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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

16 ■ おみくじ

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16 ■ おみくじ

今日はちょっと涼しいので、ものすごく熱燗飲みたいという思いが、小話になりました。
勢いで書いたので、非常に短い話です。
(朝の覚え書きの色について書くつもりが……なぜか、これに……)







今夜の店は、燗酒がうまい。
出された徳利とお猪口の、見た目、土っぽい具合がたまらず、うまさに拍車をかける。
もっとも俺は、何焼きとか、どこの銘柄とかには、まったく興味がないのだけど。
うまい物はうまい。
あっという間に二合を空けてしまった。

「いらっしゃい」
「空いてますか?」
「どうぞ」

その声に、一瞬酔いが覚めた。
振り返りたくもない。

「あれ、本郷さん」
「……また会ったな」

贅沢にも、俺は、ちょうど空いていたカウンターの両隣の空間をゆったりと、自由に使っていたのだ。
当たり前のように力石がやってきて、腰を下ろす。
俺の左側。
なんとなく、力石が椅子を引く手の動きを見てしまった。

「ほう、ゴキゲンに飲んでるね」
「うまいよ、全部」
「だろうね」

ちらりと壁のメニューを見上げて、いつもと変わらぬ注文する。
力石の隙のなさは、本気で憎い。

「あと、熱燗、一合お願いします」
「お……」

ちらりと、力石は俺を見た。
ということは、俺を意識してのメニュー。

「急に冷えてきたよね。やっぱ、熱燗がおいしいよ」
「そうだろうとも」

俺の真似。
力石は、俺を真似てきた。
いい感じの、今夜は、俺が優位に立った。

「早くに来てた?」
「ん、今日は時間があったんで、あちこち覗いてから来たというか……」

途中で神社に寄ったことを思い出した。

「そうだ。力石よ、いいものやる」
「え?」
「お土産、でもないけど……」

ポケットに無造作に突っ込んでいた、おみくじ。

「何、これ」
「何気なくひいたら、大吉だったんだよ。いいぞ、大吉だぜ。すごいだろ」

律儀に、力石は受け取ってくれた。
くしゃくしゃになっていたおみくじを広げる。

「けど、この大吉は、本郷さんのものだよね。俺がもらっても……」
「いいの、いいの。いい運は分けようぜ」
「へえ……待ち人、来る。願い、叶う。病、治る……全部いいよ、本郷さん」

読み上げていく力石の声がいい。
今まで気がつかなかったけれど、意外と若い声をしている。
酒が入ると、また変わってくるんだろうか。

力石は、丁寧に巻き直した。
開いてないかのようなきれいな形に戻る。

「ひとまず、ありがとう」

力石の熱燗が来た。
俺も残りをお猪口に移し、軽く乾杯する。

燗酒のいいところは、ゆっくりと変わっていく温度も楽しめるところだ。
力石は、ついたばかりの熱燗。
俺のは、少しおいた燗酒。
人生の差って感じがしてくる。

「ああ、うまい」
「俺も」

刺身も、煮付けも。
うまそうに食べる力石を見ていると、俺も追いかけたくなってきた。

「……いかん」
「どうした?」
「い、いや、なんでもない」

力石が、俺を追いかけている今夜なのに、腹具合もよくなってきた俺が、追いかけ直してどうする。

「そろそろ、帰る」
「あ、そうなんだ」

一瞬、力石の手が動いたように見えた。

「何?」
「なんでもない。またな」
「おう」

ふらりと立ち上がり、まだまだ歩けることの確認をする。
大丈夫、熱燗二合ぐらいで、酔っ払う俺ではない。

「気をつけて、本郷さん」
「おお、力石。おやすみ」
「……おやすみ」

飲み屋で交わす挨拶ではないけれど、とりあえず、力石に手を振って、俺は会計を済ませた。

店を出る前に、ちらっと力石を見た。

「なんと……」

きれいに巻いたおみくじを、もう一度ひらいて、力石はじっくり読んでいるようだった。
別に、暗号なんて隠してない。
力石が、あんなにおみくじを好きだとは知らなかった。
そのうち、一緒に神社を巡ってもいいかもしれない。

さっさと俺は、店を後にした。

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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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