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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

70□ 雪

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70□ 雪

今年は寒いです。雪も昨年よりずいぶん降ってる気がします。
なので、のんびり暖かい妄想ばかりになります……
というか、本郷さんって寒いの平気だったっけ?






「またやってる」


待ち合わせて一緒になった訳ではないのに、今夜も力石と酒を飲んだ。
のれんの感じが気に入って、絶対にここは美味いと吸い込まれたら、すでにヤツが座り込んでいたのだ。
悔しい。
逃げも隠れも出来ないとはこの事だ。

「本郷さん、こっち!」

笑顔で手招きされて、力石のそばに座る。
俺の好きな、落ち着く隅の席だ。
力石はよくわかっている。

「おお、燗酒やってるのか」
「今夜冷え込みそうだからね。こういう夜の燗酒はたまらない」
「同じく」

ふと、今夜の戦いを忘れてやってもいいと思ったのは、力石がポテトサラダを食べていたからだった。
いつだって、ポテトサラダは俺の魂。
ようやく力石が、俺の真似をしたのだ。

「いやあ、今夜の酒は美味いぜ。いい店だし」
「そうだな。本郷さん、ご機嫌だな」
「寒い時は熱燗だろ、ほら、力石ももっと飲め」

すでに力石の前には徳利があったのだけど、後から注文した俺の酒の方が熱い。
燗酒の微妙な温度の差について語りながら、二人でずいぶんと楽しんでしまった。

酒は一人で飲むのがいいけれど、力石がいるのはもっといい。
楽しくて、つい話が弾んでしまう。
酔わせてやるつもりで飲んでいたのに、どうやら俺の方が酔ってしまったようだ。
ほんの、お猪口一杯分くらい、としておこう。



店を出たら、粒の大きな雪が舞っていた。
来た時よりも白い視界に思わず見とれる。

「な、何だよ」
「本郷さん、雪食おうとしてただろ」
「……ぬ……」

誰だって、思わず口を開けて追いかけてしまうだろう。

雪は不思議だ。
音がしない。
静かに、けれど強引に、あたりを白く染めていく。

誰かに似ている。

「雪ってな、本郷さんに似てる」
「へっ? 俺?」
「気がついたら一杯になってるところ」

思わず力石の顔を見つめてしまう。

俺の心に余裕がないと言いたいんだろうか。
力石との戦いに破れ、気持ちが一杯一杯になっている、と。

「あのさ……」
「本郷さんの事ばかり考えてしまうよ」
「俺?」
「うるさいところは、積もる雪と正反対だけどな」
「……それ、貶してるのか……」
「褒めてる。ものすごく」

からかうような口調に、思い切り息を吐き出してやった。
雪のように白い。
楽しくて、三度繰り返したら、倒れそうになった。

「大丈夫、本郷さん?」

ふらついても、力石がいるから平気だ。
今夜も俺には余裕がある。

力石は、余裕なのか。

「あ、力石よ。頭から風邪ひくぞ」

寒いのに、力石はまだパーカーのフードも被っていない。
真っ黒な髪に雪が触れる。

「このくらいで?」
「ほら、もう雪が積もろうとしてら」

手を伸ばして、一番大きな粒を掴む。
雪ではなく、力石の髪の毛を引っ張ってしまった。

「あ、ごめん! 抜けてはない」
「そのくらいで抜けたらびっくりする」

笑う力石が、自分で頭の雪を払う。
さっきまでポテトサラダを箸で追いかけていた手だ。

「寒いな」
「おお……」
「本郷さん、このまま帰る?」
「モチのロン」

そうは言ったものの、静かに舞う雪の中を歩くのは嫌いではない。
積もるまで、まだ時間はかかるだろう。

「……と言いたいところだけど、少しだけゆっくり歩きながら帰る」
「俺も付き合おうかな」
「どっちが先に雪だるまになるか、競争するか」

力石が俺を見る。
じっと見て、唐突に吹き出した。

「なんだよ、いきなり」
「本郷さんは雪だるまにはならないと思う」
「何……」
「その前に家に帰り着くし、ちゃんと俺が払ってやるよ」

俺の肩に、背中に、力石の手が伸びる。
ちょうどいい具合の力が、雪を払っていく。

「俺も……」
「行こうぜ」
「あ、そうだな。それが先だ」

もう少し、払われてもよかった。

「……もしかして、俺って、雪のオバケがついてたりする?」
「なんだ、そりゃ」
「今、払われて気持ちよかったから……」
「本当? じゃあもっと触っていようか」

あ。
どうやら、俺から誘いの言葉をかけてしまったようだ。

力石の手は熱い。
俺は力石よりも着込んでいるはずなのに、直接触れられているような気がするくらいに。

「おい、あんまり雪を溶かすんじゃないぞ。もうちょっとだけ、味わいたいんだから」
「勿論……本郷さんと雪は、意外と似合ってるからな。風邪ひかない程度なら、少し見ていたいと思うよ」

とても、ではなく、意外と。

「どういう……」
「ほら、顔に……」

雪よりも、力石の指先が触れるのが先だった。











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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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