昨日は力石くんの誕生日(勝手に決めつけた)
まだもうちょっと甘く祝いたいので、続きじゃないけど続きっぽくなってしまいました。
明け方、ふと目が覚めた。
誕生日を迎えた男は、死んだように眠っている。
あれだけ暴れたら、疲れ果てて眠りもするだろう。
俺だって、あちこち食われてヘトヘトだ。
別に怒ってはいないけど、体力の限界を感じた夜だった。
「こやつ、また寝相が悪すぎる」
布団から腕が飛び出している。
起こさないように掴んで、布団の中に戻してやった。
そっと覗いたら、肩のあたりに俺の爪の跡が残っていた。
「……来年の誕生日は、形のあるプレゼントを用意しておくぞ、全く……」
そう考えて、気がついた。
俺は、普通に来年も一緒にいるつもりでいるのだと。
(本郷さんといたいんだよ)
昨日の力石は、ずっと俺から離れなかった、というか、こたつから出なかった。
手を伸ばしては、俺が大事に置いてあるエロサイターを引っ張り出してパラパラめくっていたし、トイレに出たかと思えば、冷蔵庫からビールを取り出して美味そうに飲み干したり。
こたつの中で一生を終えるのか、なんて思ったくらいだ。
それはそれで、なんの問題もなかった。
力石がいても、俺は一人でいた時と同じようにくつろいでいた。
たまに大きな屁をこいても、力石は笑ってくれた。
そういえば、まだ力石の屁の音は聞いてない。
俺が誰かと一緒にいるなんて、もう考えないようにしていたけれど、ほんの少しは考えてもいいのかもしれない。
「……朝?」
「ん……あさかもしれないけど、まだ夜だぜ」
「そうか……」
掠れた声の力石が目を開こうと頑張っている。
多分、睡魔の方が強いのだろう。
人の戦いを見るのは楽しい。
それが普段クールな力石かと思うだけで、ご飯三杯は食えそうだ。
「なあ、力石よ。魔狼と睡魔ってどっちが強いと思う?」
「……まる……」
「丸?」
もぞもぞ言って、力石はそのまま眠ってしまった。
今のは、完璧に気を抜いていたと思う。
こんな力石、誰か見たことがあるだろうか。
いや、それはもう考えない事にする。
(本郷さんといたい)
力石はそう言ったのだから、それでいいのだ。
多分。
「魔狼と睡魔か……どっちも強ようだよな……魔が入ってるんだから、仲間かもしれない」
そっと頭を撫でてみる。
意識して、力石の寝息を追いかけた。
ゆっくり、ゆっくりと息をしている。
「……やばい。俺も寝そう……」
少しだけ、力石の側に潜り込む事にした。
力石じゃないから、どこも触ったりはしない。
ただ眠るだけだ。
「誕生日の追加にしてやる……」
言い訳がましく呟いて、いつもより体をくっつけた。