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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

67 ■ イカフライ

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67 ■ イカフライ

本郷さんが、いかにイカフライが好きかを、やや誇張して妄想しました。
清澄白川の回は、力石も力石。ホタテとイカが2個づつあるのなら、分ければいいのに(笑)
けれど、王様のエビはきちんと分けるあたり、深い愛情を感じて大好き。
力石からの好きも、ちょっと深めてみました。









本郷さんの考えている事は、分かるようで分からない。
今夜は、鷹が獲物を狩るような素早さで、イカフライを制した。
その瞬間の輝いた表情と、繊細な箸づかいは、しばらく忘れられそうにない。

「り、力石よ。お、俺な、俺、イカフライが死ぬほど好きでさ」
「あれ? そうだったっけ?」
「そうなんだ! 実はそう……」

握りこぶしを固めての主張は力強い。
けれど、いつかの店で、イカフライは好きじゃないと言っていた気がする。
ホタテの方が好きだと。
嬉しそうにホタテフライを頬張っていたのは、俺の記憶違いだっただろうか。

一緒に食べるなら、楽しい方がいい。
本郷さんが嬉しいなら、俺はそれを優先していたつもりだったけれど。
これだけ親しくなった本郷さんとでも、まだ意思の疎通が出来ない時がある。

そこを埋めていく楽しさも、本郷さんとだけだ。

「天地創造の時から決まってるんだ!」
「天地創造って……」

そこまでさかのぼって言うほど、好きだったとは。
実に大げさで、とても本郷さんらしい。

「そいつは、気づかなくて悪かったな。本郷さん」
「あっ、いや、そんな謝る事でもなくて……俺もすまん」

どっちも悪くないのに、同時に謝ってしまった。
じわりと込み上げてくる笑いをこらえながら、本郷さんの箸が動く様を眺める。
この人の、箸の持ち方も好きだ。

「ああ、取り返したぞ……やっとだ……」
「え?」
「あ、いや、何でもないよ。俺の話。ハハハのハ」

時々、誤魔化すように笑うのが、とにかく楽しい。
人によっては、嫌味ったらしくなる場合だってあると思うのに、本郷さんに関しては、そんな時が一度もない。
いつだって大人で、懐の広さを感じる。

本郷さんは、一人で食べている時から楽しそうだ。
メニューをじっと睨んで、時々、独り言を言いながら、真っ直ぐ通る声で注文する。
最初のビールも美味そうに飲むし、それから日本酒に流れるタイミングも絶妙だ。
そして何より、きれいに食べていく。
実に気持ちがいい。
いつまでも見ていられるし、多分俺は、その姿を肴に、酒も飲めるだろう。

最初、食べ物関係の仕事をしているのかと思った。
どうやらそうではないらしいけれど、そのあたり、まだ上手く聞けてない。
謎は謎のままで。
そんな些細な事も楽しくてたまらないのが、本郷さんとの付き合いだ。

「……やっぱ、食べるか?」
「え?」

いつの間にか、本郷さんの手が止まっていた。
イカフライは、手付かずのままだ。

「力石、イカフライ……好きなんだろ……」
「俺?」
「……そんな、見られてたら……俺、食えんよ……」
「あっ、そうじゃないよ。ごめん。食べてくれ」

律儀な本郷さんも大好きだ。
今の俺は、イカフライではなく、本郷さんを見ていたのに。

たしかに、俺もイカフライは好きだけど、本郷さんと比べたら、どっちが好きかなんて、誰にだってわかると思う。

「今夜のイカフライは、本郷さんに食べられたいと思ってるみたいだ」
「そ、そうかな……」
「そうだよ。だって、すごく美味そうだし。こんなに美味しそうなの、久しぶりに見た」

本郷さんの口元に笑みが浮かぶ。
ようやく、箸が動いた。
イカフライが、本来行くべきところに向かう。

「……何?」
「ん? いや、俺って、結構好きなものが多いなと思って……」
「……やっぱ、イカフライなんじゃ……」
「もっと、いいのだよ」
「へ?」

かじりついたイカフライのいい音が聞こえた。
それを聞きながら、俺は、ぐっとビールをあおる。

すごく美味い。

「イカフライよりもいいのって、何だ? ヒレカツ……いや、力石が言うんだ。そんな王道じゃないのかも……」

本郷さんの独り言が始まった。
時々早口になったりするし、言葉が途切れるから、何を言っているのかはよくわからないけれど、ものすごく色々考えているのだけは分かる。
今まさに、その状態だ。

「イカフライ……これは俺が食べてしまったから、力石が食べたいなら、追加で注文……いや、せっかくの陣立が、同じものというのも芸がない」

ちらりと、俺を見て、慌てて目をそらす。

「じゃあ、次に来た時に、力石がイカフライを食べたら……いや待て。多分その時も、俺はイカフライを食べたいはずだ……決して譲れん……あっ、もしかして、力石の事だから、意外な所を突いてくるのかもしれん……今夜のフライで、他にイカと戦えそうなのは……あ、しいたけか!」
「俺、しいたけ苦手」
「ああ! そうだったな……」

途中で言葉を挟む余裕がなかった。
本郷さんの声に聞き惚れていた。
響きがいい。
とても、気持ちが、いい。

「本郷さん、この先、一緒に食べる時、イカフライは優先的に譲るよ」
「へ? いいの?」
「二つあったら、その時は分けよう」
「おお。そいつはいい考えだ」

嬉しそうに笑う本郷さんに、ジョッキを向けた。
俺はまだ半分残っているけれど、本郷さんはもうほとんど飲みきっている。

「あ、気がつかなくてごめん。本郷さん、ビールいく?」
「ああ……けど、もう一回、おまえと乾杯してから」

強引に、音を重ねてくれた。
本郷さんの優しい所だ。

「すいません、こっちにビール追加で」
「はい、まいど!」

本郷さんがふと俺を見て、今夜一番の笑顔を見せてくれた。 



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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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