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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

40 ■ 禁煙の途中

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40 ■ 禁煙の途中

勝手な妄想シリーズ(……)色々混ざったのと、多分私の好きなパターン……

力石は、タバコを吸っていない設定があります。
原作に一コマあったのは、本郷さんの妄想だったからという、それだけの理由で。
まあ、いつでも吸えるし、原作に出てきたら、もういっちょ小話投入する予定で!








今夜は一番隅のカウンター席で、隣に座る力石と酒を飲んでいる。
いつもよりのんびりしたペースで料理も楽しみ、日頃しない話なんかもしていた。
うっかり、俺が犬に対してちょっとだけ苦手な所がある、なんて言ってしまったのがきっかけだけど、全てはこののんびりした雰囲気のせいだ。
俺は、敵に弱点を晒してどうするつもりなんだろう。

「本郷さんは、犬が近寄ってきただけでも逃げるほど? 小さい犬もダメ?」
「そんなんじゃなくて、吠える……あの声が苦手かな」
「へえ。子供の頃に吠えられたとか?」
「……多分、そんな感じ」

普段は忘れている情けない記憶を思い出す。
こんな話をするのは、力石だからいい事にしておく。

実際、いつも一緒に飲んでいるのに、お互いの事はほとんど何も知らない。
食の宿敵だし、馴れ合うつもりは全くなかったけれど、酒が入ると楽しくなってきて、気がついたら力石しかこの世に存在していないような錯覚に陥る。
だらしなく気を許してしまう俺は、激しく酔うと、なぜか怪獣の話がとまらなくなる。
これは自分の目安だ。

あれはどこの店だったか。
ベロンベロンに酔っ払った、その時はまだ見ず知らずのオジサンだった俺に対して、不審な目をむけつつも、話に付き合ってくれたのは。

「力石はさ、そんなのないのか?」
「俺ねえ……じゃあ、今はタバコって言っておこうかな。禁煙してるし」
「む、むむ……」

力石が禁煙に成功していると聞いて、正直な所、内心ムカついていた。
俺は今まで、タバコをやめようと思った事はない。
タバコは大人の男の嗜みだ。
ずっとそんな風に思ってきたけれど、いつになったらその理想に届くのか、この年になっても全くわからない。
そして、誰も教えてはくれない。
なんの関係もないのに、俺は、力石に裏切られたような気がしていた。

「なあ、禁煙するほどタバコって、吸ってたっけ?」
「本郷さんと会う前はね」

涼しい顔で酒をあおる。
コップを握っている力石の手は、全く可愛げがない。
絶対に認めたくないけれど、この可愛げのなさは、完璧に通じる。
食の組み立てだけでも憎いのに、店主との何気ない会話も、席を立つタイミングまでも、力石は全てが俺のずっと先を行っている。

「それ、最近の話じゃないか。禁煙を名乗るのもおこがましくないか?」
「……結構前になると思うけど?」
「昨日今日のレベルだろ、そいつは」
「……新幹線で、本郷さんと弁当食べたの、昨日だった?」
「むむっ……」

真面目な顔で返された。
時折力石が、ぐっと大人びて見える瞬間だ。

言葉の流れで、うっかり言いすぎてしまった。
確かに、昨日今日ではない。

「じゃ、じゃあさ。もう全く吸いたくはないわけ? 禁煙って」
「ん……」

さりげなく話題を変えて、酒を飲み干す。
俺の不自然さに力石が笑ったのがわかった。
けれど、かわまず、強引に話を進める。

力石も、軽く酒をあおる。

その仕草を見ていると、タバコを吸っている力石という姿を、一度くらいは見てもよかったと思う。
多分、口を挟む隙もないくらい、決まっているのだろう。
俺よりも格好いいとは認めてやらないけれど、見えない物はじっくり見たい。
それが、正しい男の心理だ。

「そうだなあ。まあ、吸いたくなったら、飴でも舐めたらいいって聞くけど、俺、あまり飴は好きじゃないんだ」
「へえ、意外……」
「だから吸わずにいられるけど、意外?」

力石が首をかしげる。

「だって、おまえの口から、食べ物に関してあまり好きじゃないなんて、聞くとはな……」
「普通にあるけど。椎茸とか」
「あ、言ってたな」

すき焼きを食べに行った時、その事実を知ったのだ。
俺に押し付けて、肉を独り占めしようとしたのは、この際、思い出さないでおいてやる。

椎茸は、あんなにも美味しいのに。
網の上で炙って、ちょっと醤油をたらした所を食う、あの美味さを知らないなんて、力石はかわいそうだ。

「本郷さん、飴の代わり、何かくれよ」
「へ?」

力石が手を差し出してきた。
でも俺は、今、何も持っていない。

「……俺は禁煙なんざしないから、嫌がらせのようにタバコを渡すぞ」
「ひどいな」

俺の冗談は通じている。
力石は笑いながら、手をのばしたままだ。

この手を見るのは何度目だろう。
しっかりとした男の手を見て楽しいだなんて、俺は酔いが回りすぎている。

「じゃあ、本郷さんからタバコをもらうとするか」
「おいおい、何を言ってるんだ。せっかくの禁煙だろ? 大事にしろ」
「……本郷さんがくれるって……」
「継続は力なり、だ。おまえの苗字が混ざってる。守れ」

チカラ、と、小さく力石がつぶやいて、肩で笑う。
楽しそうだ。

「……面倒だから、もう、握手にしとこ」
「え」

不意打ちで、力石の手を握りしめてやった。

「握手でこんにちはって歌があっただろ。これでどうだ?」
「……いいね。この飴の代わり、すごく気に入った」
「そうだろ、そうだろ」

力石が素直に従っているのは、本当に気分がいい。

「タバコをやめた甲斐があるって、今初めて思ったよ」
「健康には留意しろよ」
「……本郷さんこそ。この先、タバコが欲しかったら、本郷さんの手を握ったらいいって事だな」
「へ?」

ぐっと、手を引き寄せられて、力が込められる。
さっきまでとは違う、本気の力だ。
俺の身体が斜めに傾く。
力石の方に。
力石の、方、に。

「お、おい!」

当然のようにバランスが崩れた。
側からみたら、俺が力石に抱きついたとしか思われかねない。

「ち、違うぞ」
「何が?
「身体、傾いただけで! 触ってないだろ? 俺、全然やましくないから!」
「……触っては、いるだろ?」
「あああ!」
「本郷さん、大丈夫か?」

慌てて離れようとした俺の手に、もう一度力石の力がこもる。

「タバコの匂いをありがとう」

小さい呟きが聞こえて、力石が俺の身体を起こしてくれた。





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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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