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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

21 □ 二人のハロウィン

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21 □ 二人のハロウィン

調子にのって、ぐっと距離の縮まっている力本で!
やや腐表現あり……のつもりだったけど、いつもとあまり変わらないかも。

街は……絶対に近寄らないだろうけど、そこらが妄想って事で。
これもまた、甘さ炸裂。





いつから、こんなに騒々しくなったんだろう。
人間が歩いていない街。
正確には、人間だけど、目を見張るような仮装ばかりで、頭がクラクラしてくる。
ここまで派手に盛り上がっていたとは、近寄らないから知らなかった。

異様な色で飾り立てられる十月の末は、のんびり街を歩く事すら出来ない。
これだけ独特な空気に包まれていたら、何をやってもいい気にさせられる。

たまには。


「本郷さん」

そんな街の中を、俺は、本郷さんと歩いていた。
お互い、どこにいても、いつもと変わらない格好だ。

「なんだよ……あっ……」
「迷子になったら困るだろ」
「俺は子供か!」

なんとなく動きが硬い本郷さんの手を、強引につないだ。
一気に距離が近づく。
本郷さんの足がもつれそうになるのを見て、思わず歩くのを止めた。

「大丈夫?」
「り、力石よ……ちょいと、大胆すぎやしないか?」
「大胆って……」
「だって、手……手を、こんな人前で……」

うわずった声が、やけに響く。
聞こえているのは、俺にだけだけど。
誰も、周りに気をとられる余裕なんてない。
今夜はそんな街にいるのだ。

「手をつないでるだけだろ? 普通だよ」
「で、でも、誰か、が、見て……」
「見てもいいよ。関係ない」

周りを気にする本郷さんは、挙動不審すぎて、逆に目立つ。
せっかく俺が、街への溶け込み方を教えているのに。

「本郷さん、いい?」

ふと、店と店の間に気付いた。

「ここ? 店じゃない、よな?」
「うん」

行き交う人を避けるふりをしながら、さりげなく、本郷さんの頰にキスをした。

「ひっ!」

途端、本郷さんが、ものすごい勢いで、俺の手を振りほどいた。
そのまま俺が今、キスをした頰を、両手で隠す。

「本郷さん……」
「おま、おまえはっ、こんな所で……!」
「別に、人の邪魔にはなってないし」

律儀に左右を見回すのが、俺の大好きな本郷さんだ。
二回も繰り返して、小さく頷く。

「たしかに、そうだけど……」

今夜は、あえて、絶対に来ない街を選んだ。
待ち合わせは、今時、中学生でもしないだろう、犬の銅像の前。
来る電車の中もすごかったけど、駅に降りても人しかいない。
あまりの多さに、本郷さんと、出会えないかもなんて、心配をした。

それは全く、必要のない心配だったけれど。

本郷さんも、俺のことをすぐに見つけた。
気づいているだろうか。
お互い、これだけ人がいるのに、ほぼ一直線で捕獲出来たのだ。
これこそまさに、運命の出会いだ。


「本郷さん、今夜、何食べる?」

人混みはもういい。
どれだけ人がいても、俺は、本郷さんを見つけられるとわかった。
今夜はそれで、かなり満足した。

「……そう、だな……トマト、かな」
「今夜はカボチャだろ?」

目を閉じてもうなされるぐらい、カボチャにあふれている街を見て、トマトときた。
確かに、あちこちにドラキュラの仮装がいる。
血まみれの集団もいっぱい歩いているから、トマトを連想するのは、間違いでもない。

「今夜のカボチャは、流行に乗せられすぎてるから、嫌」

そういう感覚は大好きだ。

「……じゃあ、おでんにしようか」
「うっ……」

本郷さんが、俺を睨みつけた。

「え? おでん、嫌だった?」
「いや……そうきたか、と思って……」

むむむ、と、本郷さんが唸る。
最近食べたトマトのおでんは、なかなか美味しかった。
ぜひ、本郷さんと一緒に食べたいと思っていた。

「おまえは……やっぱり、読めない奴だ」
「……それ、嫌ってこと?」
「違うよ」

本郷さんの手が、ひらひらと揺れた。

「あ、ごめん」
「へ?」
「淋しかっただろ、手」

さっきよりも強く、その手を握りしめる。
今度の本郷さんは、逃げなかった。

「力石よ……」
「このままで。どう見ても、仮装だから」
「……いい、けど……」

本郷さんの手にも、力がこもる。

「……俺は、仮想じゃ嫌だぞ……」

嬉しい響きと、熱だ。
思わず指を絡めてしまう。

「もちろん、俺だって、そうだよ」










「おでんって、近い?」
「ん……ちょっと離れるけど」
「じゃあ、なんでここで待ち合わせたんだ? 意味ないだろ?」

早々と街を出た。
電車の中で、本郷さんが俺に訴える。
街ほどではないけれど、やはり満員だ。

俺はドアに背を向けて、先に安定を取った。
つり革を握る本郷さんは、とても無防備で、見ていて楽しい。

「本郷さんと一緒に、ふらっと歩きたかったって、ダメ?」
「ほとんど歩いてないし」
「雰囲気を楽しむ……あ、デートっぽい」
「……俺なあ、疲れたよ……」

意地悪く吐き捨てるから、わざと本郷さんの腰に手を回して、抱き寄せた。
ぐらりと揺れた本郷さんは、つり革から手を放してしまった。

「おい……!」
「疲れたんだろ? 俺に掴まってたらいい。それとも、ここ、変わろうか?」
「よくない……こんな……人が……」

今夜はハロウィンだ。

「本郷さん、ハロウィンの頭文字、わかる?」
「ハロウィン……は、H……」
「ね? 解禁ってことで」
「何……」

絶妙なタイミングで電車が揺れて、本郷さんが、俺にしがみついてきた。

「後の事は、おでん食べてから考えよう」
「おまえなあ……」

自信を持っていいのは、今夜、本郷さんは、一言も嫌だと言わなかった事だ。
多少、振り回してしまったけれど、一緒にいるのは楽しい。

俺のパーカーを握りしめている、本郷さんの手が可愛くて、視線をそっと、そこに落とした。

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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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