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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

12 ■ 鳩のいじわる

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12 ■ 鳩のいじわる

地味な下ネタ有りですが、エロの欠片もありません。
今、脳内で「本郷さんかわいい祭」が絶賛開催中なので、ややヘタレ可愛いになりました。
接近は、したといっていいのか……力石がんばれ。

ギャグのつもりですが、微妙な乙女チック路線……??(いかんいかん)





「今夜はモツ焼き、モツ焼き天国!」

うっかり口づさんでしまうほど、気分は高揚していた。
この世の中で、俺ぐらい、モツ焼きを愛している男はいないかもしれない。
旨くて、安くて、穴場な店があると聞いたら、誰だってすぐに行くだろう。
そのつもりで、腹具合の照準を定めてきた。

駅から少し離れたところにあるけれど、途中で小さな神社を抜けると近道になる。
この神社は鳩が多い。
そういえば、なぜ神社や寺には鳩が住み着いているんだろう。
慈悲深いから、か。

「まさか、ここに力石がいたりは、しない……だろう、な……」

何気なく振り向いたら、見慣れた人影が立っていた。
俺から、変な声が漏れる。

「やあ、こんなところで何してるの?」

深くかぶっていたフードから、あっさりと顔を出す。
力石だ。

「お、おまえこそ……どうした?」
「ん? モツ焼き食べようと思って」
「ええっ!」
「ほら、ここ抜けると近いから」

もう。
どうして力石は、俺と同じことを考えているのだろう。
輝かしい俺だけのモツ焼きが、力石の魔の手にかかってしまう。

「ダメだ、ダメだ!」
「本郷さん?」
「鳩め!」

大きく息を吸って、勢いをつけた。
鳩の群れに向かって飛び込む。
完全に、八つ当たりの、嫌がらせだ。
羽ばたくもの、鳴くもの、飛び立ちもせず、歩き出すのんきな鳩もいる。
その間抜けな姿は、今の俺のようだ。

大げさに走り回り、時間をかけて、地面にとどまる鳩を蹴散らした。

「本郷さん、そんなに鳩追いかけて……食べるのか?」
「おまえなあ!」
「捕まえるなら、手伝うよ」

ものすごく真面目な目で見つめられる。
力石は、情けない俺を、じっと見ていたのだ。
鳩に当たり散らした自分が、情けなくなってきた。

「鳩よ、すまん……ん!」
「あ」
「うわ! 鳩の野郎!」

息を吐き出す間もない、一瞬の事だった。
頭を下げて謝った俺のコートに、鳩が糞を落とした。
二羽も。
それは見事に命中した。
身をよじらないと見えない、背中と、左肩の付け根だ。
衝撃なんてないはずなのに、銃で撃ち抜かれたような気になる。

嫌だ。嫌なシミだ。
ここから魂が抜けていきそうだ。

「……それは、本郷さんが悪いよ」
「力石は、鳩の肩を持つのか」
「……鳩の、肩……」

はじかれたように、力石が笑い出した。

「おい、笑いすぎだろ」
「本郷さん、今の、今のはすごくおかしい!」
「……どこが」
「だって、鳩の肩って……肩ってどこ?」

力石がどういう想像をしているのか、よくわかった。
鳩に人間みたいな肩がある、という意味で言ったわけではなかったのに。

笑いすぎた力石が、涙をぬぐう。
信じられない。
あのクールな力石が、こんなことで泣くほど笑うとは。

「ああ、おかしかった。本郷さん、そのコート、脱いだほうがいいよ」
「え、俺はいいよ。大丈夫だ」
「鳩の糞がついたままなんて、背中のは目立つよ」
「そうか?」

脱いで、何の気なしに、手を伸ばしていた力石に渡した。
そっと受け取った力石がつぶやく。

「あ。本郷さんの匂い」
「えっ……」

目の前が真っ暗になった。
力石の奴。

「お、俺は、鳩の糞臭いのか……」
「え」
「糞って、しかも糞臭いって……加齢臭がある中年って言われるよりも、ショックだ」

正直、まだ中年だとは思いたくない。
でも自分を、オジサンだと自覚することは、たまにある。
あるけれど、鳩の糞とはあんまりだ。
こっちが泣けてくる。

「本郷さん、涙……? マジで?」
「うるさい、おまえもさっき、泣いてただろ」
「俺は泣いてないけど」

さっきの力石は、笑いすぎて涙を流していた。
俺は、鳩の糞臭いと言われて涙を。
こんなところでも、差をつけやがる。

「あのさ、本郷さん。俺、そんなこと、一言も言ってないよ」
「……だって、今……」
「本郷さんの匂いって……タバコ、吸うだろ?」
「……あ、ああ」
「本郷さん、タバコ吸うんだなって、思い出しただけ」

タバコの匂いは、大人の男の嗜みだ。
加齢臭とは程遠い。
だったら、まあ、いいだろう。

「本郷さんが加齢臭とか、考えたこともなかった」

唐突に、力石が俺に顔を近づけてきた。

「り、力石っ」

肩のあたりで、わざとらしく鼻をならす。

「タバコ」

ちらりと、力石が俺を見ている。
けれど、近すぎて、うまく距離がとれない。

どうにか合わせようと、体を離したり、近づけたりしたせいで、足元がふらつく。
もう少しで力石の方に倒れこむところだった。

「大丈夫? 本郷さん。そんなにショックだった?」
「……そうでも、ないんだけど……足が……」

近すぎるのは、別に不快ではない。
でもそれをうまく言うことは出来ない。
不思議だ。

「俺、タバコでいい?」
「勿論」

力石の目は真っすぐだ。
少しだけ、心が穏やかになってきた。

すっと離れた力石が、何事もなかったかのように、店の方を指差す。

「コートは、早くクリーニングに出すとして、モツ焼き、行こうぜ」
「……あ! そうだったな」
「一杯ぐらい、おごるよ」
「いいよ、そんなの」
「本郷さんを、泣かせたお詫び」
「な、泣いてないって!」
「いいから。あそこのモツ焼きに冷酒、すごく合うんだぜ」

重要なことを思い出した。
モツ焼き、だ。
単純なもので、途端に気持ちが舞い上がる。

「そういえば本郷さん、さっき歌ってなかった?」

聞こえていたのか。
ごまかしたいけれど、かなり大きな声だったように思う。

「歌……って、ない、ことは、ない、っぽい……」
「まあ、いいけどね」

俺のコートを持ったまま、力石が先に歩き出す。

「待ってくれ、力石。やっぱり俺、コート着る」
「え、これ?」
「……風邪、ひ、く……!!」

絶妙なタイミングで、でかいくしゃみをしてしまった。
舞い戻ってきた足元の鳩が、さっきよりも激しく飛び立つほどに。

力石が、震えるように笑い出した。

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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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