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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

49 ■ 銭湯帰り

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49 ■ 銭湯帰り

本郷さん格好いい祭、開催中なんですが、ここしばらく、全然格好よくないのが悩みの種です。
おかしい……格好よさを注いでいるはずなのに、かわいい……(自分比)
ちょっと密着してるのが多かったので、久しぶりに普通に飲んでる感じで。











「休みだ、休みだぜ!」

嫌な仕事が終わった開放感で、うっかり叫んでしまった。
ただでさえ少ないのに、ちらりと、行き交う人に見られてしまう。
不審すぎる俺だ。

「……いや、まあ……」

思わず帽子を深くかぶって、意味のない隠れ方をする。
ゆっくり離れて、そこに俺がいなかった風を装った。

しばらく、とても忙しかった。
こういう時が、たまにある。

「そういや、力石に会ってないぞ……」

十日か、二週間か。
それまでは、三日をあけず顔を合わせていたから、なんだか不思議な気分になってきた。

「力石のいない戦いか……」

それは、戦いと言っていいのだろうか。
いや、俺はいついかなる時だって、食に対しては戦いを挑むのだ。
力石のいるいないなんて、全く関係がない。

「……けど、まあ、ヤツの事だから、元気にしてんだろうな、きっと」

ふと見上げた先に、俺の大好きな看板が見えた。

「おお! 銭湯か、いいジャン。そうだ、せっかくだから、ここで贅沢していこう」

吸い込まれて当然だった。
時間的にも、まだそんなに人はいないかもしれない。
まさに贅沢な時間を過ごせる。

足取りも軽く、銭湯に吸い込まれた。




「いい湯だ……」

手足を伸ばしても、何の問題もない。
こんなにも気持ちよくて、広い風呂に、誰もいないのだ。
いや、向こうの隅にジイサンが一人いる。
それだけ。

ここもう、俺の銭湯って言ってもいいかもしれない。

「力石は、若いから、こんな所、知らないんじゃないかなあ……」

そう考えると、嬉しさにも拍車がかかる。
力石の知らない贅沢を、俺は知っているのだ。
今まで気づかなかったけれど、これは貴重な俺の勝ちではなかろうか。

ザブリと浸かった湯の中で、誰もいないから、気にせず大股開いてみる。
澄んだ湯に揺らめいて見える、俺のモノも、実に幸せそうだ。

「……金玉も喜んでら」

こんな独り言を言っても、気にする必要がない。

「マジで、銭湯最高!」
「兄さん、ゴキゲンだね、お先に」

隅にいたとばかりに思っていたジイサンが、俺を覗き込んで、出て行った。
急に恥ずかしさがこみ上げてきたけれど、今度こそ一人だ。


次に孫を連れたジイサンが入ってくるまで、俺は何も考えず、とにかくのんびりしていた。






「風、気持ちいいねえ……」

くにゃくにゃになりそうな足腰に力を入れて、銭湯を出た。
こんなにも気持ちがいい場所があるのに、知らない人間が多いのは勿体無い。
力石だって同じだ。

いや、今日のところは、俺だけの贅沢という事で、ゆっくり堪能出来た銭湯に感謝しておこう。

「さて。何を食べるとするか……」

身体の気持ちの良さは、胃袋まで満足しているような気になる。
今足りないのは、キュッと飲み干せるビールだ。
銭湯帰りには、あの泡が、一番似合う。

「ビール、ビール……あ、あののれん!」

俺好みののれんが、ビシッと胸に響いた。
漂う匂いは、俺の鼻から掴みにくる。
確実に、焼き鳥が俺を呼んでいる。

今は、美女の甘い声よりも、時代を感じるのれんと焼き鳥の匂いが、いい。
最高にいい。

「よし。あそこに決めた」

もしかしたら、今夜は俺の人生の中でも、一位二位を争う最高の陣立が出来るのではなかろうか。
こみ上げてくる笑いを、抑えることが出来ない。

「こんちは……」

入口の扉を開けて、狭い店内に身体を押し込んだ瞬間、今までの高揚が一瞬で萎えていくのがわかった。
カウンター席に、見覚えのある姿がくつろいでいた。

「あれ、本郷さん」
「り、き、いし……」
「珍しいな。こんな所で会うなんて」
「そ、そう……久し振りだな」
「本当だ。しばらく会ってなかったな」

手招きされて、吸い寄せられた。
力石の隣に、くっつくように腰を下ろす。

「本郷さん、なんか温かい……外、そんなに暑かったっけ?」
「いや、銭湯帰り」
「ああ、あそこの銭湯か。いいよな」
「え、力石、銭湯行くの?」
「今日は寄ってないけど、たまに。あそこからここへの流れ、贅沢だよ」

俺と同じだ。
贅沢まで、力石に奪われた。
愕然として、頭が下がる。

「本郷さん、ビールだろ?」
「お、おお……飲む」
「すいません、ビールください」

店主の返事が聞こえる。
俺はまだ、顔をあげることが出来なかった。

「本郷さん? ここさ、焼き鳥が美味くてね……」
「……焼き鳥、食べる……」

俺の見つけた店だったのに。
力石は、通い慣れた風に、注文を入れる。

「俺、今さっき来た所で。ちょうどいいから、一緒に食おう」
「おお……」
「どうした? 元気ないけど。銭湯、よくなかった?」
「……よかった。金玉も伸びた」
「それはよかったな」

俺の渾身の下ネタを、力石はクールに流した。
格好悪すぎる。

「はい、ビールどうぞ」
「あ、どうも。本郷さん、来たよ。乾杯しようか」
「お、おお」

輝く黄金のビールと、絶妙な比率の泡が、俺から嫌な気分を忘れさせてくれた。
飲めば、元の俺に戻るだろう。

「よし! 飲むぞ」
「あ……」

コップを掴んだ俺は、乾杯しようと待っていた力石の存在を一瞬忘れて、ぐっと一気に飲み干してしまった。

「あっ! すまん、飲んじゃった……」
「ハハハハ、いいよ。すでに俺も飲んでるし」
「じゃあ、今から。もう一回やろう」

今の俺は、力石にお預けを食らわせてしまった。
全く悪気はなかったけれど、何やらいい気分だ。

ソツのない力石が、ビールを注いでくれる。
泡の少ない、いい注ぎ方だ。

「おまえ、ビールの注ぎ方、うまいよな」
「ほんと? 本郷さんに褒められるのは嬉しいな」

俺の方が有利。
なんだか嬉しくなってきて、改めて、乾杯した後、じっくりとメニューを見る事にした。



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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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