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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

52 ■ 朝の二人

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52 ■ 朝の二人

何の変わりもない、一緒に食べてる二人、ですが、違うのは朝。
新しいシリーズに合わせて、ちょっと妄想してみました。
それにしても、一緒に食べる朝食って、すごくいいよ……










ようやく朝が動き出した。
今朝は少し眩しい。
パーカーのフードを深めにかぶって、歩いていた。

「あれ……?」

まだ眠っていてもおかしくないだろう時間に、まっすぐ背筋を伸ばして歩く、本郷さんの姿を見つけてしまった。
そういえば最近は、朝にもよくすれ違う。
約束もしてないのに出会うとは、いつだって不思議でたまらない。

「ぬ? 力石……か!」
「おはよう、本郷さん」

昨夜は会わなかったと思うと、何やら本郷さんの生活に踏み込んだ気がした。
もしかして、いい事でもあったんじゃなかろうか、なんて。
そんな事を問いただすほど、俺は無粋でもない。

「……力石よ、今、帰りか?」
「違う。今から出かける」
「そうか、俺もだ」
「へえ、本郷さん、帰り道かと思った」

今朝は、朝食の時間が重なったのだ。
向かう方向で、同じ店を選んでいたのが分かった。
なんとなく並んで、店を目指す。

「帰り道って、俺?」

本郷さんが、前を見たまま俺に問いかける。
人の目を見て話す本郷さんが珍しい。

「ああ。何か本郷さん、いい事でもあった朝なのかなって。朝帰りってヤツ?」
「……そんなのあったら、こんな時間に歩いてない」
「なるほど……」

確かに。それならまだ眠っていてもおかしくない。
本郷さんの言葉に、なんとなく安心してしまった俺は、心が狭いのだろうか。

「俺の事よりも、力石こそ、なんか、早すぎるんじゃないか? 朝帰りは、そっちの方……」
「本郷さんと同じ言葉を返すよ」

うむ、と頷いた本郷さんが、握りこぶしを固めたのを見た。


店内は、すでに数人が、朝食を楽しんでいた。
無言で殺伐としている朝ではなく、料理の匂いと店の雰囲気から、穏やかで落ち着く雰囲気に包まれている。
ここはいい店だ。

「ここはいい店だな」

俺が今考えていたのと同じ事を、本郷さんが呟いた。
偶然に、思わず吹き出してしまう。

「ぬ? 何だ?」
「何でもないよ」
「笑ったじゃないか」
「……朝から本郷さんといるのが不思議だからだよ」
「まあ、そこは俺も、だな」

そういえば、本郷さんは、帰って来たのか、出かけるのか、目の前に座る姿からは想像もつかない。
俺だって、本郷さんからしたら同じなのかもしれないけれど。

「知ってるか、力石。早起きは三文の徳って言ってな……」
「あ。俺、本郷さんは、三文の徳よりも、朝寝を取る方だと思ってた」
「ムムムのム……」

唸る本郷さんを見つめていると、俺の方こそ、昨夜、本郷さんと一緒に過ごしたんじゃないかと思えてくる。
相手が本郷さんなら、すごく楽しいだろう。
一晩中飲んで、食べて。色々飛んでいく話を追いかけて。
近いうちに一度、試してみたいかもしれない。

「本郷さんって、朝はご飯? パン?」
「ん? 俺はどっちもいくなあ……今朝は腹が減ってるから、米と飯」
「なるほど……って、それ、どっちもご飯だろ」
「お? 分かったか。俺の渾身のギャグ」
「何が……」

朝からギャグを言った本郷さんは、すっかりご機嫌だ。
楽しそうに輝く表情が、実にいい。
言われて、本郷さんのメニューを見た。
確かに、朝から食べ応えのあるどっしりとした品が並んでいる。

これだけで、本郷さんの体調が万全だとわかる。

「力石は?」
「俺?」
「おまえの方こそ、朝は……寝てそうだけど……」
「そんな事はない……」

ちらりと、本郷さんと視線が合う。
朝、眠っているお互いの姿を、同じタイミングで想像してしまった。

「……力石は、眠るのか?」
「眠るよ、普通に」
「へえ……不思議」

そう呟いて、本郷さんは卵焼きを頬張った。
途端に嬉しそうな顔になる。
卵焼きが美味かったのだ。
わかりやすくて、俺も食べたくなってくる。

「不思議?」
「なんとなく、力石は座ったままで、絶対に寝ない気がしてた」
「……どんなイメージだよ?」

俺の方こそ、本郷さんが不思議でたまらない。
早い朝から、トレンチコートに帽子で、きちんとした格好なのだ。
どれだけ几帳面な生活をしているのだろう。

「ん……まあ、そういうイメージ……」
「ふうん……」

俺はすっかり、本郷さんに見とれていた。
気づかれないように、そっと卵焼きに手を伸ばす。

「美味いか? 力石」
「ああ。美味しい」

何やら本郷さんが、小さく握りこぶしを固めている。
俺だけが気付いたのかもしれない。最近の本郷さんのくせだ。

「何だ?」
「いや、力石よりも先に美味いのを食べたと思って……」
「俺、この店、何度も来てるんだけど……」
「へ?」

今の、本郷さんの悲しそうな顔ときたら。
悲しくなる意味がわからないけれど、大げさに眉が動くのは見ていて飽きない。

「そ、そうか……何度も、ね……」
「今朝は、本郷さんとご一緒出来て、嬉しいよ」
「……俺も、だ」

大きく頷いて、本郷さんがタクワンをかじった。
いい音がする。

「タクワンって、音も美味しいよな」
「おお。タクワン、いいよ。夜のつまみにかじるのと、朝ごはんでかじるのは、全然違うし」
「ここのは自家製で、特に美味い」
「……おお……」

本郷さんの不思議に変わる表情がたまらない。
俺も食べたくなってくる。

「なんだか、今朝は、本郷さんが食べてるのがすごく美味しそうだ」
「……え?」
「いいメニューだな。俺もお代わりしようかな……」
「そ、そう? そうだろ? そうに決まってるだろ」

おかしな事を言ったつもりは全くなかったけれど、本郷さんの表情が、とにかく明るくなった。 






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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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