ちょっとだけ、腐表現が激しくあります(自分比)
力石が夢を見るという状況は、かなり萌えたぎります。
普段はあまり覚えていなくて……本郷さんといる時は、気を抜きすぎるからで、バンバン見てたらいいな。
「……珍しい、俺、夢見てたよ……」
掠れた声がそう呟いた。
力石が起きたらしい。
ぼんやりとした頭で、その意味を追っていたところ、おもむろに俺の腹がくすぐられた。
「こっ、こい……つ……!」
「本郷さん、慰めてくれ」
「朝っぱらから、何だよ……」
逃げようにも、狭い布団の中でくっつくようにして眠っていたのだから、動けない。
力石の足も手も、ずっと俺を掴まえている。
目が醒めるまで何の問題もなかったのに、今はもう、触れている力石の身体を意識して、たまらない。
「り、力石……これ以上は……」
「本郷さんって、夢とか見る?」
「へ?」
まぶたのあたりをくすぐるのは、力石の口唇だ。
少し温かくて、甘い優しさがある。
昨夜はもっと熱かった。
「楽しいのとか、エロいのとか、怖いのとか……」
「冒険活劇みたいなのなら、さっきも見てた」
「それ、どういうの?」
力石が笑って、俺のまぶたを舐める。
口唇だけじゃなく、舌の先で触れてくる。
うっかり許しているけれど、調子に乗りすぎだ。
「ん……戦いの装備というか、棒っきれ握りしめて、神田に飲みに行ったんだよ。店に入ったら、そこが名古屋でさ」
「ハハハ、それはすごく夢っぽいな」
「手羽先か味噌カツかで悩んでたら、力石が、この電車に乗ると博多に行くって言い出して、そのまま一緒に電車に乗った」
夢の説明をするくらい、無意味な事はない。
つじつまは合わないし、細部まで覚えている方が少ない。
話ながら、勝手に補完されてしまうのは、正しく見た夢ではない気がする。
それに、自分の内面を露骨に晒すようで、言いながら恥ずかしくなってくる。
もっと、格好いいように盛ればよかった。
「……そうか。本郷さんの夢にも、俺が出てるんだな」
「え?」
「俺、普段全く夢なんて見ないのに、たまに見たと思ったら、本郷さんを探す夢だよ」
「おいおい、聞かせろ!」
力石が俺の夢を見るなんて、思ってもいなかった。
思わず、聞く声に力が入ってしまう。
「ちらっと本郷さんの姿が見えたから、後を追いかけたらいなくて。振り返ったら、ずっと向こうを歩いてる。その繰り返し」
「へえ……」
「普段、そんな覚えはないんだけどな」
俺もだ。
店で出くわす事はあっても、後をつけるように追いかけて、一緒になった記憶はない。
行き着いた先にいるのが力石だ。
「……それはな、俺がおまえよりも、ずっと先を行ってるという夢なんだ」
「ああ、なるほどね」
素直に頷かれては面白くない。
けれど、やはり俺は、力石よりも先んじているのだろう。
少し自信が戻ってきた。
大体、どこで出会っても、力石くらいクールに食を組み立てている男を俺は知らない。
何を選んでも、俺を簡単に越えてしまう。
もちろん、認めてはないけれど、その目の確かさには、一目置いてやってもいい。
「本郷さんの夢は、現実の俺も反映されてるな」
「え? あんな荒唐無稽なのが?」
「だって、棒って……リアルすぎて笑える」
そう言われて、初めて気がついた。
俺は、力石の股間に手を伸ばしたまま、眠っていたのだ。
人間、あまりにも驚くと、声も出ない。
「何か、気持ちいいとは思ってたんだけど、本郷さんの手だったとはね」
「あ、あ、これは、違って……違う……」
「いいよ、そのままで」
「いやっ!」
力石の手が、俺をぐっと押さえつけた。
より強く、力石が伝わってくる。
「待って、力石、ちょっと……やり直しを……」
「やり直し? 大歓迎だ」
「違う! そうじゃなくて、触ってないところからの……」
とんでもない醜態だ。
唐突に、俺の見た夢の意味が理解出来て、絶望した。
一生の不覚に近い、最低な夢を見たのだ。
「……ああ……俺、なんてハレンチな夢を……」
「それにしても棒っきれか。俺としては、微妙なところだな」
「ああ! もうそれ以上言うなよ!」
「戦いの装備って、昨夜はそんなハードだった? それとも、そこまで信頼してくれてる?」
力石は遠慮がない。
どんどん、俺に攻め込んでくる。
「そうじゃ、なくて……! 夢ってのは、正夢と……正夢と、何があったっけ……」
「正夢か。わかった。本郷さんと戦いを共にしてやる」
「戦い……って……違う! ちょっ……」
離してくれない俺の手の中で、夜の力石が起き出してくる。
「戦いっていうのも、また……すごい表現だな」
「勘弁してくれよ、夢の中なんだから!」
「起きていて見る夢? 俺、経験ないよ」
「俺だってない!」
「じゃあ、一緒に見よう」
これは夢じゃない。
聞いてくれない力石の口唇が、ゆっくりと俺の口を塞いできた。