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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

97□ 無自覚

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97□ 無自覚

甘いのを詰め込んでいるつもりの今月、捏造多すぎ……
最近ずっと本郷さんちに力石入り浸っている妄想ばかりですが、楽しいので続けます。
力本の醍醐味です。





力石は本当に不思議だ。
いつの間にか俺の家にいるのが普通になっている。

俺は長い間一人だった。
時々、思い出したように楽しい事はあったから、基本一人に不自由したり、淋しかったりした記憶はないのだけれど、そんな過去すらももう思い出せないほど、力石は日常だ。

無論、外で会うと、いつもと同じように戦いはする。
「それじゃ、また」
と言って別れていたのが、三回に二回は一緒に帰るようになっていた。
不思議な事に、それは少しも嫌ではない。


「本郷さん、風呂出たよ」
「おお……入る」

風呂上がりの力石は、半端に髪を乾かしながらも、モテ男のオーラをふんだんに放っている。
見ると目玉が溶けそうだ。
力石の髪をぬぐったタオルを欲しがる女体がいるかもしれない。

「……水も滴るってのは、その水が毒なのかもしれないな……」
「何の話?」
「……あっ、いや……今テレビでやってた……環境破壊のニュース……」

俺とテレビを見比べた力石が笑う。

「爆乳温泉若女将、やってなかった?」
「何だそれ? そういうの、先に言えって!」

慌ててテレビのリモコンを掴んだ。
しまった。今、テレビはついていなかった。

「冗談だって。そんなのやってたら、俺も本郷さんと一緒に見てる」
「モテ男が何を……そういうの、モテない独り者に譲れよ」
「誰の話だよ」

力石が俺の隣に腰を下ろした。
今着ているパジャマは、先日俺が、新しいのを買ってきたヤツだ。
今度はサイズもぴったりで、見ていて気持ちがいい。

今度は、という事は、前回があったという事だ。
それはもう忘れたい。

「なあ、この柄、落ち着かないんだけど……」
「似合ってるじゃないか。おまえのためにあつらえたみたいだ」
「……本郷さんが選んだってのは、嬉しいけどね」

最初のパジャマは、上着が少し小さかった。
返品を考えた俺に、力石は
「パジャマ着なくてもいいんじゃない?」
と、飛び上がるほどハレンチな事を言い出したのだ。

「風邪は万病の元って言うだろ。万病のまは、パジャマのマだ」

その瞬間、吹き出した力石の笑いは、しばらく止まる事がなかった。

それから買ってきたのが、今日のパジャマだ。
町の商店街の服屋で、あえて長い間売れ残っているような柄を選んでみた。

一人の長い俺と重ねた、高度な情報が詰め込まれているのだ。

薄い水色の生地は悪くない。触り心地もよくて、とてもよく眠れる。
問題は柄だ。
カルガモの赤ちゃんがぐるりと身体を一周しているという物は、誰に向けて作られたのか分からない。

しかし、そんな柄でも、力石は格好よく着こなす。
カルガモたちも嬉しそうに力石を取り巻いているようにしか見えなくなってきた。

「一緒に入る?」
「へ? 何……?」
「さっきから、風呂に入ろうとしないから、このまま寝るのかなって」

まだ熱い手が伸びてきた。
この間、同じ状態で、布団に押し倒された記憶が蘇る。

「ちょっと待った! タンマ!」
「何……」
「カルガモって……食べないよな?」

力石の動きが止まった。
効いた。

「少なくとも、俺はない」
「……力石にもない事があるのか!」

新鮮な響きだった。
思わず嬉しくて、力石の手を握りしめてしまう。

「本郷さん……」

あっと言う間もなく、力石の腕の中にいた。

「カルガモが……」
「きっと暖かいと思うよ」
「羽毛か!」
「本郷さんよ」

じっと目を見つめられて、言葉が止まってしまった。

風呂上がりの力石は、いつもより体温が高い。
パジャマの柄でしかないカルガモも、この熱ですぐに大きくなりそうだ。

「……カルガモ鳴いて……うるさいパジャマだったらごめん……」
「うるさい? これが?」
「ぬおっ! 力石!」

不意打ちの口唇は、必ず耳元を狙ってくる。
声にならない声が漏れる。

「ちょっとだけ、止まらないけど、いい?」

優しくて、熱い力石の声がわずかに震えた。
逃げようと思えば、いつだって逃げられるのに、俺の身体は動こうとしない。

好きの代わりに、馬鹿と呟いてやった。






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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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