最近すっかり力本な生活です。
しばし更新途絶えてた期間、ひたすら毎日呟きまくっていたので、いつの間にか距離が縮まっている感があります……
ここらを少しづつ埋めていきたい妄想。
今更ながらに思う事がある。
力石の寝相の悪さだ。
手は遠慮のかけらもなく、俺の腹の上に乗ったままだし、足だって不意打ちで俺を蹴ってくる。
くっついてきて離れない夜もあるし、手足を布団から飛び出させたままな夜もある。
これまで付き合ってきただろう相手は、誰も何もいわなかったのだろうか。
そんな女神たちばかりが、力石のそばにいたというのか。
ずるい……いや……やっぱりずるい。
今も俺は、力石の寝返りで起きてしまった。
「……こいつ、実は起きてるんじゃねえだろうな?」
悩んでいる俺にドッキリを仕掛けているとしか思えない。
テレビ番組でもないのに、ドッキリをする意味なんてないけれど。
起き上がって、眠る顔を覗き込む。
「睫毛……長……」
慌てて頭を振った。
そんな所を見ている場合じゃない。
「おいこら、力石。起きてるなら起きろ!」
髪の毛を少し引っ張った。
なんの変化もない。
「寝てるなら寝てると言え!」
額に手をあてる。
熱は、ぬ。
いや、また話がそれた。
「もしかして、眠り病にかかっているとか……?」
寝相の悪い眠り病なんて、聞いた事がない。
「なあ、力石よ……起きてくれよ……」
淋しいじゃないか。
「違う!」
最後の言葉は言ってない。
もうちょっとで言う所だったけれど、言ってないからセーフだ。
何がどうセーフなのか、俺にもわからないけれど。
「……バカ! お主が一番悪い!」
頰に手を当てて、そのまま力石の体温を感じる。
そういえば、ヒゲの伸びてる力石はまだ見た事がない。
「格好よくなりそうだから、絶対に駄目」
「……何が、ダメ?」
手のひらに動きを感じた。
慌てて引き剥がしたら、力石がゆっくり目を開けていた。
「やっぱり起きてた!」
「……起こされたんだよ、本郷さんに」
掠れた声は完璧に寝起きだ。
笑いがこみあげてくるくらい、無防備な力石がいる。
「おはよう、力石選手」
「……おはようの時間?」
枕元の時計を見て、力石が唸る。
「まだもう少し眠れる……」
「お前な、そのセリフ、全部お前に返すぞ」
「あれ? 俺、本郷さん起こした?」
「お主の手と足!」
起きてる力石に遠慮の必要はない。
額をぺちりと叩いてやった。
「ああ……後で叱っとく」
「……今じゃなくて? というか、叱って聞くのか?」
「本郷さんには甘えてもいいって……」
見る間に力石は目を閉じてしまった。
「お、おい、起きたんだろ、力石? 力石?」
騙された。
落ちるように眠ってしまう力石を、俺は今までに何度も見てきたのだ。
今の会話も、前に交わした気がする。
「こいつは……全く……」
(本郷さんのそばが一番よく眠れるんだよ)
あれは、甘えていたのか。
……甘えている以外の何物でもないか。
眠る力石の顔を見ながら、必死で考え直してみる。
寝相の悪い力石の手足は、決して力いっぱい俺に害を与えるものではない。
人間カイロがそばにいるのだと思えば、冬の寒さは乗り切って来られたのだ、俺だって、悪い気はしてない。
「……仕方ないなあ……」
そっと布団を掛け直しながら、俺も潜り込んだ。
眠る時間はまだある。
まあ、今夜はヨシとしてやろう。
俺も実は眠かったのだ。
いつもこの繰り返しだと思い出すのは、朝、力石のいれたコーヒーを飲んでいる時なのだけど、それはまた起きてからの話だ。