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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

65 □ じゃんけん

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65 □ じゃんけん

酔っ払った本郷さんの可愛さは、力石が間近で見続けています。
会話にならない会話をするのも、本郷さんとだったら楽しいだろうなあ。






「うふふ……」

突然、本郷さんが気持ちの悪い笑い方をした。
テーブルの上の酒は、まだ減っていない。
泥酔した訳でもなさそうだ。

「……何か、いい事でもあったのか?」
「おっ、分かるか! 力石よ」

満面の笑みを浮かべて、日本酒を飲む。
そこまで美味しかったんだろうか。

「当ててみるか?」

唐突にクイズだ。
飲みながらだと、長くなるから面倒だと思う。
でも、この嬉しそうな顔の期待は裏切りたくない。

「……そうだなあ。宝くじでも当たった?」
「そいつは、十枚買って一枚の事か?」
「当たったとは言い難いな」

俺が答えられないと、本郷さんの笑みは優しくなる。

「初めて行った店に、すごい爆乳の美人がいた?」
「いにゃっ……いや、行ってない」
「そうか」

ちょっと口元が震えているから、嘘だとわかったけれど、ここは別に追求しない。
真剣に考えてしまう。
本郷さんがここまで嬉しい事。
他に何があるだろう。

仕事の関係は、全く知らないけれど、本郷さんには、俺くらい一緒にいる人間もいないような気がしている。

「どうよ、力石。降参するか?」

ずっと見ていたい笑顔だ。
本郷さんは、笑うとこんなにも可愛くなる。
これは、すごい秘密だと思ってもいいだろう。

俺しか知らない、だといい。

「ああ。降参する」
「えっ、マジで? マジで?」
「教えてくれる?」

手元の酒を一気に飲んで、本郷さんが息を整えた。

「あのな、じゃんけんなんだけど」
「じゃんけん?」
「俺、世界で一番強いかも」

この答えは、想像も出来なかった。
けれど、ものすごく本郷さんらしい。

「へえ、そうなんだ」
「信じてないな? 今、力石、手を出せ」
「はい」

本郷さんの掛け声で、軽いじゃんけんをする。

俺は握りこぶしを突き出し、本郷さんは広げた手のひらを見せつけてきた。

「ほら! な? 力石に勝っただろ?」

あまりにも嬉しそうな笑顔に、ゆっくり頷いて、冷酒をひっかける。
俺の喉の奥には、ぐっと堪えた笑いがあった。

「いやあ、意外な才能って、こういう事だよなあ」

本郷さんは酔っ払うと、不意打ちでじゃんけんを挑んでくる事がある。
多分、もう十回以上は繰り返していると思う。
見慣れた本郷さんの手のひら。

そう。
本郷さんは、じゃんけんの時、必ず手のひらを広げるのだ。
それ以外、俺は見た事がない。

「力石がじゃんけんに弱いとはな……ほんと、意外」
「本郷さん、誰かに勝ったんだ?」
「昨日行った飲み屋でな」

昨日は、本郷さんに会わなかった。
じゃんけんをしてくれるような人がいる店に行ったという事か。
爆乳の、美人。

ほんの少し、胸の奥に何かが残った。
嫉妬だとは思いたくない。

ただ、そんな時も、本郷さんと一緒にいたかっただけだ。

「美人だった?」
「へ?」
「本郷さんとじゃんけんした相手」
「焼き鳥屋のおやじだぞ」
「え? 焼き鳥って……」
「ああ、前に力石と会った事ある」

覚えている。
多分、本郷さんと会った店は、全部覚えている。
食べた物も、飲んだ物も。
そのくらい、本郷さんの事は特別なのだ。

「あのおやじさん、じゃんけんなんてしてくれるんだ」
「俺が勝ったら、串追加って話になってさ。三回も勝っちゃった……」
「……それ、店のサービス?」
「いいや。普通に払ったけど……おい、何笑ってるんだ?」

笑いが止まらない。
おやじさんもわかったのだ。
本郷さんが、じゃんけんに弱い事を。

本当に、その場に一緒にいたかった。
俺だったらどうしただろう。

「本郷さん、もう一度、じゃんけんする?」
「え? 勝てないぞ、力石は」
「一杯おごるよ」
「よし!」

予想と期待を絶対に外さない本郷さんに、俺は自信たっぷりの拳をつきつけた。 




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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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