が見たかったんだけどな」
「……どんな罰ゲームだ」
「罰ゲーム?」

意外な反応だ。

「なんだかさ、もっと生臭いのかと思ってたぜ。あまり臭って来ないな。むしろ美味そうだし……」

青臭い木の臭いはあるかもしれない。
けれどマンゴーはすっかり熟している。
甘くて美味い匂いだ。

「正直……あの死んだ目が怖い」
「マンゴーの目?」

本郷さんが俺の顔を見つめた。

「……マンゴー……あっ!」
「何?」
「マンボウと間違えた」

一瞬、息が止まった。
マンゴーとマンボウ。
俺も言葉に出さずに繰り返す。

「似てるけど……あれ、あの魚って、こんな小さくなかっただろ?」
「……切り身かと……」

マンゴーが果物の王様なら、マンボウは海の王様と言ってもいい。
テレビでしか見たことがないけれど、あの不思議で大きな生き物は、広い海を悠々と泳いでいるのだ。
自由さは、本郷さんに似ているかもしれない。

「すまん! お主、おかしな事を言ってると思ったんだよ。持って帰るような物か? ってのが最初の疑問なんだけど……お主は力石だからな」
「俺だから?」
「なんでも出来る!」

あまりにも真面目な顔で言うから、俺の笑いのツボにハマってしまった。
最初は口を押さえて、声も堪えていたけれど、困ったような眉の本郷さんを見ていたら、もう止まらなくなった。
本郷さんは俺を最高に笑わせてくれる。

「な、何だよ……ちょっと間違えただけじゃないか。そりゃ、マンゴーとマンボウなんて、元から全然違うけど、聞き間違える事はあるぜ!」
「なんでもは出来ないけど……」

本郷さんがそう言うのなら、本当になんでも出来そうな気がする。

「なあ、本郷さん」
「何? 大笑いの力石選手」
「なんでも出来るんならさ、このままずっと一緒に住むのもアリだよな」
「へひょっ?」

本郷さんが変な返事をするから、また俺のツボにハマってしまった。
どうにも、笑いというのは、自分の意思では止まらないらしい。

「いい加減、落ち着け力石。笑い死にするぞ」
「死ぬって……ハハハ! このままだと、棺桶の中でも笑ってそうだ」
「怖い事言うな!」

ゆっくりと本郷さんの手が伸びて来た。
俺の頭を軽く叩いて、頰を撫でる。

本郷さんからの接触は、嬉しい。

そう思った瞬間、笑いが止まった。

「……お前な、スイッチのあるおもちゃみたいな止まり方したぞ」
「そいつはいいね。俺のスイッチのありかは、本郷さんだけが知ってる、みたいな?」
「バカ」

腹に入った二度目のパンチは、少し強かった。

これだけ笑えたのも、しばらくぶりだ。

「なあ、本郷さんよ。さっきの答えだけど」
「答えって……」
「まだ、なし?」

すでにもう一緒にいるみたいな生活だ。
ほとんど俺が、本郷さんちに入り浸っている。
日中はあちこちで出会うけれど、基本、交わらない生活は変わらない。
変わらなくてもいいから、この先、本郷さんとずっと一緒にいたい。

「……マンボウに決められるのは、不本意すぎるぜ。マンゴーにもな」
「間をとって、満場一致ってのはどう? マンボウイッチもマンゴーイッチも、響き似てるだろ」
「俺の冗談みたいなの言うなよ!」

本郷さんは、怒ってもないし、困ってもない。
とても嬉しそうな顔をしている。
その顔が答えだ。
これだけで十分だ。

「あのさ、本郷さん。俺もマンボウはまだ食べた事ない」
「マジか!」

本郷さんの目が輝いた。

「ということで、まずはマンボウ。見に行こうぜ」
「ぬぬ? 食べるんじゃなくて? 見るって、お預けか?」
「水族館がいいな。マンボウの人となりをよく知ろうぜ」
「人じゃないだろ。それに力石……水族館なんざ、そんなの……デ、デートみたいじゃん」
「デートだよ。そのつもりでさ。この週末にでもぜひ」

マンゴーも、どこかの植物園にはあるだろう。
すぐにでも検索だ。

本郷さんは、デートをぶつぶつと繰り返しながら、顔を真っ赤にしている。
今まで、普通にあちこち一緒に出かけていたのに、あれはデートと言えなかったんだろうか。

「たしかに。本郷さんと水族館とか、本格的なデートだな」

口にしたら、しみじみと嬉しさが込み上げてきた。
本郷さんと出掛けるなんて、たまらなく幸せだ。
行きたいところが増えるのは、単純に嬉しい。

「あ、力石よ。まずはそのマンゴー食べよう。果物の王様だ」
「そうだね」

本郷さんが大きく息を吸い込んで、ゆっくり吐き出した。

「マンゴーとホンゴー。マンボウとホンゴウ。よく考えたら似てるよな? ウッシッシ、こいつはもう、俺の側に持って来てやるぜ!」

それもオヤジギャグ、と言いそうになったけど、さっきの俺の笑いが、ようやく本郷さんに移ったみたいだ。
俺よりは大人しいけど、本郷さんの笑いも止まらない。

一緒にいて、これだけ笑いあえる人は、今までいなかった。

「マンゴーさん、大好きだよ」
「……ぬ? おい! 間違えるな!」
「じゃあ、マンボウさん、大好き」
「違う!」
「本郷さん」
「もう呼ぶな!」

と、叫んだ本郷さんが、ものすごくいいタイミングで屁をこいた。
捻り出すような重厚で低い音が長く続いて、猛烈に臭い。

「こ、こんな時に……男らしい屁が出た……」
「確かに。男らしかった……いつも可愛い音なのに、なんで今日は違うんだ?」
「いつもの事は忘れてくれ! 俺、屁ばっかりこいてるみたいじゃないか!」
「その通りだろ?」

顔を見合わせて、同時に吹き出してしまった。

「笑うな力石!」
「本郷さんは期待を裏切らない」
「何の期待だ! 屁か? いいからマンゴー食わせろ!」

俺の大好きな本郷さんは、本当にユカイで楽しい。
屁なんてなんでもない。
マンゴーも全部あげたい。

「食べるけど……もうちょっと、このままで……」

もがいて臭いを広げる本郷さんを、強く抱きしめてしまった。

拍手

PR

コメント

カレンダー

04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
pixivID 18019731
サークル 本郷格好委員会

1