忍者ブログ

おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

53 □ 朝、鳥の声

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

53 □ 朝、鳥の声

ちょっとだけイチャついた朝の話で。
どうしても、力石に甘い本郷さん……と、調子に乗るわ、本郷さんよりも甘いわな力石で。







窓の外で鳥の声がする。
ここらには、スズメがいたか。
何か美味い食べ物でもみつけたのだろう。
半分眠ったまま、ぼんやりとその声を追っていた。

「……ん」
「へ?」

他人の存在感に、一瞬で目が開いた。
信じられない。
座布団を二つに折って、畳で転がる力石が、いた。
俺は布団の中だ。

「お、おい、力石、おい!」

飛び起きた俺は、慌ててその身体を揺り起こす。
部屋を見回して、間違いなく俺の部屋である事は確認した。
見知らぬ場所だったら、多分、俺が死ぬ。

「……ああ、おはよう、本郷さん」
「おはようって、なんでこんなところで……」

どうして力石は、布団すら敷いてない所で眠っていたのか。

「覚えてない?」
「何、を……?」
「昨夜のこと」

やけに含みのある響きの声が、俺から動きを奪う。
昨夜。
昨夜。

「何があった?」
「本郷さん、飲み屋で会ったの覚えてる?」
「ぬ……お、おお……確か、昨夜は、焼き鳥だった」
「正解」

たどたどしい俺を茶化すかのような力石に、思わず、軽いパンチを食らわせてやった。

「本郷さん……」
「今のは、鉄拳制裁だ」
「される意味がわからんけど……」
「いい。受けとけ。それより……」

こたつの上に、食べ散らかした焼き鳥の包みがある。
缶ビールも転がっている。

「本郷さん、酔いすぎて、俺が送って来たんだ」
「……送らせて、その仕打ちか、俺は」
「仕打ちって?」
「布団ですら眠らせてないって……」

ああ、と、力石が呟いて笑う。
軽く伸びた手が、不意打ちで俺の横腹を撫でた。

「ひゃっ!」
「さっきのパンチのお返し」
「って、おまえなあ……」

半身起した力石が、ぐっと俺に顔を近づけてくる。
思わず身をそらしてしまった。

「帰ってから、そこで飲み直しが始まったのはいいんだけど、本郷さん、串から焼き鳥が外せなくてさ」
「俺が?」
「歯でこう、噛みついたまま、唸ってたと思ったら、そのまま倒れ込んだ」
「おお……」
「あとはもう、どうやっても起きないから、布団敷いて、勝手に転がしたよ」

その割に、コートと上着はきちんと壁にかけてある。
串を握っていたにしては、手だって汚れてない。

「勝手にビール飲んだのは俺。ごめんな」
「……もしかして、手間、かけさせた?」
「ちょっと」
「す、すまん……」

深々と、頭を下げてしまった。
しかし、目測を誤りすぎて、力石の太ももに頭をくっつけてしまう。
慌てて離れようとした後頭部を、ぐっと抑えつけられてしまった。

力石の手が重い。

「これで許す」
「へ?」
「隣に潜り込んでもいいかなとは思ったんだけど、本郷さん、両手両足伸ばしてて……」

クスリと、力石が笑う。
思い出し笑いは助平者のする事だ、とは、さすがに今は言えない。

「俺、大の字で眠る人って、初めて見たかもしれない」
「……ああ、そうかい……力石の初めてでよかったよ、俺はっ……こ、こら!」

突然、髪の毛がくしゃくしゃにかき回された。
力石の指の動きが、耳までくすぐってくる。

「こい、つ! こらって!」

耳は怖い。
いつになっても慣れない。
背筋のゾワゾワする感じが、違うものに変わっていきそうだ。

「おい……力石」
「ゆっくり寝たけど、寝足りない気もする」
「俺は寝た」
「……俺は寝てない。布団では」

それを言われると辛い。

「わかった。おまえの時間の許すまで、そっちで寝てたらいい」
「本郷さんはどうする?」
「こたつの上、片付けて……こっちで横になるかな……」

力石が座布団を枕にした眠り方は、俺も時々やる。
いつもは酔っ払っても、きちんと布団を敷くけれど、そこまで出来ない夜もある。

いつだったか、嫌な夢を見て目を覚ましたら、脱ぎ捨てた靴下が顔のそばにくっついていた。
それは、力石には言わないことにしよう。

「片付けは手伝うよ。そこだけなら、すぐだろ?」
「おお。ありがとう」

力石は本当に気のつく男だ。
食べて飲むだけじゃなく、きちんと片付けのことまで考える。

「それじゃ、先にこっちで眠ろう」
「へ?」

ぐっと手を引っ張られて、なすすべもなかった。
転がって、見上げた力石は、完全に目を覚ましている。

「ちょ、ちょっと……想定外……」
「俺はそうでもないけど?」

唐突に、窓の外でスズメがけたたましく鳴き出した。
「ほら、力石、スズメもやめろって言ってる……」
「違うよ、本郷さん。もっとやれって、けしかけてるんだよ」
「勝手な解釈するなよ!」

笑いながら首筋をくすぐられると、力が出なくなる。

「力石、腹が……腹がへった!」
「後で」
「今食べないと死ぬ!」
「……死なれると困るけど……少し、つきあってくれよ、本郷さん」

そう言って、少しで終わったことのない力石に、名前を呼ばれるだけで力が抜けていく。
認めたくないけれど、とてもいい響きだ。

くそ。
気持ちがよすぎる。

「力石……」
「ん?」
「おはようだ、こいつ!」

力石の動きを封じるために、両手を伸ばして抱きついてみたのに、それは全く役に立たない攻撃方法だった。 








拍手

PR

コメント

カレンダー

03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30

プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
pixivID 18019731
サークル 本郷格好委員会

1