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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

30 ■ 星と焼き鳥

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30 ■ 星と焼き鳥

ずっと「格好いい本郷さん」を念頭に置いてるんですが、ちっとも……
どうして本郷さんは格好よくならないんだろう。
けど、格好よくなくても、力石は本郷さんが好きだよ。多分。









星を数えながら、薄暗い路地を歩いていた。
別にロマンチックな気分でいた訳じゃない。
ふと見上げた空で、異様に輝く星を見つけてしまったからだ。
ひとつだけ、やたらと大きく見える。
位置を変えても、目につく。

「あの星、なんだっけ……」

夜空に浮かぶ石を、星と名付けたのは誰なんだろう。
響きもいいし、見ていて、飽きない。

「知らなかったな。本郷さんにも教えてあげなくちゃ」

なんのつながりもないけれど、唐突に焼き鳥が食べたくなった。
今夜決めていた店を、あっさりと別の所に変える。
たまにはこういう夜があってもいい。

来た道を少し戻って、角を曲がった。
星はまだ見えている。


「……あ」

店に入った瞬間、足が止まってしまった。
見慣れた格好の男が、すっかり酔っ払っている。

「お? 力石か」
「やあ、こんばんは」

さすがに今夜は、会わないだろうと思っていた。
気まぐれで行き先を変えた店だ。
いつだって、約束もしていないのに会うとは、不意打ちのプレゼントが、さっき見た星だというくらいすごい。
ご機嫌な顔の、本郷さんが手招きをしてくる。

「いい感じに酔ってるな」
「もうおまえの食べる物はないぞ」
「ええ?」
「あ、俺、ビール追加で」

本郷さんの隣に腰を下ろしながら、俺も普通に注文する。
食べる物はまだ普通にあるのに、不思議な挨拶だ。

「焼き鳥、美味いよ。美味すぎる」
「だろうね。本郷さんの顔見たらわかるよ」

俺のビールと、本郷さんの追加が、同じタイミングで来た。
焼き鳥には、まずビールだ。

「カンパイ!」

ビールの泡が、本郷さんの口元に残る。
軽く飲んだ、その笑顔がたまらない。

「いや、ほんと、ビールの美味さときたら、だよ」

おしぼりを渡そうと思ったら、嬉しそうな舌がゆっくりと唇を舐めた。
目が離せないとは、不思議な感じだ。

「力石?」
「ああ。美味いよ」

俺は、どれだけ酔っても、口元に泡が残らないように飲むけれど、本郷さんは違う。
本郷さんじゃなかったら、多分、視界に入らないようにするかもしれない。

本郷さんの舌、か。

「今夜はどうした?」
「ん? 星を見てたら、焼き鳥が食べたくなってね」
「星? どういう繋がりなんだ?」
「自分でもよくわからない」

念願の焼き鳥を手に取る。
本当に、美味い。
ビールが止まらない。

「あ、そうだ。本郷さん。一番大きく輝いてる星って、あれなんだっけ?」
「俺に聞くか?」

本郷さんは、なんでも知っているような気がしていた。
まだ酔ってもないのに、俺は馴れ馴れしすぎたようだ。

「まあ、そうだけど……」
「月だ」
「……え?」
「一番大きくて、輝いてるのは、月」

ニヤリと、本郷さんが笑う。

「俺、星って言ったんだけど……」
「そもそも、星っていうのはな」

本郷さんの蘊蓄が始まった。
すでにしっかりと酔っ払っていると思ったけれど、意外と、まともな話だ。

「……本郷さん、マジで詳しいな」
「まあ、このくらいは常識だろ。男は星にロマンを感じるものだ」
「へえ」

星に興味はないけれど、本郷さんが語るのなら、興味が湧いてくる。
このままずっと、本郷さんの話を聞いていたいぐらいだ。

「力石にでもみつけられるぞ。ビール座ってのがあってな」
「ビール座?」

本郷さんが、グッと飲み干す。
そして、俺を見た。

「あ、間違えた。オリオン座」
「……オリオン座は、俺にも分かるけど、ビールと何の関係があるんだ? 全然違うだろ?」

まだ本郷さんは、まだ俺を見つめている。
じわじわと、その口元が震えている。

「……俺の、渾身のギャグを……」
「ギャグ? 何だ、それ」
「オリオンビールって、あるだろ? それをかけて……って、自分で言ったギャグの説明をするぐらい、情けない事はないぞ!」

テーブルに突っ伏して、本郷さんが嘆く。
そういう方向で攻めてこられるとは、思ってもなかった。

酔った本郷さんのギャグは、今まで何度も聞いた事があるのに、うっかりしていた。
いや、反応出来なかった俺は、早くも酔っているのだ。

多分、ビールの泡と、本郷さんの舌で。

「ごめん。あまりにも高度で、俺がついていけなかっただけだよ」
「……それ、けなしてるのか?」
「褒めてるんだよ。あ、焼き鳥食べようよ」

つくねがやってきた。
本郷さんが顔を上げて、少し笑顔になる。

「本郷さん、ほら。つくねは丸くて、月っぽい」
「……お、おお」
「俺に、もっと色々教えてくれよ。月も星も、本郷さんの話がいい」
「……よし。じゃあ、もう少し飲んで、だな。星の成り立ちから説明してやろう」

いきなり、壮大な話になった。

酔っ払いの話は、行きつ戻りつ、同じような事の繰り返しになる。
けれど、本郷さんの話は別だ。
何度聞いてもいい。

「さっきの、力石の星だけど」
「俺じゃないよ」
「いい。おまえの星にしとけ。帰りに確認しよう」

大きく開いた本郷さんの口に、つくねはあっさり消えていった。
満足そうに頷いている本郷さんを見ているだけで、俺もつくねを食べた気になって、ビールを飲み干した。


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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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