寒いので、ちょっとでも暖かい妄想を……!
そして、イチャイチャ度も高めてみました。
力石は何がなくても本郷さんのところにいればいいと思う。
屋根にあたる雨音で目が覚めた。
外はまだ暗い。
本郷さんを眠らせて、一人で風呂に入り直した時にはもう雨の音がしていたっけ。
「……今からこれだと、今日はずっと雨かな……」
いつもより遅い時間に本郷さんと出くわして、一緒に飲んだ。
駅で別れるつもりだった。
「力石、ちょっと俺んち、寄るか? 実は九州の土産がある。一人じゃ食べきれない」
なんて言われてしまったら、ついて行くしかない。
「本郷さん、九州に行ってたんだ?」
「そうなんだよ。この寒い時にな」
「九州は暖かいだろ? ずっと南の方なんだし」
「いや……なんか、寒かった」
身体を震わせる本郷さんと並んで歩く。
お互いに、速度を合わせている訳でもないのに、同じような動きになる。
腕がくっつきそうになって、思わず離れた。
ここで触れたら、抱きしめてしまいそうだ。
「わかった。九州には力石がいなかったからだ」
「俺?」
思いがけない答えに、思わず声がひっくり返りそうになった。
そんな、本郷さんみたいな真似は出来ない。
「力石って、体温高いよな?」
「……初めて言われたよ」
俺は、本郷さんと眠る。
たしかにあの布団は暖かいけれど、本郷さんの熱だと思っていた。
「ほら、手。貸してみろ」
右手を突きつけられて、俺からもそっと差し出す。
握手よりも深く、指を絡める。
「あったかいぞ、やっぱり力石だ」
「……本郷さんこそ」
間近で見つめあってしまい、思わず吹き出した。
本郷さんの目には力がありすぎて、疚しくもないのに、ついそらしてしまう。
「本郷さん。土産で飲み直ししてもいい?」
「大歓迎」
「酒はある?」
「……どれだけ飲む気だ……」
「そうは言うけど、いつだって本郷さんの方が飲みすぎるだろ」
「ぬっ! そんな事はないだろ……じゃあ、今夜は飲まん!」
口を尖らせて、俺を睨む顔は、年上だと思えないくらい可愛い。
多分、誰にも真似出来ない表情だ。
「冗談だよ。本郷さんは飲んでくれ」
「……おまえの肴になる気はないぞ」
意味深な響きに、言葉を飲み込んだ。
本郷さんは、無意識に俺を誘う。
楽しく飲んで、美味しく土産はいただいた。
途中で、思い出したようにその手を握りしめて、いつもより熱い夜が始まった。
「風邪ひき、そう……」
「そんな寒い?」
「汗が……止まらん、だろ」
「本郷さんの?」
「バカっ……いし……のっ……」
言葉が途切れて、俺は馬鹿石と呼ばれた。
怒るどころか、気に入ってしまった。
本郷さんのセンスはたまらない。
「もっと呼んでくれ。俺を」
ずっと深くまで追い詰めて、満足するほど聞かせてもらった。
雨音には、眠気を誘われる。
もう一度寝直すつもりでいるけれど、眠る本郷さんを独り占めしているのはいい。
無防備な口元を見ているのは俺だけだ。
乱れた髪も、悪くない。
「どう考えても、本郷さんの体温が高いよ……」
指先も手も。
腕から肩まで、そっと触れてみる。
首筋を触った時、本郷さんが動いた。
「……俺、食べるから……こっち、力石……」
完全に眠る夢の中にも俺がいる。
寝言にも嬉しさがあるなんて、思った事もなかった。
「ありがとう、本郷さん」
本郷さんの夢に入る事は出来ないけれど、今、俺だけが聞いている雨の音を伝える事なら出来るだろう。
起こさないように、なるべく身体を近づけて、眠り直す事にした。