しばし寝倒れ期間が長くてすいません…(連休ボケか!)
久々に甘酸っぱい感じでいっときます。と勝手に思っときます。
※ 一部力本の設定がまざっていたので修正しました!(力石、本郷さんがエロサイター好きなの知らないよ…)
ぬおおお…寝ぼけすぎ!! すいません。
時々、力石の声が途切れる。
ビールの泡に乗って、海の向こうまで泳いでいる気分だ。
「本郷さん?」
「んあっ……」
「酔った?」
衝撃的な響きだった。
今夜は同じような時間に店の前で出くわして、流れのままに一緒に食べる事にした。
力石の陣立は、俺を心の底から奮い立たせてくれる。
クールで格好いいのが憎い。
けれど、一緒に食べるのは楽しい。
敵を見える所に囲っておいて、自分の陣立をより強固にする作戦だ。
俺だって格好いい男なのだ。
「まだビール二杯だぜ。珍しいな」
「今日はちょっと忙しくて……疲れが取れんのだ……」
「へえ」
力石は、涼しい顔でコップを傾ける。
お互いの仕事は不明のままだけど、これで十分通じるのだ。
俺と力石の間は、少しづつ距離が縮まっていると思う。
まだ酔っていないアピールをするために、瓶ビールを追加した。
「そういえば、エロサイターの増刊号って、もう読んだ?」
「何それ!」
「本屋に寄ったら並んでた。本郷さん好きだろ。まだ読んでないんだったら、どうぞ」
「……マジか。もらっていいのか?」
「どうぞどうぞ。本郷さんの大好きな雑誌だもんな」
突然のプレゼントだった。
俺はエロサイターという雑誌をこよなく愛している。
本屋を覗いて並んでいたら、必ず手に取ってしまう。
大好きな特集の時は、二冊買うか、考えてしまうくらいだ。
いつだったか、コンビニで立ち読みしている所を力石に見つかって、声をかけられた。
俺を呼ぶ声も聞こえないほど、グラビアに見入っていたなんて、一生の不覚だ。
あれ以来、時々力石はエロサイターの話を振ってくる。
「力石、もしかして使ったとか……」
「よく見ろよ、本屋の包みは開けてない」
「あ……ほんとだ」
力石が読み倒した雑誌も新鮮だと思った。
若い男なのだから、エログラビアを舐めるように見てもおかしくはない。
けれどこいつは、モテ男のオーラを放っているくせに、大抵一人で歩いている。
隠れるように、人混みをすり抜けるように。
そのくせ、道端の植木鉢や、居眠りしている猫をちゃんと認識している。
不思議な男だ。
「……そうだ、今週って、爆乳女子物語だったぞ!」
先週の予告で、俺は楽しみにしていたのだ。
言葉にするだけで期待が高まってくる。
雑誌の入った袋を留めているテープが、外したくて仕方ない。
「……爆乳女子、物語……ってタイトル、すごいな……」
「なんだよ、力石。笑うな」
「笑わないって」
そう言っても、力石は笑いながら俺をちらりと見た。
その目が憎い。
伸ばした手で、力石の頭を軽く叩く。
「痛っ……!」
「笑ったぞ」
「……仕方ないなあ」
力石は怒らない。
そういえば、いつも笑っている。
憎々しい時もあれば、可愛い時もある。
「持って帰って、ゆっくり見たらいいよ」
「あ、そうだな。ここで動けなくなっても困るな」
ある意味、今夜のオカズだ。
「……今夜のオカズか……」
「俺の心を読んだのか!」
「わかりやすすぎて……」
俺から目をそらして、力石が笑う。
口元が、本気で楽しそうだ。
「あのな、そういう下品な事は言わないように」
「はいはい。気に入ったのあったら、教えてくれ」
「貸してやるぞ」
「バカ」
力石が、俺の帽子を引っ張った。
そのはずみで、雑誌が床に落ちそうになった。
「ぬおっ!」
「あ、すごい。さすが本郷さんだ」
少し腰をひねったけれど、ギリギリで雑誌は掴めた。
人からもらった物を、粗末に扱う俺ではない。
「こらっ、大事にしろ。俺のだぞ」
「……そんな、大事にしてくれるんだ……」
「そりゃ……」
「グラビアだから? もらったから?」
ひとまず力石を睨んで、エロサイターの表紙に目を落として。
笑いが止まらなくなってしまった。
「グラ……った、人」
「ハハハ! 新しい単語だな」
力石は、俺が注文したビールを目一杯コップに注いで、ぐっとあおった。