色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。
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ただいまコメントを受けつけておりません。
うっかりすぎてしまいましたが、それも本郷さんらしい、という事で。
力石は全く気にしない男らしさが実にクール。
(今更エイプリルフール?って感じですが…まあ、仲良しな二人の日?)
落ち着いて、まずはビールと飲んだその時、本郷さんが呟いたのだ。
「何を……」
「ニュースで言ってた。外歩く時は、酔いすぎ注意だと」
あからさまにわかりやすい嘘をつく。
本郷さんの中では、俺の反応を勝手に想像しているのだろう。
「その酒って、ビール? 日本酒? それとも洋酒とか?」
「えっ……」
「それによってはさ、ずっと外にいてもいいかもしれない」
さっきまで嬉しそうだった唇が、震えている。
別に、本郷さんにショックを与えたわけではなかったのだけれど、この答えは考えてなかったみたいだ。
(本当? そいつは気をつけないといかんな)
(ハハハのハ! 力石、信じたのか! エイプリルフールだぞ!)
「……ハハハ!」
笑い声が聞こえてきた。
俺の方こそ、本郷さんの反応を勝手に想像して、思わず笑ってしまった。
「何、笑うんだ……」
「本郷さんが可愛いから」
「可愛……格好いい、だろ」
飲み屋でバレバレの嘘をつく目の前のオジサンが格好いいとは。
世界中に問いただしてもいい。
「本郷さん、酒の雨が降るなら、ここで肴を包んでもらって、一緒に行こうよ」
「いいな……いや、ちょっと待っ……」
「酒が降るまで、俺に付き合って。もしかしたら俺、泥酔するかもしれないし」
「力石が、泥酔……」
ゆっくりと、本郷さんの顔がにやけていく。
「仕方ないなあ。力石は若いし、まだ酒の飲み方もよくわかってないんだろ。食の陣立が完璧でも、人間、それだけではダメな時があるんだ。そこに行くと俺は……」
「本郷さん、一緒にいたい」
「おお、俺も!」
本郷さんに伸ばした手を、ぐっと握りしめられた。
色気も素っ気もない力が、実に本郷さんらしい。
俺が抱きしめると、もがいて逃げようとするくせに。
「ああ! 早く酒、降ってこないかなあ」
店を出て、本郷さんの家に向かう。
自分のついた嘘なのに、本郷さんは何度も空を見上げた。
その度、身体が傾いて危険な状態になる。
「本郷さん」
「へ?」
「手」
「……手?」
「貸して」
軽く握りしめるように見せかけて、グッと引き寄せた。
本郷さんとの距離がなくなる。
「おい、力石」
「危ないから手をつないで帰ろう」
「酒……」
「……酒が降ってきた時は、離してあげる」
こんな間近で、こんな嬉しそうに笑われたら。
「力石……!」
思わず、強引にキス、していた。