忍者ブログ

おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

25 ■ 丑三つ時

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

25 ■ 丑三つ時

日頃、なんでもない言葉から、恐ろしい勢いで妄想広がります(単純)
世の中のすべては、本郷さんと力石につながっている……!
いつも、楽しそうにいっぱい飲み食べしていてくれたらいいなあ。
あ、本郷さんは熱く対決してたっけ(笑)
勿論そこに、さりげないイチャイチャを見出す楽しみがあるのです。








「本郷さん、もう酔った?」

唐突に力石が、けしからん事を言い出した。
今夜の熱燗は、まだ始まったばかりだ。
楽しんでいる刺身だって、このまま水に戻したら、勢いよく泳ぎそうなくらい新鮮だ。

力石の箸が、そっと刺身を連れていく。
醤油につけて、そのまま口元に。

「……本郷さん?」
「あ、食べてる、食べてるよ」

今俺は、力石の動きのままに、口を開けて見守っていたのだ。
格好悪い。最悪だ。

わかった。
刺身の美味さに、独り占めしたくなったという事か。

「ああ、力石よ。おまえこそ、酔ってるんじゃないか? その刺身、俺が食べてやってもいいぞ」
「……ん? 食べる?」

何のためらいもなく、力石は俺に皿を差し向けた。

あ、れ?

「あ、酒の方がよかった?」
「……い、いや、力石こそ、腹具合はどうだ?」
「食べてるよ。すごく美味しい。この店いいね」
「む、う……」

力石の表情からは、奴が何を考えているのか、全く読めない。
それは、顔を合わせたら飲むようになって、少しも変わらないのだけれど。
嫌々じゃないのはわかる。

「さっきの話の続きだけど」
「へ?」
「本郷さん、言ったじゃないか。夜中に目が覚めるって」
「ああ……」

そういえば、そんな話をしていた。
ここしばらく、変な時間に目が覚める。
ひどく酒に酔った時でも、体内に正確な目覚ましがあるのか、身体は動かなくても、しっかりと意識は戻るのだ。

「それってさ、年かな」
「は?」
「年とると、人間朝が早くなるって聞くから」

痛いところを突かれてしまった。
失礼な、とか、無礼な、とは、不思議と思わなかった。
実は、俺もひそかに恐れていたのだ。
もしかして俺は、知らぬ間にそんな年齢に足を踏み入れていたのだろうか。
恐ろしい。なんて恐ろしい事実なんだろう。
そんな重大な秘密を、力石に気づかれてしまうとは。

「まあ、ここしばらく急に寒いのと、気圧の関係で、眠りが浅くなったりするのかも」
「……なるほど……」
「ごめん。本郷さんに限って、年はないよな」
「そ、そう?」

少し、光が見えた。
力石の言葉に、説得力まで感じる。
こいつは、いい奴なのだ。
こんな事で俺を騙す意味はないだろうから、素直に受け取っておこう。

けれど、だ。

「……実はな、俺が目を覚ます時間というのが、なぜか丑三つ時なんだよ」
「え?」

まんざら嘘でもない。
ふと時計を見たら、夜中の二時前後が多いだけだ。
力石に言われっぱなしもない。
怖がらせてやろうと、少し神妙な声で囁いてみた。

「もしかして俺、何かに祟られてるのかもしれないぜ」
「本郷さん……」

大笑いして、冗談だと言うつもりだった。
それなのに、真面目な顔をしている力石にドキリとした。

「……ウシミツドキって、何? 蜂蜜の仲間?」
「おまえは、何を……」
「聞いた事ない。牛の蜂蜜? そんなのあったっけ」

そう言って、力石はお猪口を飲み干す。

「いや、丑三つ時って、言うだろ? 普通に」
「……うーん……」

力石はこういう奴だ。
何でも知っているように見せかけて、大事なところが抜けている。
丑三つ時を知らないなんて、普通にありえない。

おかしい。
無知な力石がおかしくてたまらない。
でも、ここで大声で笑う事は、力石を傷つけてしまうかもしれない。
例え食のライバルで、俺をいつもやり込める相手だとしても、今目の前で考えている力石は、丑三つ時も知らない若者なのだ。
ぐっと我慢して、温かい目で力石を見守る。

「おまえさ、怖い映画とか、話、興味ないの?」

ダメだ。声に笑いがこもってしまう。
小さく首を傾げながら、力石は考えている。

「あんまり」
「え、嘘?」
「一応見るけど、見るだけ。怖いも何も思った事ないよ」

意外すぎる答えだった。

「あのな、丑三つ時って、幽霊が一番活躍する時間らしいぞ」
「……かつ、やく……」

力石が吹き出した。

「何だよ」
「幽霊って、活躍するんだ。本郷さん、その言い方じゃ、ちっとも怖くない」
「この場合、活躍っていうのは、ものすごく怖がらせるって意味だろ」
「……見た事ないからなあ……」
「それは、俺もだけど」

力石が俺を見る。

「一緒だ」
「お、おお……」

とっさに力石よりも先に徳利を掴んで、お猪口を要求する。

力石の手の中のお猪口は、実にいい具合に収まっている。
持ち方がいい。

「まだ、熱いよな」
「そうだな」
「もう一合ぐらい、飲むか?」
「じゃあ、あっちの銘柄にしよう。あれもすごく……」
「美味いよ、すごく美味い。幽霊も裸足で逃げ出す美味さだ」

力石の言葉を取ってやった。
毎回、先を譲る訳にはいかない。
今、力石が言おうとした酒も、燗が美味いのは俺だって知っている。
壁に貼ってあるメニューを指差して、声高らかに俺が、注文をした。

「力石?」

ふと視線を戻すと、力石が肩で笑っている。

「本郷さん……俺を笑わせてくれるから……」
「え? 何? おまえの、牛の蜂蜜より面白い事、言ったか?」
「幽霊が裸足でって……幽霊に足がないのは、俺だって知ってる」
「……あ、そこ?」

力石の笑いが止まらない。

「そんなにおかしいか?」
「本郷さんの言い方、かな」
「おまえの方こそ、牛の蜂蜜はない。蜂蜜って、蜂だろ? 牛、関係ないじゃないか」

返事もなく、力石は笑いながら頷いている。
笑わせたという事は、俺の勝ち、だと思っていいだろう。
年の初めから縁起がいい。

なんとなく偉そうな気分になった時、熱燗がやってきた。

「力石、乾杯だ」
「ああ」

徳利とお猪口。
何度も繰り返した楽しみだ。

「そういえば、祟りとかって、お酒で払ったっけ……」
「へえ。初耳だ」

カチリと交わしたお猪口の音は、いつ聞いてもいい。
多分、この音がある限り、俺も力石も、笑いこそすれ、怖い思いはしないような気がした。

拍手

PR

コメント

カレンダー

03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30

プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
pixivID 18019731
サークル 本郷格好委員会

1