楽し過ぎて(可愛過ぎて)しばし、力本が続きました。
ラブに近付く本力も、激しく萌えるな〜〜と、贅沢な幸せにニヤニヤしながら、甘さ増し増しで。
今日は夕方に本当さんと出くわして、何が楽しかったのか、二軒目まで付き合っている。
本郷さんが俺に付いてきたのか、俺が本郷さんに付いて行ったのか。
非常に大事な事なのに、正直そこは覚えていない。
ただ、何度か繰り返した、コップを重ねる音がとても気持ちよかったのだけは間違いない。
本郷さんと飲む夜は楽しい。
さっきは目の前に座っていた本郷さんが、今度は俺の隣に座っている。
ぐっと距離が近づいた感じがして、隣り合わせに座るのも悪くない。
正面から見る男らしい顔も、隣で見る繊細そうな大人の顔も、カウンターで腕が触れるほど近いのも、全部本郷さんだからいい。
「聞いてくれよ、力石。この間俺、スマホ落としたんだ」
「え? 大丈夫だった?」
唐突な話題だ。
さっきまで色々話をしていて、まだ話題が尽きない。
こういうのも相性のひとつなんだろうか。
それなら、俺と本郷さんは最高に相性がいい。
「俺の落とし方がうまかったのか、奇跡的に傷ひとつなかったんだけどな」
「そいつはよかった」
「あの絶妙な落とし方、力石にも見せたかったぜ」
俺の父親が、買ってすぐに足元に落とし、画面をヒビだらけにして母親に叱られていた。
実家に帰っていてその話を聞いた時、ふと本郷さんを思い浮かべたのだけど、そんな風にならなくてよかったと思う。
「けどな、落とした時、一緒につけてたお守りは欠けてな……」
「お守り?」
「小さい猫の。すみっこの所につけてたんだよ」
言われてみれば、覚えがある。
俺と一緒にいる時の本郷さんは、飲んでる最中にスマホを持ち出すような野暮な男ではなかったから、ふとした時にしか見せてもらえてない。
たしかに、小さな何かはついていた。
「ああ、あれ、猫だったんだ」
「そう。強力な縁結びのヤツだぞ」
よかった、と言いかけて、言葉が止まった。
本郷さんが、そこまで誰かとの縁を結びたいと思っていたとは。
「意外……」
「何が?」
「本郷さんが、縁結びっての……」
「そう?」
取り出したスマホの丸い角をそっと撫でている。
改めて、じっくりと本郷さんの持ち物を見る。
小さな猫だった。
本郷さんの言う通り、尻尾が折れて、なくなっていた。
本来、長い尻尾がついていたのだろう。
つくづく残念だ。
俺だって、大事に撫でる事くらい出来たのに。
「尻尾か……」
「さぞかし痛かっただろうと思うと……」
こういう時、本郷さんの優しさを感じてしまう。
俺ならすぐに捨てていたかもしれない。
猫のついでに、指先と、爪の形をじっと見てしまう。
俺は、本郷さんの手の動きも、手自体も大好きだ。
「なかなか効くんだぜ。だって、今夜も力石に会っただろ」
まっすぐに言われて、酔いが回るかと思った。
もしかして、俺に会うためにお守りをつけていたんだろうか。
微妙に願う方向は間違っているような、縁結びだけれど。
時々、本郷さんは眩しい。
おおらかで、楽しく、格好いい大人。
憧れてしまう。
「……なるほど……たしかに。珍しく、二軒目だもんな」
「そうそう。力石が付き合ってくれるとは思わなかったよ」
「俺の方こそ……」
猫のお守りが呼んだのだろうか。
「俺もつけようかな……」
「お、いいぞ、いいぞ!いくらでも真似てくれ!」
俺とお揃いになるのが、そんなにも嬉しいのか、本郷さんは三度頷いて笑顔になった。