連休終わったのに、まだ連休気分ですいません。
そして、どさくさに紛れて、本郷さんの家でくつろいでいる力石シリーズ(でもないですが)
難しそうな本郷さんと、ずっと一緒にいられる、これまた難しそうな力石。
萌えほとばしります。
力石の休みもそろそろ終わる。
気がついたら、ここ数日をずっと一緒に過ごしていた。
一人暮らしの長い俺は、誰かがこの部屋にいると、違和感を感じるんじゃないだろうかと思っていたのだけど、そんな心配は無用だった。
力石は、以前俺が豪徳寺で買って来た招き猫以上にこの部屋に馴染んでいた。
あまりの馴染みっぷりに、俺はいつものように飲んで寝て、大いに屁もこいた。
不思議だ。
思い返しても、力石の屁を聞いた記憶がない。
モテ男は、屁まで自分の意思でコントロール出来るのだろうか。
情けない姿をいっぱい見せたのに、力石は俺に呆れる事もなかった。
繰り返し抱きしめられて、甘い言葉を囁かれた。
力石の声しか聞こえなくなるくらいに。
出くわす店ではあんなにも憎い敵なのに、一緒にいると身体中の力が抜けるほど穏やかになれるのは、何が違うのだろう。
「本郷さん、朝メシ出来てる」
「おお、すまん」
出先で朝食を食べる時間を考えて、目覚ましを鳴らす。
しかし、ここしばらくは、力石の奴が勝手に目覚ましを止めてくれる。
最初は慌てたけれど、すでに朝食が用意されていて、えらく感動したのは一生力石には内緒だ。
俺の人生で、家族以外に朝食を用意された事がいままであっただろうか。
そんなに凝ったメニューではなく、ごく普通の朝食なのがまた嬉しい。
「本郷さんって、ハムエッグ、本当に好きだな」
「大好き。これ嫌いな男っているのか?」
ハムと玉子でハムエッグ。
考えた人は天才だ。
ケチャップでもマヨネーズでも、しょうゆでもいいけれど、今朝は塩コショウで渋く決める。
ああ、語りたい。
力石の焼き加減がまた絶妙に上手いのだ。
悔しいけれど、美味い。
嬉しくて、コショウをたっぷりと振りすぎた。
「……っくしょんっ……!」
「すまん!」
力石がくしゃみをした。
俺は、コショウでくしゃみをする人間を、初めて見た気がする。
力石にも、なかなか人間味がある。
「……なんだよ」
「いや、もっと振ってやろうか?」
「覚えてろよ」
指が鼻をかく。
そんな普通の仕草を力石もする。
「本郷さん?」
「あっ、いただきます!」
完全に見とれていた。
今朝は酒がない。
酔ったせいには出来ない。
「あのさ、本郷さん」
「ん?」
「今夜、家飲みしよう」
「……今夜って、この間もだったぞ」
「楽しかったからね」
帰る心配のない家飲みは、一人で飲むのと二人では、天と地との差があった。
一人で気楽にやるのもいいけれど、力石とこたつの上にホットプレートを出してきて、スルメを炙りながら、あちこちの店の美味い一品の話するのはものすごく楽しかった。
なかなかないけれど、不意に力石の知らない店を出すのが、これまたゾクゾクするほどいいのだ。
達成感がありすぎる。
「んじゃ、俺、何か買って帰る」
「任せる」
「ぬ……」
「本郷さんのお土産、楽しみだな」
しまった。
突然、ハードルをあげてしまった。
力石の期待に応える何か。
「酒、の方が重いから、俺が買って帰った方がよく、ない……?」
「あ、酒は買ってある。ビールもまだ大丈夫だっただろ」
力石は、楽な方を取りやがった。
「たの……楽しみに、しててくれ」
「ああ」
弾んだ声が俺に刺さる。
ちらりと伺うと、目玉の部分が、力石の腹の中に消えたところだった。
俺も消えたい。
「何がいいか! ああ!」
無意識にまた、コショウの瓶を振っていて、今度は俺が情けないくらい、くしゃみを繰り返した。