しばらくどころか、ブログは完全に息をしていませんでした……(最低)
が、妄想は全然止まってません。
140文字に情熱注いでました(短いのが好きにもほどがある)
二月は甘いイベントがあるので、リハビリがてらに真面目に更新したいと思います。
「……これ、夢だよな……?」
たまに、夢だとわかっている夢を見る夜がある。
得をしたのか損をしたのか、所詮は夢の中でもいつも通りの俺だ。
俺はどこにいても俺。
トレンチコートに帽子の、粋で格好いい男。
それが本郷播。
「夢の中でも寒さってわかるのか……初めて知ったぞ」
今夜は北極にいた。
さすが北極だけあって、寒くて寒くてたまらない。
氷の上で震えていると、向こうの方からペンギンが歩いてくるのがわかった。
「……ペンギンって、北極にいたっけ?」
考える間もなく、近づいてきたペンギンが俺の隣に立った。
「でかい……お主、でかいペンギンだな」
灰色の暖かそうな毛に覆われたペンギンは、ものすごく人懐っこい。
もしかしたら、言葉を話す奴かもしれない。
なんとなく親近感を覚えて、挨拶しようと手を伸ばした時だった。
「なぬっ? こ、こらっ! これは俺のだ!」
同じように手を伸ばしてきたペンギンが、俺のコートを引っ張った。
グイグイと遠慮ない仕草は、誰かにすごく似ている。
「ちょっと待って……灰色のペンギンって、ヒナじゃなかったっけ? ちっちゃくて可愛いのは見た事あるぞ? なんでこんなにでかいんだ?」
ペンギンが、唐突に俺の肩に頭突きをした。
「痛っ! こいつ……」
思い切り押さえてやろうと、その頭に抱きついた。
「むむ……ペンギンの毛って、髪の毛っぽいんだ……」
そう呟いた時、不意に目が覚めた。
腕の中をじっくりと確認して、目玉が飛び出そうになった。
俺が抱きついていたのは、力石の頭だった。
「……あれ?」
「……本郷さん、苦しい」
「ぬおっ! すまん!」
力石は目を覚ましていた。
ちらりと俺を見た目が嬉しそうに笑う。
「起きた? 本郷さん」
優しくて柔らかい声が俺の酔いを和らげる。
力石は魔のくせに癒しがあるのか。
「あ、あのさ、力石」
「何だい?」
「誤解のないように言っておくけどさ」
昨夜の力石は、飲みすぎてフラフラになった俺を、甲斐甲斐しくも送り届けてくれたのだ。
会計の時に財布を落として金をばらまくようなオジサンを放っておけない力石は、実はとてもいい男だ。
「ペンギンは北極じゃないから! 南極ね。それさ、俺、夢の中でも知ってたから」
「……何を……」
俺を見ながら、力石は信じられないくらい笑い出した。
布団が揺れて肩が出る。
こいつ、この寒い夜をTシャツで寝てたのか。
「誤解って言うから、何かすごくエッチな事かと思ったよ」
「エッチって何?」
「本郷さん、俺に抱きついてくるから……」
「抱きついてなんか、ぬ! ペンギンと服の取り合いをしてただけだ」
ようやく今気がついた。
灰色のペンギンは、間違いなく力石だ。
俺は夢の中でも力石と一緒にいたのだ。
「……お主……ただでさえモテ男なのに……ペンギンで可愛さまで手に入れやがって」
「意味がわからん。まだ酔ってるのか?」
そっと伸びてきた手が、俺の額を撫でた。
夢の中のペンギンと似ている。
あれは、俺から服を取ろうとしたのではなく、俺を気遣う仕草だったのか。
「まだ、ちょっと……」
「じゃあ、そばにいる」
少し頭をくっつけてきた力石が目を閉じた。
「え? 酔っ払いのそばで寝るの?」
「暖かいから」
力石の寝息は柔らかい。
突き放してやろうと伸ばしていた手を、そっと引っ込めた。
今まで一緒に眠っていたのだから、もう少しこのままでいてもいいだろう。
「魔狼がペンギンだったとは……」
上手い言い回しをみつけられないのは、酔いのせいだ。
俺にしては大胆に、力石に抱きついた。
「寒くない?」
「平気」
北極の寒さも、力石といれば大丈夫だろう。
今夜はゆっくりと、夢の続きを見る事にした。