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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

87■ 星とお菓子

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87■ 星とお菓子

今夜はちらっと星が見えたので、そこから妄想が加速しました。






「お、星が出てる」

店を出て、力石が呟いた。
ビルの隙間に見える星だ。
俺よりも先に見つけた事が少し悔しい。

「本郷さん、さっき見た天気予報、明日雨って言ってなかったっけ?」
「そういやそうだ。雨なのに星って見えるんだな」

今飲んでいた店で、テレビはニュースを流していた。
俺は目の前に座っていた力石との勝負に必死で、ニュースなんかは見ていない。
ふと、力石が酒を追加した時に流れていたのが天気予報だったのだ。

明日は雨。
雨でも力石は飲みに行くのだろう、と。
そんな事を考えながら飲んでいた。

「本郷さんよ」
「何?」
「星って、何に見える?」

突然の力石の問いに、思わず言葉に詰まってしまった。
軽く酔いも回っている。
気の利いた答えが言えないと、鼻で笑われそうだ。

「星座の話か? 俺な、あれ、ちゃんと見えた事がない」
「星座は俺もだな。どうやって線をつなぐのかがわからない」
「おお! やっぱ俺たち気が合うよ!」

思わずその手を握りそうになっていた。
一瞬で酔いが覚める。

ひとつ咳払いをして、真面目に考えた。

「……そうだな、星はやっぱり、金平糖……」
「なるほど」
「なんだよ、なるほどって」
「本郷さんはそう言うと思ったんだ」

力石が嬉しそうに笑う。
自分の想像した通りに俺が動いたのが、そんなにも嬉しいのか。

俺はショックだ。
ライバルである力石に、全てを読まれたような気がしてならない。
もう少し、俺はミステリアスな男でいたいのに。

「んじゃあ、力石は何? まさかと思うけど、石の塊とか言うなよ? あと、氷の塊とかも反則だ」

先制攻撃を食らわせてやった。
力石という男は、夢を見そうにない。
ドライでクールで寒い夜の三日月のように尖っている。

ただ、最近は、ぐっと優しい顔を見せる時もあるから侮れない。

「たまごボーロ」
「へ?」

意外すぎる単語を聞いた。
思い切り力石の顔を見つめる。

「たまごボーロって、赤ん坊の食べる、あれ?」
「俺が言うと変かい?」
「……変」
「ひどいな、本郷さんは」

笑う力石には、たまごボーロが似合うかもしれない。
口元が実に甘く、優しい雰囲気まで漂っている。
おそるべし、たまごボーロだ。

「だってな、なんでそんな子供のお菓子が出てくるんだよ」
「あのさ、星ってどうして星型なんだ?」
「へ?」
「見ろよ、本郷さん。ここからこうやって見上げる星って、どう見ても丸くないか?」

力石の指差す方向を、一緒に見上げる。
少し、肩がくっついてしまった。

「……丸い、といえば、丸い……か?」
「大きさだって、ちょうどよくない?」
「食べられないだろ!」

ちょっと手を伸ばしても届かない。
見てるだけのお菓子なんて、悔しくてたまらない。

「食べなくてもいいけど……本郷さん、たまごボーロも食べるのか?」
「もう何十年も食べてないよ」

俺の言い方が悪かったのか、力石は声を出して笑った。

「俺だって、何十年も食べてない」
「……けど、俺ほど長くはないだろ」

力石は、確実に俺よりも年下だ。
たまごボーロに一喜一憂した時期は、つい最近の話だと思ってもいい。

「一緒くらいでもいいのに」
「そいつは贅沢だ」
「そうか……」

力石が俺の肩を叩いた。

「……何を……」
「あのさ、たまごボーロの専門店があるんだって」
「へえ、すごいな」
「今度買ってくるから、一緒に食べよう」
「……酒に合うか?」
「どうだろうね」

意味深な笑いに、俺の神経が注がれてしまった。
俺は、子供のお菓子は酒に合わせるものではないと思う。
美味すぎて、子供が飲んだら困るからだ。
その理屈でいくと、たまごボーロなんて絶対に合わない。

しかし、力石はそうとは言わなかった。
もしかして、もうその味を楽しんでいたのだろうか。
俺の知らない食の世界。

「ああ、食べたい……」
「ほんと? じゃあ明日あたり、また会うよな?」
「お、おお、楽しみにしてる」
「雨でも?」
「雨でも」

たまごボーロにつられて約束したような形だ。
力石は、もう一度空を見上げた。
俺も一緒に見上げる。
ほんの少し、肩をくっつけて。

つられなくても、多分明日も一緒に飲むだろう。

ひとまず、それは言わなくてもいいような気がした。




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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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