連休前半も終わります。
本郷さんと力石、休みはどんな感じだったのか。
気になりながらも、適当な妄想で!
力石の弱点を発見してしまった。
真夜中、三時。
静かすぎて、世の中に俺だけしかいないような気になってしまう。
そんな事がないのは、遠くの方で聞こえる車の音でわかる。
よく耳をすませば、誰かがいるのだ。
例えば、俺の布団で眠っている力石。
昨夜、飲み足りない流れで俺が誘って、一緒に帰ってきた。
冷酒でいい気分になった後に飲むのは何がいいだろうと、冷蔵庫をあさっている時に、後ろから抱きしめられてしまった…のは、いつもの事だ。
「焼酎だろ、力石は」
「本郷さんに決まってる」
「酒の話だ!」
酔っている力石は熱い。
強引に振りほどいてもいいのに、その熱さが気持ちよくて、ついうっかり力石の手を追ってしまう。
力石は、俺が台所にいるほんの少しの間に布団を敷いていた。
もしかしたら、魔法でも使えるんじゃないかと思う早業だ。
「本郷さん、腰が痛いんだろ?」
「年寄りみたいに言うなよ」
本当に無駄がない。
無駄が。
「ちょっと、本気で……」
俺が色々考えている間に、力石はどんどん先に進んでしまう。
「……本気じゃない時って、ないけどな……」
甘い声で耳元をくすぐるのは、典型的な狼のやり方だ。
あとは大きな口が、パクリと俺を食ってしまう。
熱い狼。
力石は、俺が声をあげるギリギリのところで、手を緩めてくれた。
本気なのは、確かだろう。
近すぎる目の奥を見ればわかる。
力石は、舌でも語る。
俺だって負けてはいられないけれど、多分、かなわない。
「……さて、と」
静かになった夜から目が覚めた俺は、隣で眠る力石を見る。
俺が知る限り無防備な力石は、この時しか知らない。
「こいつは、悪いヤツじゃない……けど、寝相は最悪だ」
飛び出した手が、完全に眠っていた俺の頭を叩いたのだ。
さすがに、目が覚める。
ぼんやりと、その痛みを反芻していた時、今度は足が絡みついてきた。
二度目の熱のお誘いかと、じっと様子を伺っていたけれど、力石は起きる気配もない。
俺は、寝相のいい方だと思う。
泥酔している夜はおいといて、大抵、布団に入ったままの状態で朝を迎えるからだ。
あまり手足を布団から出した記憶もないし、枕を吹っ飛ばした朝もない。
パジャマだってきちんと着ている。
「……まだまだ子供って事か……」
力石は子供。
俺は大人。
不思議と味わい深い言葉だ。
色紙に書いて飾っておきたい。
「……ん……」
ごろりと、力石の身体が動いた。
腕が俺を捕まえる。
「ちょっと……力石……」
伸びてきた手が、危険な所に触れた。
「こら、起きてるんだろ、おまえ……」
慌てて鼻をつまんでやった。
寝相の悪い子供は、こうするのが一番だ。
「……んん……」
起きない。
手の力は抜けている。
握りしめられるのと、手のひらで覆うように触れられているのでは、どっちがハレンチじゃないんだろうか。
「パンツは最後の守りだな……」
「……何、が……?」
「ぬっ、起きてたのか!」
心臓が止まるかと思った。
さりげなく、俺も手を伸ばして、真似をしようとしていた瞬間だったからだ。
「おはよう、本郷さん」
「まだ朝じゃない」
「あ、そうなんだ」
力石がゆっくりと動く。
手と足が正しい位置に戻った。
離れるのは、少しだけ、残念……ではないけれど。
「もうちょっと寝る……」
「ああ、俺もだ……じゃなくて、あのな、俺、完全に眠ってたの。おまえに起こされたんだけど……ど?」
もう力石は眠っていた。
今のは、寝言の仲間だったのか。
「……寝言と話したら死ぬって……聞いた事があるぞ、おい、力石……いや、返事するな」
ゆっくりと、深い呼吸を聞いていると、俺のまぶたも重くなってきた。
そっと、力石の腹に手を置いて、俺も眠りを追いかける事にした。