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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

36 ■ 英語

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36 ■ 英語

自分でも恥ずかしくなるシリーズ(いつもそうなんですが、今回特に)
思いついた時は、なんて力石格好いいんだ!って思ったんですが、恥ずかしい(笑)
ちなみに、最小限の簡単な会話にしたので、本当はもっと高度な会話を交わしているのだと思ってください。切実に。
 
 

 

 
 
「ああ、うまかった」
 
今日の昼食は、悩んだ末にラーメンを選択した。
目の前に美味いラーメンがあるのに、食べないなんて、俺には考えられない。
 
「ほんと。ここは美味いよな」
「……うん」
 
俺の後から力石が出てきた。
 
何が悔しいって、俺の至福のラーメンタイムに、力石も同じメニューをぶつけてきたことだ。
俺だけの秘密の店だったのに。
またしても力石に荒らされてしまった。
 
「本郷さん、この後は?」
「そうだなあ……」
 
一応、今日の予定はなくなっていたのだけど、そのまま力石に言うのもためらわれた。
落ち着いて酒を飲むには早すぎるし、かといって、お茶を飲むなんて習慣は全くない。
俺が、時間に余裕があっても、力石にはないかもしれない。
 
ふむ、と、視線を外した時だった。
 
「excuse me」
 
突然、俺と力石の間に、謎の言葉が飛び込んできた。
 
「へ?」
「×× ××?」
 
外国人観光客と思われる長身の男が、親しげな笑顔を浮かべて、俺を見ている。
こんな近くに他人が来ていたとは、全く気がついてなかった。
 
「あ……えっと……」
「Where is the station?」
 
ゆっくりとした発音だ。
なるほど。
このくらいなら俺にもわかる。
 
「ああ、ボールペンね」
「本郷さん?」
「ん?」
 
ポケットを探ろうとした俺の手を、力石が止めた。
 
「ボールペンって何?」
「え?」
 
もう一度、目の前の男の顔を見る。
 
「station?」
「ステーション……ああ、わかった! 駅か!」
 
俺の耳は酔っているのか。
文房具を探していると勘違いしてしまった。
 
「駅は……えっと……真っ直ぐ……ゴー、ストレート!」
 
ビシリと、指で示した。
よく見れば、先に駅への標識も見える。
間違ってはいない。
 
「Oh, thank you!」
 
男の安心した顔を見上げて、満面の笑顔で頷いた。
 
「Are you traveling?」
「へ?」

突然聞こえて来た流暢な英語に、思わず振り返った。
力石が笑顔だ。
男も、今力石の存在に気づいたように、目を見開く。
そして、早口で何やら言い出した。
俺の時とは全く違う。
力石は、臆することなく、その会話についていく。
 
「Have a nice trip」
「Thank you very much!」
 
力強い握手を交わしている。
俺は、ただその手を見つめていた。
 
……力石の野郎。




「よかったね、本郷さん」

大きく手を振りながら、長身の男は駅に向かって行った。
無事に進めた姿を見送って、何事もなかったかのように、力石が歩き出す。
俺の足は止まったままだ。
 
「ちょっと待ってくれ」
「ん?」
 
振り向いた力石の表情は、全く変わらない。
今の状況を、俺ならきっと得意げに振舞ってしまうだろう。
 
「おまえ、英語出来るんだ……」
「普通に」
 
ことも無げに言って、また先を行こうとする。
 
「ちょっと! そうだよな、前に傭兵と一緒にいたよな?」
「……傭兵?」
 
いつだったか、やはり出くわした店で、珍しく力石は人を連れていた。
どう見てもアメリカの傭兵にしか見えない風貌の男と、親しげに食事を楽しんでいたのだ。
 
「あ、いや、それはこっちの想像……っていうか!」
「ああ。話す機会も多いから」
「だったら! なんでおまえが相手をしなかったんだ?」
 
今、一番俺の言いたいことはそれだった。
あんなにも英語が出来るのなら、俺が苦労して話す必要は全くなかったのに。
情けなさすぎる、恥だけかいてしまった。
 
「……だって、向こうは最初から本郷さんしか見てなかっただろ?」
「そんなことはない」
「でも本郷さん、ちゃんと話せてたじゃないか」
 
ちっともちゃんとしてない。
 
「……力石、笑っただろ」
「笑った? いつ?」
「俺が、駅を聞き間違えた、時……」
 
ダメだ。
思い出したくもない。
こんな英語の教科書にでも載っていそうな王道の例文を、俺は聞き間違えたのだ。
文房具と駅。
 
単純にあの男は、メモを取るペンを探しているのだと思ったのだ。
今なら分かる。
ああ、力石には、聞かれたくなかった。
心の底から情けなくて、頭をかきむしりたくなる。
 
「本郷さんって、ほんと、頼もしいな」
「……へ?」
「見直したよ」
 
力石の声からは、嫌味も煽りも感じられない。
俺が感じたくないのかもしれないけれど。
 
「ど、どこを、どういう風に? あれで?」
 
そっとその目を見る。
柔らかい笑いが口元に残り、じっと俺を見つめていた。
 
「ちゃんと応えようとする、その態度にね」
「……そ、そう、かな……」
「今は少し酔ってるけど、いつもはもっと格好いいって言っておいたから」
「え! マジでか」

力石から聞く俺は、とても格好いいように思える。
ゆっくり、安堵が戻って来た。
 
「飲み直す?」
「あ……それ俺も思ってた」
 
腹は減ってない。
けれど、今の緊張で、満腹感が消え去ってしまった気がする。
こういう食べ方はよくないんだろうけど、力石も付き合うなら一緒だ。

「少し行くけど、早くから開いてる店がある。そこでいい?」
「おう!」
 
変な笑いを浮かべてしまった。
多分、どういいように考えても、さっきの力石の笑顔の方が格好よかった気がする。
 
いつもなら、力石を先に行かせることはしたくないけれど、今日はなんとなく、その背中を見ていたかった。
 
「本郷さん? どうした?」
「へ?」
「歩くのが遅い」
「あ、ああ」
 
促されて、俺の決意は即座に流れた。
今日ぐらい、力石と並んで歩くのは、悪いことではないとしてやる。



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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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