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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

41 □ 立ち話

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41 □ 立ち話

格好いい力石祭り〜と、またしても勝手に盛り上がってますが、力石はいつも格好いいんだった(笑)
私はどれだけ整体ネタが好きなのか。
そして、なぜか整体から気の長い(長すぎる)ラブな話になりました。







腹の底から満足した昼飲みで、ご機嫌の帰り道だった。
駅までは、まだ少し距離がある。
いい調子で入った酒の勢いを大事にしようと、いつもよりゆっくりと歩く。
寒くはないけれど、暑くもない。
この季節は気持ちがいい。
もう一軒行ってもいいかも、なんてあたりを見回した時だった。

「あれ、本郷さん、早いな」

唐突に背後から声をかけられた。
慌てて振り向く。

「いてっ!」
「大丈夫か?」

パーカーのフードを深くかぶった力石が、俺の顔を覗き込んでくる。

「……腰、ひねった……」
「腰? 今ので?」

嫌味ったらしい力石は、喉の奥で笑う。

「その慌てっぷり。何かやましい事でもあったのか?」
「へ? そんなのないよ」
「ふうん」

ポケットに突っ込んでいた両手が出てきて、フードを外した。
改めて、目の前にいるのが力石だと認識する。

「ひゃっ!」
「ひねったのって、ここら?」

不意打ちで、力石の手が、俺の腰を撫でた。

「あ、いや、もうちょい、右……」
「こっち?」
「おおっ!」

厚いコートの上からなのに、異様にくすぐったい。
たまらず、悲鳴をあげてしまう。

力石の手は、何か特殊な念動力でも発揮しているんだろうか。
直接触れられているような錯覚を起こしてしまう。

「い、いいよ、大丈夫」
「本郷さん、整体に通ってるって言ったろ? ちょっと勉強してみた」
「勉強?」
「肩と腰がバキバキに凝るんだよな、本郷さんは」

声が嬉しそうだ。

「素人が触っていい世界じゃないぞ! 特に腰から背骨には、身体中の神経が通っているんだ。そんな……」

決して、力石の手が嫌だった訳ではない。
むしろ、この手は気持ちがよかった。
道の真ん中で転がってしまいそうなくらい、気持ちよくなってしまう自分が怖かったのだ。

「それもそうか。ごめん。本郷さんにはきちんとした先生がいたんだったな」

素直に謝られたら、俺が悪くなってしまう。
そうではないのだ。

「いや、おまえは悪くない。けど、俺がヒゲ先生に……別の手が入ったの、バレるかもしれんし」
「……本郷さんは、一途なんだな」
「へ?」
「浮気はしないって感じ? すごくらしいよ」

爽やかな笑顔で、力石は頷いている。
真剣に何やら複雑な誤解をされたようだ。

「あ、あのさ、ヒゲ先生はものすごく信頼してるけど、別に好きとか、まして、浮気とか……そういうのは全然関係ないから」
「ふうん」
「とにかく、腕がいいんだよ。本当に。だから、誤解はしないでくれよ?」
「別に俺、何も言ってないけど?」

穏やかに言われて、顔が熱くなる。
力石の言う通りだ。

「それに、俺が誤解しても、別にどうって事はないんだろ?」
「……む……」

力石から見える俺は、どんな感じなんだろう。
今、不意に興味がわいてきた。

「なあ、力石から見た俺って、どんな感じ?」
「変」
「へ?」
「すごく変」

追い討ちをかけられて、打ちのめされた。
まさか、すごく変だとは、思ってもなかった。
クールだとは言うまい。
せめて、格好いいとか、落ち着いた大人の男だとか、そういう、アダルトな路線を言ってもらいたかった。

真昼間から、俺は絶望している。

「そこがいいんだけど」
「……よくない……そんな、付け足したみたいなの……」
「どうしたよ、本郷さん」

その飄々とした態度ときたら。

力石は、決して動じる事がない。
最初に出会ったおでん屋から、一度も己のスタイルを崩した事がなく、時折、酒や料理が美味いと笑顔になったりするけれど、それでも落ち着きを払っている。
俺だって、そうありたいのに。

「……おまえって、俺のりそ……」

理想。
言いかけて、飛び上がるくらい驚いた。
今の俺は、多分スカイツリーを越えたと思う。
まさか力石に聞こえてないだろうな。

「何?」
「いや、いや! なんでもない。言い間違えた!」

跳ねる心臓の音も恥ずかしい。
手で押さえても、わかる。

「おお……バクバク言ってる……」
「どれ?」
「こらっ! エッチ……いっ、あ、イテテっ……!」

俺の胸に手を伸ばしてきた力石をさけようとして、再び腰をひねってしまった。
なさけないだけの声が漏れる。

「本郷さんよ、落ち着いたら?」
「落ち、ついてるよ、ずっと……」
「もう一軒行く? まだ昼だし、時間があるなら」
「お?」
「その先に、酒と魚の美味い店がある」

誘惑の言葉だ。
腰の痛みの原因を忘れて、思い切り頷いてしまう。

「手」
「え?」
「引っ張ってやるから」
「お、おい……」

周りに人はいなかった。
いても、今更気にする必要はない。

恐る恐る、力石に手を差し出す。
きつく握りしめられるのかと思ったら、意外なくらい優しい感触で包まれた。

「あれ? 俺を引っ張って行くんじゃなかった?」
「本郷さん、腰が痛いんだろ? そっとするに決まってる」

力石に従って、ゆっくりと歩く。
ひねりはしたけれど、歩けないほどでもない。

「……おまえな、介護職も似合ってる」
「俺が?」

テレビなんかで見る介護関係の特集が頭に浮かんだ。
力石の手は、つきそう職員の姿を思い出させた。

「……職業はおいといて。俺が介護するのは……もう決まってる、というか……」
「へえ。親孝行だな」

力石が吹き出した。






「もしかして、介護するって、あれ、俺とか言わないだろうな?」

二軒目の飲み屋は確かに美味い店だった。
冷酒を軽くひっかけたところで、唐突に理解して、叫んだ。
なんと失礼な。

「わかった?」

俺と同じように冷酒を飲みながら、力石が笑う。

「おまえは、俺をどんなジジイだと……」
「そういう意味じゃなくて、俺がいるから大丈夫だって話」
「……俺の方こそ、おまえの介護をしてやるから、安心しろ」
「へえ、楽しみにしてるよ。その前に、腰は治した方がいい」
「む、むう……」

再び、力石が笑い出した。
気がついたら、俺もつられて笑っていた。

冷酒がどんどん空いていく、恐ろしい昼飲みの始まりだった。



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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
pixivID 18019731
サークル 本郷格好委員会

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