忍者ブログ

おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

69□ 眠る

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

69□ 眠る

気がつけば69話目……深い意味はないけれど、ある(笑)
ちょっと近づいた小話で、ラブそそいでみます。






力石は、頻繁に泊まっていく。
そんなに心配するほど、毎回俺は泥酔する訳でもないのに、

「本郷さん、酔いすぎるから」

と言って、飲み屋から出てすぐ、手をつないでくれるのだ。
そのまま、俺の家まで。

こんな風に歩く事は、今までなかった。
言われてみたら、確かに足元はふらついている。
歩けないほどではないけれど、力石に俺の力を預けているのは悪くない。

「チカラ、か……」
「何?」
「いや。さっきの店、美味かったよな」

なぜ俺は、力石の目を見るとごまかしてしまうのだろう。
俺が笑うと、力石も笑う。
そして、手が熱くなる。

「力石よ。この手……」
「ん?」
「よく慣れた手だ」

俺は何を言ってるのだろう。
思わず手を振りほどきそうになって、力石に強く握りしめられる。
力石の力は強くて、俺から離れる事がない。

「おい……」
「慣れたよ、というか……前からこうじゃなかったっけ?」
「へ?」

力石は時々不思議な事を言い出す。
俺の独り言とは違って、何やら確信めいた言い方だ。
ただ、しばらく考えないと、俺にはわからない事が多い。

帰って、ゆっくり眠る布団の中で、とか。

「そうだ……布団、そのままで出てきてる」
「え」
「今朝、慌ててたから、すごい俺の部屋、汚い!」

一人暮らしが長いとはいえ、最低限の生活環境は整えている俺だ。
こたつの上に、飲み散らかした空き缶は放置していても、布団だけはきちんとあげる。
服を脱いだままにしておいても、帽子だけは別に片付ける。
自分でも境目がよくわからないけれど、おかげで鼻をつまむほどのおかしな部屋には住んでいないはずだ。

「気にしないよ。どうせ寝るんだし」
「それだよ、そこがダメなんだよ」
「……ダメって?」
「布団だって、生活にメリハリが必要だろ」
「……布団に?」
「おお」

頷いた俺をみて、力石が吹き出した。

「本郷さん、一人暮らしなのに、一人じゃないみたいだ」
「へ? そうか?」
「だって、その布団、生きてるみたいだぜ?」
「布団が生きてたら怖いだろ。というか、オジサンの加齢臭にまみれて、多分、世界で一番不幸な布団だと思うぞ」

力石が、声を出して笑っている。
店にいる時は、恐ろしい魔狼の表情を見せるのに、こうやって手をつないでいる時は、普通の魔狼にしか見えない。

魔狼にも、普通と普通じゃないのがいるんだろうか。
よく知らないけれど。

「本郷さんの布団は気持ちいいよ」
「そう?」
「ものすごくよく眠れる」

言われて見れば、力石はよく眠る。
夜中にふと目が覚めて、トイレに行ったり水を飲んだりしても、全く力石は動かない。
死んでいるのかと、何度も思ったくらいだ。

「俺、人のいるところであんなに眠れるの、初めて」
「へえ……俺なんて、どこでもすぐ眠れるけどね」
「移ったのかな、本郷さんのが」

力石は眠らないけれど、俺は眠る。
俺が眠るから力石も眠る。

「それって、何か特許取れそうじゃないか?」
「どういう特許だよ」
「力石眠らせるの巻?」

力石の笑いがまた止まらなくなった。

「おい、おまえ、どこか悪いんじゃないのか?」
「どういう意味……」
「眠り病と、笑い病を併発してるとしか思え、ぬっ……!」

不意に、力石が俺に抱きついた。

「こ、こら」

肩のあたりがくすぐったい。
器用な力石は、俺とつないでいる手を離す事なく、より近づいた。

「多分、その病気、治せるのは本郷さんだけだよ」
「俺は医者じゃないぞ! そんな、期待は……」

笑う力石は熱い。
熱まで出たのだろうか。

「添い寝で手をうとうか」
「……なんだよ、それは……」
「今夜の本郷さんは酔ってなさそうだから、このまま付き合ってくれてもいいけど」
「酔いすぎたって言ったっ、こらっ」

笑いながら、力石が俺の耳を噛んだ。
俺から力が抜けていく。
耳は、多分、この世で一番危険な場所だ。
力石はよく知っている。

「敷きっぱなしの布団も、いい感じに待っていてくれるんだろ?」
「えっ」
「ダンドリ、いいよな」

飛び上がって、逃げてもよかったのに、俺の手も足も動かない。

「力石……」
「帰って眠る楽しみがあるのっていいな」
「……それは、な……」

そっと俺から、繋いでいる手に力を込めた。
耳の続きは手で。
それからゆっくりと眠るのがいい。

きちんと、力石には伝わった。

「帰ろう」
「おお」

力石を眠らせるのは俺だけ。
これはなかなか特別感があって、すごく嬉しい気持ちになってきた。






拍手

PR

コメント

カレンダー

03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30

プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
pixivID 18019731
サークル 本郷格好委員会

1