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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

96■ 風の強い日

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96■ 風の強い日

※ 当初「手」というタイトルでした。ちょっと修正してます。


二人とも、地に足をしっかりとつけているので、多少の風に吹き飛ばされる事はなさそうですが、そこで我慢比べしたら、本郷さんが先に負けそう……
いや、ちらりと限界の本郷さんを見た力石が、さらっと「負けたよ」って両手あげるかな?
格好よすぎて死ぬ!!!

(こういうのを呟いてますが、今回の話には関係ないです……すいません……)





今日は風が強い。
日中、屋内にいた俺は、今になってこの天気を味わっているけれど、本郷さんはどうだっただろう。
トレンチコートで寒さは感じないだろうけど、帽子は飛ばされたりしないんだろうか。

「うおっ! 俺の帽子が! ちょっと待ってくれええ!」

そう叫んで、手足をばたつかせる姿が目に浮かぶ。
少し、笑ってしまった。

そもそも、本郷さんが何をしているのか、そんな簡単な事すら俺は知らない。
勤め人なのか、会社を経営しているのか。
事務仕事なのか、営業なのか。

いっその事、殺し屋とかでもいい。

「……殺し屋か……意外と腕はいいのかもしれないな……」

本郷さんの事を考えると、絶対に俺は笑ってしまう。

「あうっ」
「……おや」

駅からゆっくりと歩いてきて、八割気持ちがもつ焼きに傾いた途端、本郷さんに出会ってしまった。
角を曲がった所にいるなんて、今時漫画でもない状況だ。

「あそこ?」
「力石も、か……」
「こんな風に風が強い日は、なぜかもつ焼きの気分でさ」
「おお、俺もだよ……」

帽子の下に目が隠れる。
少し尖った唇の先が見えた。

「一緒に行く?」
「そうだな」

怒ったのかと思ったのは一瞬で、もう口元は笑っている。
さりげなく覗き込んだ目も、いつも通りだ。

「もしかして、他に約束があった?」
「……あったらここに一人じゃないと思うぞ」

無粋な事を聞いてしまった。
怒らないのが本郷さんだ。

「そりゃそうか」
「俺の事よりさ、力石は?」
「そのまま返す」

ふうん、と、本郷さんが呟いた。

「あ……」
「何? 何よ?」

まっすぐ見つめて笑ってみる。
慌てて帽子を押さえた本郷さんが、俺から避けるように、一瞬身をそらした。
浅くも深くも、帽子をかぶる本郷さんは格好いい。
その格好よさに詰め寄る楽しさも、また格別だ。
わざと、顔を近づけてみた。

「おいっ……」
「本郷さんって、今、ちっとも酔ってないな?」
「今から飲むんだぞ。酔ってたらびっくりする」

今から酔う本郷さん。
新鮮な気がした。

「それじゃ、俺も今から酔う」

どうせなら、一緒に楽しみたい。
そう思って言っただけなのに、本郷さんの顔がものすごく明るくなった。

「いいねえ。今から酔う力石か。ぜひ俺に拝ませてくれ」
「どうぞどうぞ」
「……ぬ。酔わない余裕が感じられるぞ。力石は油断ならぬ」
「そんな事ないだろ」

不思議だけれど、本郷さんになら、どんな姿を見られても平気な気がする。
当然、泥酔する気は毛頭ないけれど。

「……今夜の俺はな、もつ焼きをどう攻めるか、真剣に考えてきたんだ」
「へえ、何から食べる?」
「そりゃ、せっかくだから……」

両手で説明してくれる。
忙しそうに動く指と、手の平。大きく広げてくれて、手相まで覚えた。

「……しまっ、た……陣立を……うっかり……」
「本郷さん、金運、いいね」

聞き取りにくい独り言を解読するのも楽しいけれど、つい見えた手相が気になった。

「え、マジで? 宝くじ当たった事ないぞ?」
「運命線も太くて……いい手相してる」

俺が言った途端、本郷さんはその手を隠してしまった。

「何? 俺、嫌な事を言った?」
「なんか……ちょっと恥ずかしくなっただけだよ」
「手相が?」
「俺の……全てを見透かされているようで……」

手相なんて、素人の俺には見てもさっぱりわからない。
本郷さんの手がよくて、適当に言っただけだ。

「そんな事になったら、逆に俺の全部も見せてあげるから」
「全、部……って、な……ぬ」

何を想像したんだろう。
本郷さんが真っ赤になる。

「もつ焼き、早く行こうぜ」
「お、おお! そうだ、俺はもつ焼きで天下をとる!」
「……食べ比べする? いいよ」

目まぐるしく変わる本郷さんの表情は、気まぐれで変わる風のようだ。
今夜、本郷さんに会えて嬉しい俺は間違っていない。

「とりあえず、店に入ろう」

風はまだ強く吹く時がある。
寒くはない。
本郷さんといると、何の気にもならない。

もっと大風が吹いて、飛ばされるような状態でも、きっと本郷さんはもつ焼きの事を考えているだろう。

楽しすぎる。

「一度バラした手の内は……」

俺はすでに食べる物を決めている。
いつものように注文するだけだ。
そこに本郷さんがいると、少し流れが変わってしまうかもしれない。
けれど、それが人と一緒に食べる楽しみだ。
俺はずっと、本郷さんとだけ、この楽しみを味わっていたい。

「本郷さん、酒は……」
「何をいくかだっ! いざ、尋常に……」
「ジンジャー? ああ、生姜ね。いい所に目をつけるなあ」
「い、いや……あ、そう?」

へへっと笑った本郷さんの顔が、ものすごく可愛くて、一瞬だけ、年上だという事を忘れてしまった。






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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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