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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

27 ■ 蓮根の天ぷら

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27 ■ 蓮根の天ぷら

色々書き進めては、手が止まる状態なのは、萌えネタを頭に詰め込みすぎたせいだと反省。
(T田さんの映画を見すぎました)
そして、多分一番いかんのは、本郷さんと力石の揺るがない関係……
単行本を読み返すたび、けしから〜〜〜〜ん!ってなるこの、この満足感が!
満足してダメになる(笑)

今夜は寒いし、いつもの甘酸っぱい小話で、頭を切り替えます。





「本郷さん、寒くない?」

熱燗で、身体の芯から温まっている俺に、力石がおかしな事を言い出した。

「おまえ、酔ってるんだろ」
「酔ってないけど。ほら、今夜、雪になるって」
「へえ……そうなんだ」
「外は、風の音がすごいよ。ここでも聞こえるんだから」

天気なんてあまり気にしてなかった。
確かに、今日は昼過ぎから急に冷え込んで来た。
雪が降ってもおかしくない。

だから、今夜は天ぷらにしたのだ。

熱燗と、熱々の天ぷら。
最強の取り合わせがあれば、寒さなんて飛んで行ってしまう。
雪だって、いくらでも降ってきやがれ、だ。

「あ。力石は、海老が好きだったよな」
「……そうだっけ? まあ、なんでも好きだけど」
「ほら、食べたらいい」
「……どうした、本郷さん」

俺も海老の天ぷらは大好きだ。
むしゃぶりつきたいくらい、大好きだ。
でも、それを力石に譲ってやる、この心の広さ。

「俺に、温かさを感じるだろう」

力石が、俺の顔をマジマジと見つめる。
一瞬、ものすごくいい笑顔を俺に向けた。
ためらいもなく、箸を伸ばして、海老を取る。

「……いただきます」
「おう」

サクリと、いい音がする。
俺は、じっと力石の食べる様を見ていた。

「……本郷さんは食べないのか?」
「食べてるよ。俺は今、蓮根の穴について考えてたんだ」
「どういう……」
「なんで蓮根って、こんなに穴が開いてると思う?」

今の時点で、正しい答えは持ってない。
気持ちよく酔っている俺が、たまたま箸をつけたのが、蓮根だっただけだ。

力石は、真面目に考えている。
俺は、こいつの無言も、この顔も、嫌いではない。

「……そう、だな。いくつもの未来を、見通せるように、かな」
「へ?」
「例えば、海老の天ぷらだけど、本郷さんが、食べた未来もあった訳だろ?」
「……ほう……」
「何か、変わったかもしれないよ」

難しい事を言いやがる。
一瞬の間で、ここまで考えた力石と目があった。

「ま、そういうのも楽しいかな、って。大した答えじゃないけどね」
「むむう……」

いくつもの未来とは、大きく出られた。
その理屈でいくと、俺が、力石を完膚なきまでに叩きのめす夜があるという事だろうか。
いや、それは絶対に来る。
近い将来、必ず、確実に。

「……力石よ」
「ん?」
「俺は今、ちょっとだけ酔ってるけど、酔ってない未来もあるんだな」
「……まあ、そうなる、かな」
「おまえの方が、ベロンベロンに酔っ払って、二度とこの店に来られないって嘆く夜もあるんだな?」
「あ、それはない」

あっさりと否定された。
頭を殴られたようなショックがある。

「え、なんで?」
「俺、そこまで酔わないし」
「いや、でも今の話の流れじゃ……」
「酔いのコントロールくらいは、出来るからね。普通に」

己の情けない姿を思い出して、口元が震えてしまう。
酔いのコントロールって、美味い酒を飲んで、美味い料理を食べている時に、そんな気はつかえない。
もしや、そこが、俺と力石の差。

「本郷さんもだろ?」
「へ……」
「楽しく酔ってるんだから、いいんだろ?」
「あ……まあ、それは……ある、かも……」
「俺は楽しいよ。それに、本郷さんが二度と行けない店があるんなら、一緒に行ってあげるよ」

そう言って、力石は笑った。
どう聞いても、いい人でしかない。
思わず、顔を隠してしまった。

「力石……」
「俺にはそういう店ってないから」

感激したのに、最後の最後で叩き落とされた。
俺の耳にこだまする。
泥酔してないアピールか。

確かに、力石の酔っ払ってみっともない姿は、見た事がない。

「……蓮根、食べる」
「え?」
「俺も、未来を見る……」

ゆっくりと顔を上げて、力石を睨んでやった。

ベロンベロンに酔っ払った力石が、俺に介抱される夜が来ますように。
もっとみっともない、昼間の泥酔でもいい。
この先、いつか。

「本郷さんといると、寒いのを忘れるよな」
「……そう?」
「温かさは、しっかり受け取ったから」

熱燗の徳利がやってきた。
いつの間に追加したのか。
力石のこういう所が、憎い。

「俺からも、温かい所を」
「……これは、おまえじゃなくて、熱燗の温もり」

文句を言いながら、俺は、手にしたお猪口を、力石に差し出した。

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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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