本郷さんは寝相よさそうですが、日中あれだけ手足を忙しく動かす人だから、たまにはその延長で夢の中もバタバタしてるかも? という、ふとした妄想から。
また短い力本です……ラブ増し。
夜中の本郷さんはよく動く。
朝になったら、何事もなかったかのように、きちんと眠っているのだから、不思議な寝相だと思う。
眠っている時に足で蹴られた事もあるし、布団から飛び出した手で叩かれた事もある。
寒かった冬の間、豪快に布団から転がる本郷さんを冷えないようにと、何度抱きしめて眠った事だろう。
本郷さんの家に泊まるようになって、半端に起こされるのはいつもの事だけど、これも一緒に眠る醍醐味だ。
一人じゃ絶対に味わえない。
夜だけど、朝に近い、不思議な時間。
俺は、忙しく眠る本郷さんと一緒にいる。
「……へっ、た……はらぁ……」
唐突に本郷さんが喋った。
「……腹?」
口元が動くのに、起きない。
思わずそっと、額に触れてみた。
「りきぃし……その鳥、食べるな」
「……食べてないよ」
「いや、力石が食べた……」
「……本郷さん、起きてる?」
じっと、その目が開かないか、見守る。
全く、動きはない。
久し振りに、完璧な寝言を聞いた気がする。
本郷さんの寝言は本当に楽しい。
どんな夢をみているのか、気になって仕方がない。
もっとくっついて、同じ夢が見られたらいいのにと、何度試してみた事か。
残念ながら、まだ叶った事はない。
このまま一緒に眠っていれば、いつか叶う夢だろうか。
……この夢と、本郷さんが見ている夢は、違うような気がするけれど。
俺の努力を本郷さんは全く知らないのだ。
考えてみれば、人の寝言を聞くなんて状況になった記憶がない。
眠る時は一人。
ゆっくりと、何も触れない状態じゃないと落ち着かない。
そう今までの俺は思っていた。
それが、本郷さんと出会って、何もかもが変わった。
一人で眠るのは淋しい。
寝相の悪い本郷さんがいないと眠れない。
こんな風に変わった自分が、とても不思議だと思う。
「何を食べてるんだろうな、鳥って。昨夜の晩は、豚肉だったぞ……」
本郷さんが楽しそうに食べている姿が好きだ。
これほど表情が豊富な人もなかなかいない。
優しく見守っていたいけれど、ついからかってしまう。
「本郷さん、それ、俺も食べたい」
静かに、耳元で囁いてみた。
眠っている時、どこまで声は聞こえるんだろう。
「……こっち……食べろ……」
伝わった。
完全に眠っているのに、本郷さんが笑う。
本郷さんくらい、優しい人もいない。
「……ありがとう。食べるよ」
一瞬、本郷さんを食べてやろうかと思って、伸びかけた腕を真剣に抑えた。