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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

44 ■ 冷たいおでん

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44 ■ 冷たいおでん

元ネタは、世界樹で本郷さんが戦っていた時、一人屋台で飲んでたお友達であります。
冷たくはなかったと思うんだけど……けど、あれは絶対にいいよ〜〜。
本郷さんの謎が深まるわ、力石は一人だわ(重要)で。
萌え、たぎります。

直し入れました!ごめん!







「よ、本郷さん」

夜というにはまだ早い。
さっき少し降った雨の匂いが残る道で、突然現れた力石に声をかけられた。
いつだって、俺の背後をそっと取る男だ。

「おお、力石か」
「もしかして、この先の店?」
「む……そう……」

自信たっぷりの顔にムカつく。
絶対の絶対に、違うと言ってやりたかった。

力石は、最初から俺の答えが全部分かっているんだという、どこから見ても苛立つ顔をしている。
俺よりも年下のくせに、本当になんでも知っている。
知ったかぶりではなく、どこでどう覚えたのか、きちんとした知識を持っているのだ。
正しくて深い。
それは自信にもつながっているのだろう。
腹を割って話し出すと、力石も言葉は力強くて安心出来る。

それが悔しい。
どう考えても悔しい。
いつでもいい。俺の知っている事で、ギャフンと言わせてやりたい。

「……そうとも、言わないんじゃない、かにゃ……」

噛んだ。

「え?」
「いやっ、この先の店かもしれないけど、違うかもしれない」

力石が俺の顔と、この先の店の明かりを見比べる。

「ふうん……」

考えている時の力石は、全く表情を崩さない。
あの頭の中で、必死で俺に対する返事を考えているはずなのに。
悲しいとか、悔しいとか、感情をあらわにしなさすぎる。

と、その顔を見つめた途端、力石は笑った。
唐突すぎて、心臓が止まりそうになる。

「なっ、何、だよ」
「本郷さんといると、哲学ってこういう所から生まれて、考えていくんだなって思うよ」
「哲学って……」
「勉強になるだろ?」

俺の嫌味も通じない。
どこまでいっても、力石はクールだ。
認めたくないけれど、今日も俺は勝てない。

「けどさ、本郷さん。今日は冷たいおでんって気分だろ? そこに行くんだろ?」

力で押してくる。
まさに、まさにそうだ。
力石は、俺の心を読むんだろうか。
この先にある店の、うまいと評判の一品が、冷たいおでんなのだ。

寒い冬に食べる熱々のおでん。
そこに投入する、熱燗の輝き。
どれだけ唸っても足りない、おでんは冬の幸せだ。

それなのに、俺は知ってしまった。
真夏の、冷たいおでんの存在を。

熱いのも当然うまいけれど、冷たいおでんという不思議がこの世に生まれていたのだ。
俺が知らぬ間に。
そのけしからん味を確かめようと、今夜わざわざやってきたのだ。

ぐっと、握りこぶしを固めた。
力石が背後から忍び寄ってきただけで、俺がその道を譲る必要もないだろう。

「まあ、な。確かにそのつもりで、きた……」
「それじゃあ、一緒に食べようぜ」

俺の心の葛藤に気づいてない力石が、軽く肩をたたいてくる。

こいつの手が、もっと嫌だとよかった。
そうしたら、つねって、叩いて、はたき落としてやるのに。
そんな事、今の力石相手には出来ない。

「そこさ、トマトがうまいんだよ」
「……もしかして、力石って、ここ、初めてじゃないとか?」
「二度目」
「へ、へえ……そう」

同じ立場だと思っていたのに、力石の方が先にいた。
悔しい気持ちがどんどん深まっていく。

「あのな……」
「ん? どうした?」
「たまには、俺に……」
「うん」
「勝、ちを……」
「何って?」

力石が、俺の顔を覗き込んだ。
間近で目があう。

「おっ、おい……そんな近いの……って、目が……」
「本郷さん、今日、どうかした?」
「へ?」
「なんか、さっきからずっと、フラフラしてないか?」
「俺が?」
「熱でもあるんじゃ……?」

不意に伸びてきた手が、俺の頰を撫でた。
思わず身体が固くなる。
この手に、首でも絞められたら死んでしまう。

「力石よ、熱はかる時ってな、額をこう……」
「本郷さんの額は、なかなか触れないから」

力石の指先が、帽子をそっと触る。
ああ、そういう事か。
今夜は特に、深く帽子を被っていたのだ。

「額、いい?」
「お、おお……いいけど。熱ははかったからもういいぞ」
「分かった」

改めて、帽子を取った。
頭が淋しい。

「まっすぐ、立てる?」
「おまえなあ……」

言われて、まっすぐに立ってみた。
力石も、俺に合わせて背筋を伸ばす。

意外と、俺と変わらない。
今あう視線は、そう悪くはなかった。

なんとなく気恥ずかしくなって、そっと帽子をかぶり直す。

「本郷さんって、もっと小柄だと思ってたけど、そうでもないな」
「おまえこそ……」
「もうすでに飲んでるんじゃないよな?」
「まさか、今からが一軒目だよ。今夜の輝ける一品を味わうんだ」
「よかった。ぜひ俺も付き合うよ」

今の言い方。
力石が主導権を握っているのではなく、俺が先んじていたと聞こえた。
冷たいおでんに向かって、力石を従える俺。
なんて格好いいんだろう。

俺の方が有利なら、力石と一緒に食べるのも悪くない。

「おお。楽しみになってきた。腹が鳴る!」
「本郷さん、元気出てきたな。俺と食べるのが嬉しい?」
「お……おまえなあ! トマトだよ、トマト」

思わず、頷きそうになっていた。
違う違う。
大きく頭を振って、考えを吹き飛ばす。

「本郷さん。俺、この間食べた時にな」
「お?」
「ぜひとも、本郷さんと一緒に食べたくなったんだ」
「へえ……」

力石の言葉が、とても優しく聞こえた。




 

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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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