しばらく振りです…
またこそこそと更新していこうと思います。
久しぶりなので加減がわからず、ややイチャついてる感じかも。
「……あれ?」
「雪?」
「この時期にか?」
飲み屋に入る前にも思ったけれど、今夜は格別に寒い。
桜の季節が近づいているのに、冬が戻って来たみたいだ。
今日の天気予報は、雨から雪。
昨日までの春っぽい天気はどこにいってしまったんだろう。
「ぬ? 別に降ってはないよな? 今の気のせいか?」
「俺も冷たいのが顔に触ったけどな」
二人して空を見上げる。
「……力石、モテ男のお主が何かやったか?」
「モテ……関係ある?」
「春を司る神様ってのは、美女で巨の乳だろ。絶対に力石のファンだ。お前が雪降らせろって言ったら、大喜びで降らせてくれるんじゃないか?」
ニヤリと本郷さんが笑う。
この人は、俺の事ばかり言うけれど、自分がどれだけ格好いいのか分かっていない節がある。
まっすぐに背を伸ばして歩く姿。
美味しい物を美味しそうな顔をして食べる素直な表情。
時に酔っ払ってふらふらしながらも、きちんと家に帰る律儀さ。
そして、どこにいてもすぐにわかる、優しくて甘い声。
本郷さんを知れば知るほど、好きでたまらなくなる。
「本郷さんみたいな人かも知れんぜ?」
「なぬ?」
大口を開けた本郷さんが俺を見た。
思わず笑い返してしまう。
「……俺、オジサンだろ。からかうなよ」
「からかってないよ。それに神様ってのは男が多いだろ? 俺は本郷さんの方がいいな」
近づいて、手をつないだ。
「おい……」
「寒くない?」
「……ちょっとだけ」
そっぽを向きながらも、俺とつないだ手には力を込めてくれた。
こういうところも大好きだ。
「本郷さん、このまま飲み直そうぜ」
「いいねえ。そういや、俺、大吟醸買っててさ、お主が来たら飲も……」
「本郷さんち? 大歓迎だ」
ちらりと俺を見て、また目をそらした。
でも手は放してくれないから、嫌われている訳ではない。
「嬉しいよ、本郷さん」
そっと耳元に囁いた。
ぎゅっと、今までにないくらい強い力で手が握り返される。
「泊まりアリでよろしくお願いします」
「何……いきなり、そんな、丁寧な言い方……」
慌てる顔もいい。
抱きしめようとしたら、顔に冷たい粒が触れた。
本郷さんも小さな声で冷たい、と呟く。
「水入り、ならぬ、雪入りだな」
天気に邪魔されるとは思わなかった。
「モテ男なのはどっちだよ……」
改めて。
手をつなぎ直して、本郷さんちに帰る事にした。