エイプリルフールの話の予定が、全然違うのになりました……
な、なぜだ……
久しぶりに更新していく最初の話として、ちょっと甘すぎるのをいっときます。
目の前の力石が、のんびりと酒を飲んでいる。
さっき、ふらりと俺の家にやってきて、東北の美味い酒を並べた。
「ちょっと向こうに行っててね。これ、本郷さんに土産」
「あ、そうだったのか……」
しばらく、何の音沙汰もないから、おかしいとは思っていた。
元々、お互いに予定を言い合ったりはしていない。
気がついたら、力石が帰ってくるようになっていただけだ。
「急に行く事になったから、連絡も出来なくてごめん。あ。一度メールは送ったけど」
「へ? そうなの?」
今初めて知った事実に目玉が飛び出すかと思った。
慌てて携帯を取り出す。
「えっ、おまえからのメール、迷惑フォルダに入ってるぞ!」
「ほんと? じゃあ本郷さん、見てなかったんだな。なるほど……」
「なるほどって何だよ……」
ようやく、三日前の力石のメッセージを読む。
(仕事の都合で起こさずに出ました。もう少し余韻が残るくらい抱きしめていけばよかった。帰ったら、また)
何という破廉恥なひと言だ。
若い乙女でもあるまいに、俺の顔が熱くなっていく。
「本郷さんに嫌がられたのかと思ってた」
「なんで……」
力石が酒を美味そうに酒を飲み干した。
力石は、いなくなる前の晩、俺の部屋でくつろいでいた。
一緒にご飯を食べて、酒を飲み、伸びてきそうになる手を避けるため、あえて先に風呂に押し込んだ。
力石の手が嫌な訳はない。
どんどん深みにはまっていくような自分を抑えられるのか、試してみたかっただけなのだ。
なぜか俺の方がそのまま寝入ってしまった。
「……!」
ふと目が覚めると、俺を抱きしめて眠る力石がいた。
ちょうどいい腕枕と、珍しい寝息。
ああ、力石も眠るのだと思った途端、俺は再び眠りに落ちた。
次に目が覚めた時は、力石はもういなかったのだ。
「三日、長かったよ」
俺も普通に忙しくしているから、そうずっと力石の不在について考えていた訳はない。
ふと、今夜の店に向かう時。その店のドアを開ける時。最初の一杯目を飲む時。
……結構ずっと、考えていたかもしれない。
「本郷さん、淋しくなかった?」
「俺が? まさか」
慌てて手を振る。
「まさか、まさかだよ」
「そうか……俺は淋しかったよ。眠る本郷さんを置いて出るの、すごくためらった」
意外な言葉を聞いてしまった。
力石は真面目な顔で俺を見つめている。
「送ったメールに返事もくれないから、嫌な文章だったかなと、ちょっと焦った」
「焦るって……」
「本郷さんがいないと眠れない。よくわかったよ」
「お、おい、力石……」
ゆっくりと、力石が手を伸ばしてきた。
今夜はすぐに眠れるように、とっくの昔に布団は敷いてある。
俺の背中が布団に押し付けられた。
「力石……」
「寝る」
「へ?」
ゆるやかに押し倒されては、文句の言いようがない。
「力石よ……」
重い身体をずらして起きる。
珍しい事もあるものだ。
力石は眠っていた。
「……すまんかった。返事してなくて」
三日前に読んでいたら、もっと頻繁に連絡をしただろう。
力石が食べた物と俺が食べている物を比べて、陣立するのも楽しかったに違いない。
離れていても、一緒にいる事は可能だったのだ。
俺がいないと眠れないと行った力石。
俺だって、そうだ。
こたつの上に、食べっぱなしの物が残っている。
いつもなら、先に片付けて眠るのだけど、今は、離れないようにしよう。
「朝、おまえが片付けろよ……」
力石の隣で眠り直す事にした。