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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

58 □ 年上の人

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58 □ 年上の人

こんなにも可愛いのに、本郷さんは年上。
時々忘れそうになります(笑)
手に触ったけど、エロスはかけらもありません……そんな力本もたまには。










「ぬお……雨か?」
「え?」

店を出た時、本郷さんが空を見上げて手のひらをかざした。
つられて俺も、空を仰ぐ。

まだ明るいとはいえ、すっかり秋の空だ。
この間まで、暑すぎて溶けてもおかしくなかったのに。

「雨なんて、降ってる?」
「あ、いや。眩しかったから」
「……ふうん……」

今のはなかなか詩的だと思った。
本郷さんの手はいい。
手の平も、手の甲も、見ていて飽きない。
ごく普通の男の手なのに、何がいいんだろう。

そっと、自分の手と見比べた。

「どうした? どこか痛いのか?」
「ん?」

俺の仕草を痛いと思い、心配してくれた。
本郷さんくらい、優しい人もいないだろう。

「ちょっと……触ってみてもいい?」
「何を?」
「本郷さんの手」
「俺の?」

不審そうに俺を見ながらも、本郷さんは拒否をしない。
これが不思議で仕方ない。
男に触られるなんてごめんだ。くらい言えばいいのに。
優しさから断らないのか、それとも、俺だから、なのか。
どっちにしろ、嬉しいに変わりはない。

「力石よ、触るの? 触らないの?」
「あっ、すまん」

本郷さんは、俺に手を差し出したままで待っていてくれた。
こんなに優しい人が、一人でいるのだ。
もったいないという感情は間違ってないだろう。

一瞬だけ緊張して、その手に触れる。

さっきまで、箸を握って、ご機嫌で焼き魚をつまんでいた手だ。
美味しさに、にやけた表情まで思い出した。

「なんか……くすぐったいよな」
「嫌?」
「とんでもない、いいよ、いい……」
「いいんだ」
「えっ、あれ? 俺、変な言い方した?」
「そうでもないよ。ありがとう」

大げさに頭を振る本郷さんが、とても年上には見えない。
名残惜しいけど、そっと手を離して、お礼を言った。

「……そうか」
「なんだ?」
「本郷さんって、年上だって事、すぐに忘れてしまう」
「……それは……どういう……」

本郷さんがよくする、口を尖らせる仕草は、確実に俺はしない。
もっと若い頃でもなかった。
俺はちっとも可愛くない。

「本郷さんって、マカロニサラダ、好きだろ?」
「え? そりゃ、嫌いな男はいないだろ」
「俺はあまり食べないけど」
「なぬ? そうだっけ? 食べてるだろ? 俺、見たぞ」
「……まあ、全然食べないんじゃないから……」

頷きながら、言葉を続ける。

「メンチカツも、コロッケも……ソースかけて食べるのも、すごく好きだし」
「あのな、それも全部、男は好きだって!」
「可愛いなあ……」

本郷さんが目を見開いて、口をパクパクさせている。

「今夜は、焼き魚が美味かったけど、そのうち、本郷さんの好みに付き合うよ」
「おい力石、俺だって、焼き魚、大好きなんだけど!」

当然、そのくらい俺も知っている。
本郷さんの嫌いな食べ物なんて、何かあっただろうか。

そういえば、思いつかない。
いつだって、どんな食べ物も、楽しそうにきれいに食べている。

今、聞いてもいいけれど、この先、じっくりと見極めるのも楽しそうだ。

「そろそろ夏も終わるからな。冷たいビールを一気に流し込むのは、今のうちかな」
「……それなら、今でもいけるぞ」
「なるほど」

まだ明るい。
腹は軽くいっぱいになったくらいだ。

「それじゃ、せっかくだから、ビールでも」
「おお! 美味いところを、引っ掛けようぜ!」

さっと食べて、引き上げる。
このスタイルできていたけれど、本郷さんといるなら別だ。
二人でシェアする楽しさも、俺は覚えた。

「ビールの泡ってな、なんであんなに美味いかなあ?」
「その店の入れ方があるよな」
「自分でやった方が美味いって感じの店に入ったら、もうガッカリだよな。全然うまくない」
「へえ。本郷さんでもそんな店に入るんだ」

まだまだ知らない本郷さんの姿を知った気がした。
いつだって、俺が美味いと思う店で会う、本郷さんの選び方は絶妙なのだ。

「酔いすぎて、ふらっと吸い込まれた時とか……」
「それって、俺が知ってる酔いじゃないのかな。もっとひどい?」
「あのな、俺はそんな、いつだって酔っ払ってる訳じゃなくてだな」
「ちゃんと帰りついてるもんな。尊敬するよ」
「ムムッ……尊敬、するのか」

本郷さんの話は、楽しく、素直に相づちが打てる。
こんな時間が続くのは、本当に悪くない。
ずっと、歩いていてもいいくらいだ。

「もうちょっと行った先の店は、そんな事ないから」
「おお。早くビール飲みたい。喉が渇いたよ」
「いっぱい喋ってるもんな」

おうよ、と、力強く頷いた本郷さんには悪いけれど、なるべくゆっくり歩いて、次の店に向かっていた。 







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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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