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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

118 □ 酔っ払いの花見

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118 □ 酔っ払いの花見

力石の地元は埼玉なのですが、今回出てくるお酒は適当に妄想しました。
またしても変な話……だけど、甘いラブは込め……込めたけど変……







「今夜は月がきれいだから、隠しておいた日本酒を出してきたぞ」

少し顔の赤い本郷さんが、台所に消えたと思ったら、見覚えのない瓶を持って戻ってきた。

「珍しいな。いつの間に?」
「気がつかんかっただろ。ヘッヘッヘ」

嬉しそうに笑う。
隠し事が出来ない本郷さんにしては上出来だ。

「まあ、飲め」

ふらつく手元が気になるけれど、今夜の缶ビールはまだ二本だ。
倒れるほどでもない。

「ありがとう」

酒を注ぐ音はとてもいい。
トク、トク、と柔らかな音が耳の奥まで酔わせてくれる。
本郷さんは、酒を注ぐのも上手い。
この音を聞きながら眠りたいかもしれない。

「乾杯」

決めた訳ではないのに、最初の一杯目は必ずコップを重ねる。
ビールも、日本酒も。
そうするだけで、格別に美味しい気がする。
俺と本郷さんの大事な一瞬だ。

「美味いな……どこの?」
「お主の地元だ」
「ほう」
「たまたま行く用事があって……すまんっ……痛っ!」

下げた頭がこたつに当たって、変な音がした。
本郷さんはよくあちこちぶつける。
その理由が少しだけわかる。

「大丈夫か? それに、すまんって何だ?」
「平気平気。あのさ、お主の地元に行くのに、一言もなく行ってさ……」
「なんだ、そんな事……」

突然、俺の実家に顔を出したのなら驚くけれど、それはそれで大歓迎だ。
俺はいつか、本郷さんを家族に紹介したいと思っている。

「もしかして、それでわざわざこの酒を?」
「いや、これは偶然通った酒屋で見つけたから……あ、安かったから!」

地元だからわかる。
律儀な本郷さんは、この美味い酒を、真面目に探してきてくれたのだ。
やはり格好いい大人の男だと思う。

俺の地元を選んでくれて嬉しい。

「本郷さん、こいつさ、花見に持って行きたい酒だよな」
「あっ! 俺もそう思っ……」

本郷さんの口唇が震えている。
俺と同じ事を考えていたのが、そんなに嬉しかったんだろうか。

俺も調子に乗ってしまう。

「本郷さん、せっかくだから、今から花見しよう」
「へ? 花……ないよ……」
「目の前にある……」

本郷さんの鼻、と、恐ろしくも自分に似合わない冗談を言いかけて、ギリギリで堪えた。

「力石が、花か」

爆弾みたいな一言に、耳の奥が痺れる。
今、本郷さんはとんでもない事を言った気がする。

「俺が?」
「お主はいつだって目立つ。色は地味なのに、花が咲いてるみたいだ」

頭の中で考えた。
本郷さんの言葉がぐるぐる回る。

確かに、目立つと言われた事は何度もある。
どこにでもあるパーカーを着て、わざとらしく顔を隠して歩いていても、あちこちから声がかかるのは、俺のせいではないのに。
本郷さんには花に見えるのか。

「花……あんまり嬉しくないな……」
「え? そう?」

本郷さんが目を丸くして固まる。

「そういうのは女性に言うといいよ」
「言う機会なんざ、ぬ」

堂々と胸を張られても、俺が嬉しくなるだけだ。

「本郷さんは花って言われて嬉しい?」
「……嬉しくはないけど……俺が思う花の力石は、格好よすぎるからな……」

俺の顔は見ないで、酒瓶に向かって、本郷さんは話しかけている。
見ていると、笑いが込み上げてくる姿だ。

本郷さんの、格好いいのに、こういう可愛いところも好きでたまらない。

「じゃあ、どんどん俺に言ってくれ」
「おお」
「俺も言わせてもらう。今夜は本郷さんの鼻を見る花見って事で」
「おお……ぬ? 今、お主、何を……」

本郷さんが俺の冗談に冷え切ってしまわないうちに、酒瓶をさりげなく取り上げて、もう一杯注いであげた。

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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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