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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

26 □ お屠蘇

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26 □ お屠蘇

ここらで入れないと、来年になってしまうネタ…(もうすでにいくつかありますが)
当たり前なんですが、力石から見た本郷さんは、半端なく可愛い。
可愛い中に、格好いいを見出したい!





何が変わったわけでもないと思いながら、新年早々の店を訪れる。
年明けの酒は、いい日本酒を置いてある店がいい。
そう思って選んだ。

店主に軽く頭を下げて、ふと見たカウンターに、本郷さんが座っていた。

「本郷さん」
「……んお?」

赤い顔をしている。
すでに、十分酒と肴を堪能している姿だ。

やっぱり。
俺が行く店には、高い頻度で本郷さんがいる。
別に細かな好みの話をした事はないけれど、本郷さんが選ぶ店は大抵美味い。
安くて美味い店を見つける勘は、鋭いと思う。
そんな本郷さんに会えたのだ。
今年も、いい始まりになりそうだ。

「本郷さん。今年もよろしく、だな」
「おお、俺は勝つからな」
「?」

本郷さんの隣に腰を下ろして、今年最初の酒を注文した。
続けて料理も忘れない。

「力石よ。お年玉は貰ったか?」

唐突に、本郷さんが俺に話しかけてきた。
正月らしいといえば、らしいけれど、何を基準にしているのか、さっぱりわからない話題だ。

「え? 俺はそんな年じゃないけど。むしろ、あげる方だよ」
「へえ……」

俺の言葉に納得していない表情で、酒を飲み干す。
美味しそうに、本郷さんの喉が鳴った。
その姿を見ながら、そっと手を伸ばして、徳利を掴んだ。
まだ残る酒は温かい。

「本郷さん、どうぞ」
「おお」

今年初めてのお酌、だ。
いつも顔を合わせて飲む時は、自分のペースを大事にして、手酌が多い。
けれど、会話のきっかけに、徳利を向けるのはとても便利だ。
本郷さんとは、注ぐのも、注がれるのもいい。

「それじゃ、本郷さんはあげたんだ?」
「いや……あ、俺は、俺にあげたよ」
「え? それって、普通に貯金とか?」
「この酒が、お年玉。俺の。いいだろ」

そう言って、とろけるように笑った。
俺の心臓が跳ねる。

どうして、本郷さんは、可愛いとしか言いようのない表情をするんだろうか。

「……じゃあ、俺があげようか」

俺の注文した熱燗がやってきた。
多分、本郷さんが飲んでいるのとは違う銘柄だと思う。
ひとまずの料理も届いて、俺の前も華やかになる。

「はい。本郷さん」
「おお、すまんな」

お猪口を持つ本郷さんの指先から、何やら嬉しそうな気配が感じられた。
本当に、分かりやすい。

「アチっ……美味い……」
「いい温度だね。燗酒は奥が深いよ」
「たまらんな。この匂いも最高だ」

この店は、日本酒の品揃えもよくて、店主の燗のつけ方が絶妙に美味い。
麗しい匂いとは、燗酒のためにあるような気がする。
本郷さんも、ちゃんと知っているのが嬉しい。

「そうだ、力石。正月に飲む酒は、おそとって言うの、知ってたか?」
「……おそと?」

聞き返してしまった。
途端、本郷さんの口元が緩んだ。

「やっぱり知らなかったか」
「いや、知らないじゃなくて……」
「いいじゃん、いいじゃん。おそとは、実に正月だ」

本郷さんは、酔うと声が大きくなる。
俺は別に構わないけれど、すでに店内にいる他の客が、こっちをちらっと見ている。

「本郷さん、おそとじゃなくて、お屠蘇だ」
「おそ、と?」
「お屠蘇」
「おそと」

あっと気がついた顔をして、本郷さんが手を叩く。

「なるほど。言い間違ってたか。酔いが回ってるな、俺」
「……直ってない……っていうか、そんなに飲んでないだろ」
「今から飲む。おそとは縁起物だ」

ダメだ。本郷さんのおそとが直らない。
けれど、こんなにも嬉しそうな顔で、正月の酒を飲む機会は、来年までないだろう。
せっかくだから、間違ったままの本郷さんを楽しむ事にする。
お屠蘇も、おそとも、響きは似ているし、何より、本郷さんの声がいい。

「まさか、力石とおそとを飲むとは、思ってもなかったな……」
「……確かに」

本郷さんを知る前の俺は、どうしていただろう。
そんなに昔の事じゃないのに、さっぱり思い出せない。
どこで、どんな風に食べて、飲んで、酔っ払っていたのか。

「本郷さんと飲むと、酔いがまわるよ」
「……酔っ払え」
「ん?」
「今年もいい事がありますように、ってな」

本当にそうだ。

「酔っ払う事にする」
「よし、酔わせてやるぞ。楽しみだ」

俺の言葉に、本郷さんが追加の酒を注文した。
本当に嬉しそうだ。
見ているこっちも、嬉しくなってくる。

そういえば、どれだけ飲んだら動けなくなる本郷さんのように酔っ払うのか、俺は自分を確認した事がない。
今夜は、もちろん俺も酔うけれど、その倍は、本郷さんに飲ませてやる。
お年玉をあげる約束をしたのだ。

「本郷さんがいるだけで、楽しい正月だな」
「おうよ。さあ、飲んでくれ」

実に甲斐甲斐しく、俺についでくれる本郷さんの動きが、そろそろ怪しくなっていたのが、また楽しくてたまらなかった。

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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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