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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

102 □ そして力石には勝てない

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102 □ そして力石には勝てない

いつもとちょっとだけタイトルの感じを変えてみました、が、別に何の変化もない普通の話で。

※ 後半一部修正しました。すいません。






「本郷さん、ショウブだ」

突然、力石が挑んできた。
今夜は一緒に飲みに出て、ゆっくりと酒と料理を楽しんで、ふらつきながらも戻って来たところだ。
先に部屋に入った俺が電気をつけて、後から入る力石が鍵をかける。
最近ずっとこのパターンだった。

「何を……」


さっきの店で、負けたのは俺だ。
力石の選んだ高野豆腐の卵とじは、涙が出るほど美味かったし、ほうれん草のおひたしだって、思わず声がもれるほど美味かった。
味噌カツを選んだ俺が、子供よりも幼く感じられたほどに。
多分、穴があったら飛び込んでいたと思う。

「シェアして食べよう」

涼しい顔で力石は言う。
これが悔しくなくて、何が悔しいだろう。

「じゃ、じゃあ、ニンジンのきんぴら……」
「それ美味いよ、すごく」

俺が選んだ品は、全て力石に先に食べられていた。
敗北。
悲しみのあまり、ビールを手酌で注いだら、コップの半分以上が泡になった。
力石のコップは、泡とビールの配分が震えるほど美しい。
またしても、敗北。

「……今夜、泊まってもいい?」
「いいよ、一緒に帰ろうぜ」

力石の口元が、ほんの少し揺れた。
今夜も何も、連休と名のつく期間、力石はずっと俺の家にいたのだ。
仕事は休みだったらしい。
俺はというと、途中で仕事に行く日があって、その間は力石の好きにさせていた。
お互い、まだ仕事の内容は話してない。

力石が言ったら、俺も言う。
そう思って、ずっとそのままになっている。

とりあえず、今の所、一緒にいるのに昼間の仕事は関係ない。


「連休も終わるな」
「俺はあんまりそういう感じじゃなかったけど」
「あ、俺はすごく充実したよ。本郷さんちのエロサイター、全部読ませてもらった」
「なぬ?」
「ほんと、爆乳が好きなんだな。置いてある過去の、全部爆乳特集だった」
「……俺の秘密を……」

恥ずかしい。
俺よりもずっと年下の力石に、俺の性癖を知られてしまった。

「より本郷さんの事がわかって、よかった」
「そりゃよかったけどな」

帰りの電車の中で、そんな話をされた。
しっかりとつり革につかまっていたはずなのに、急な揺れにふらついて、力石にぶつかってしまったのは、謝る事ではなかったと思いたい。


「……あれか!」
「……あれって?」
「電車の中の……」
「電車?」

エロサイターで新たな知識を得た力石が、そのままでいるはずがないのだ。
ぶつかった痛みの恨み言を、勝負という形で言い出したのだと思った。

「あれ? なんだ? 力石……そいつは……」

力石が手に何かを持っている。
剣だ。

「おまえ、マジで俺と戦う気か!」
「戦うって……本郷さん、酔ってる?」
「酔ってない。今夜はビール一本くらいしか飲んでないだろ」
「そうだよな。俺のために」
「……何を……」

力石が剣を突きつけてくる。

よく見て、驚いた。

「なんだ、その葉っぱ……」
「だから菖蒲だって」
「ショウブ……」
「菖蒲湯しよう。昼間に買っておいたんだ」

俺の、勘違い、だった。
緑の剣は、俺の手をくすぐる。
くすぐっているのは力石だ。
嬉しそうに、笑いながら。

「菖蒲湯って事は、それ、風呂にいれるの?」
「風呂用は、ちゃんと用意してあるよ。これは、本郷さんをくすぐる用」
「おまえなあ……」
「腰痛とかにもいいんだって。本郷さん、整体に通ってるもんな」

この優しさが悪い。
手の甲から肘のあたりまで、ゆっくりとくすぐられて、何やら背中がぞくぞくしてくる。
まだコートを脱いでいないのに、直に触れられているみたいだ。
色々、思い出してしまう。

「本郷さん、今夜、ちょっと無理しても大丈夫だと思うよ」
「……ちょっと無理って、何……?」
「言葉じゃ説明出来ないなあ……待っててくれ」
「力石……!」

悪い力石が、わざと俺の身体に触れるようにして、部屋の中に入って来た。
菖蒲の葉を渡される。

「おい……」
「すぐ風呂もいれるよ」

そのまま押入れを開けて、布団を敷き出した。
用意のいい力石だ。

聞かなくても、その先は見える。
俺も、今夜の酔いを抑えたのは、別に健康を気遣ってではない。

「俺が先に菖蒲湯に入ったら、勝った事になるんだろうか……」

力石の握っていた菖蒲を、より強く握り締めながら、こっそりと、聞こえないように呟いた。




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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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