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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

144 □ 屁

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144 □ 屁

不確定な妄想(部屋とか力石のタバコとか)が続いたので、ちょっと普通に王道なラブ甘を!
といいつつ、なんというタイトル……





まだ夜とは言えない時間なのに、外はとても静かだ。
今夜は本郷さんと、おやじさんの屋台のおでんを食べた。

どうやら本郷さんは、とても嬉しい事があったみたいで、おでんの玉子を食べたあたりから口元が緩みっぱなしだった。
屋台の客は俺と本郷さんの二人だったから、美人がどうとかも関係ない。

「宝くじでも当たったのか?」
「それなら今夜、屋台ごと奢ってる」
「……なるほど」

酒が入ると、口が軽くなる本郷さんだと思っていたけれど、今夜は貝よりも固い口だった。

黙って嬉しそうにしている横顔も、最高にクールだと思う。
本郷さんくらい格好いい人は、そうそういないだろう。


「おっと、屁が出たぜ」

静かな帰り道で、本郷さんは唐突に放屁した。
すっかり慣れた屁だけど、今回のは初めて聞く澄んだ高音だった。
春の日差しに小鳥が鳴くような軽やかさだ。

「……俺もすごい詩人っぽい……本郷さんが移ったみたいだ……」
「なんだって? 俺の真似? 屁でも出たか」
「道端では出ないよ」
「俺は出るぞ!」

ん、と軽くいきんだ本郷さんから、また高音が出た。
今夜は屁の音までご機嫌だ。

「本郷さんの屁は自由自在だな」
「そりゃ、屁くらい自由なものはないぜ」

なかなか詩的な事を言ってくれる。
格好いいだけじゃなく、本郷さんは感性と知識の幅も広い。
そばにいて、しみじみと見習いたいと思う。

「お、もう品切れだ」

まだ腹に力を入れていたみたいだ。
少し赤い顔に笑いが込み上げてくる。

「本郷さん、本当に今日、嬉しそうだな。俺にも教えてくれよ」
「……玉子がな、お主のよりでかかったんだ」
「え」
「おでんの玉子、同時に注文しただろ? 今夜のおやじさん、俺に大きなのをよこしたんだ」

ちっとも気がつかなかった。

「玉子はおでんの金塊だぜ? 宝くじ当たるより嬉しいよ」
「マジか」

大きく頷く本郷さんは、本気でそう思っているように見えた。

おでんの玉子。
俺も、本郷さんに負けないくらいの大好物だ。
そもそもお互い、玉子が好きすぎる。
玉子が好きで、本郷さんが好きで……やはり俺たちは、出会う運命にあったとしか思えない。

「本郷さん……」
「あ、ちょっとタンマ! 待って待って。やっぱ宝くじも捨てがたい」

一瞬で、大きく構えていた本郷さんが崩れた。
このバランスも最高にいい。

「ハハハ!」
「なっ……なんだよ、お主、笑いすぎ……」

ブリッと、今度は重厚な屁の音が響いた。
俺の笑いが止まらない。

「ぬ……」
「どうした?」
「……大丈夫。屁、だけ、だ……多分」
「おい」

神妙な顔になった本郷さんの手を引っ張った。
もうすぐ家に着く。

「早く帰って、トイレ……」
「風呂がいいかも」
「こら!」

冗談を言ってるのは、歩き方でわかる。
けれど、あまりにも笑わせてもらったから、今夜はこのまま、本郷さんのネタに付き合おうと思った。

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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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