忍者ブログ

おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

83 □ 視線の先

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

83 □ 視線の先

暖かくなったと思いきや、なぜか風が冷たい今日この頃。
本郷さんは文句を言ってそうですが、静かに笑う力石にたしなめられるんでしょう。
ラブ。





少し寒さを感じる夕方だった。
俺はいつものように今夜の店を目指して歩いていた。
なんとなく鍋が食べたい。
うまい鍋をゆっくりと、熱燗で味わうのも悪くない。

そう思いながら、角を曲がった時だった。

目の前に、見覚えのある後ろ姿があった。
トレンチコートと、多分かぶる角度も考えているだろう帽子と。

「本郷さんだ……」

それが、背筋を伸ばして、握りしめた拳をリズミカルに振りながら歩いている。
とても嬉しそうだ。
見ているだけで安心出来る。

「本郷さん、どこに行くんだろ。声をかけて、一緒に鍋もいいかも……」

追いかけようと、少し足を早めた時だった。
ふと、目の前の本郷さんの足が止まった。
そのあたりに店はない。

「……?」

本郷さんが、少し先を見つめている。
俺もじっと見つめてわかった。
知らない人がいた。

「ん?」

よく見れば、その人はグレーのパーカーを着ていた。
身体つきに何となく覚えがある。

もしかして。

何やら小声で叫んだ本郷さんが、首をすくめた。
じっくりと、伺うような姿勢だ。

わかった。
本郷さんは、先を歩く人を、俺だと思ったのだ。
あれは俺じゃない。
こっちが追いかけて、本郷さんを捕まえなくてはならない。

なぜそんな風に思ったのか。

止まっている本郷さんに追いつくのは簡単だった。

「本郷さん、こんばんは」
「……ぬ……えっ? 力石!」

背後から声を掛けた俺を見て、本郷さんは確実に五センチは飛び上がった。

「何? 何で? お前今、あそこにいたじゃ……あれ?」

どんどん歩いて行く背中と、本郷さんの目の前にいる俺を見比べて、口をパクパクさせている。

「あの人、俺だと思った?」
「え……違……あ、そういう事か!」

一瞬で、身体の力が抜けたようだった。
本郷さんが、大きなため息をつく。

「おいおい、昨日会ったばかりだろ? 普通、見間違えるかな」
「いやっ、見間違えたんじゃなく……そう、勝手に俺に思い込ませたんだよ、力石が!」

謎の言い訳だ。
けれど、真面目に考えて、真面目に答えようとしているのが、この表情でわかる。
すごく、可愛いと思ってしまった。

「なあ、あの人が俺だったら、追いかけてくれた?」
「……お前が勝手に俺の先を歩いてただけだろ……」
「ふうん……」

口唇が尖っている。
本郷さんが嘘をつく時の癖だ。
こんな些細な仕草がわかるほど、俺は本郷さんを知っている。

「本郷さん。今夜、鍋を食べないか?」
「えっ」
「ちょっと寒いから、熱燗と合わせて」

男らしい眉毛が揺れる。

「……俺と、同じ夜か……」
「ほんと? なら好都合だ。一緒に食べよう」

軽くその肩を叩いた。
力の抜けた本郷さんに、新しい力を注いでいる気分だ。
見る間に、その背中が真っ直ぐになる。

「俺が、確実に俺が、先に歩いてたんだから……力石が真似っ子の夜だよな……」
「何?」
「い、いや! 今の、前行く人が力石じゃなくて、本当によかったよ」

本郷さんが笑顔になった。
俺も、一緒にいられて嬉しい。

二人して、立ち止まったまま、笑い合ってしまった。




拍手

PR

コメント

カレンダー

03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30

プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
pixivID 18019731
サークル 本郷格好委員会

1