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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

31 □ 悲しみの夜景(笑)

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31 □ 悲しみの夜景(笑)

迸りました。ええ。もういてもたってもいられず。
「その六十四」での妄想です。
あれは完璧に力本回でしょう! という思い込みより。
ちょっと、ラブ度増し増しです。だって、そういう話だったんだもん(独り言)

浅草から覗き見しただけなので、スカイツリーは、いつか登ってみたいです。







「……押上くんだりまで来て、か……」

歪む視界は、目の前を隔てるガラスが、曇っているせいだとばかりに思っていた。
ため息をついて、ようやく泣いている自分に気がついた。

俺は今まで、何をやっていたんだろうか。

そっとガラスに近づいて、眼下に広がる星を見る。
いや、あれは星ではない。
眩しく映る幸せそうな夜景だ。
あの輝きの中で、俺ぐらい悲しみを味わっている人間は、そうはいないに違いない。
優しすぎて、どんどん落ち込んでいく。

「点在する電気だろ……あんなの、ただの電気だし……」

自分でも、嫌な言い方をしたと思った。
酔った勢いではない。
今夜の俺は、果てしなく深い敗北感に、打ちひしがれていたのだ。

スカイツリーの見える所で、なぜ力石に出会ったのか。
悔しいのはそれだけではない。
俺が入った時点で、力石は店に馴染むように食を楽しんでいた事だ。
選んでいた料理も抜け目ない。
店員とも、ごく普通に打ち解けていた。
あの状態でなら、何をやっても真似っ子になるのは俺だ。
どうして、力石にかなわないのだろうか。

「ああ! もう! 俺が嫌だ!!」
「……困った本郷さんだな」

振り返らなくても、目の前のガラスに映っている。
黒い、見慣れない力石。

「どうした? 俺、何かしたっけ?」

力石の声は優しい。
さっき、俺を打ちのめした圧倒的な脅威は感じられない。

どうした、は、俺が聞きたいくらいだ。

「なあ、本郷さん」
「おおぅ!」

音もなく近寄って来た力石に、肩を触れられて、飛び上がってしまった。
その手は、俺の動きを封じるかのように重い。

「あの店、気に入らなかった?」
「いいや。すごくよかった」
「じゃあどうして泣いてるんだ? こんな所で……」
「俺にもわからん!」

思わず子供みたいに叫んでしまった。
目を丸くした力石が、吹き出す。

「わからなくて泣くって……本郷さん」

突然、強い力で肩を抱き寄せられた。
力石の身体に密着する。

「な、何をしやがる」
「何をって、泣いてるから」
「帽子が! 困る、だろ……」
「外したらいい」

力石が俺の帽子を掴んだ。
そのまま、可能な範囲の遠くに持っていってしまう。

「ちょっと待って、俺の……」
「今は邪魔」

取り返そうと思ったのに、俺の手は、意思に反して動かない。
肩から、力石に押さえつけられている。

「本郷さんが泣いてると、ちょっと困る」
「なんで?」
「俺も、どうしたらいいのか、わからなくなるから」
「……じゃあ、放っておけ」
「それが出来るなら、本郷さんに声はかけてないからな」

頰が熱くなった。
視線を向けるまでもない。
力石の唇が撫でている。

「こ、こんな、とこで……」
「誰もいないよ」
「どこかにカメラが! ガラスにも映ってる!」
「別にカメラはいいよ。それに、さっきと同じだ」
「へ?」

ガラスに映る力石を見た。
力石も、ガラスに映る俺を見る。
直接じゃない視線のやりとりの不自由さに、思わず笑いが漏れる。

「本郷さんが店に入って来た時、俺はすぐにわかったのに」

悔しいけれど、俺は一瞬わからなかった。

「……どうして、いつもと格好が違う、んだ?」
「ああ、これ?」
「裏切りじゃないのか」

思ってもない言葉が、勝手に口から出た。
力石も目を丸くする。
俺もだ。

「裏切りって?」
「い、いや、別にそう、深い意味じゃなくて……そんな、いつもと全然違う格好じゃ、俺が気付かなくて当然だろ」
「それを言うなら、格好だけで俺に気付かない本郷さんは、もっと裏切りだよ」
「おお……」

なんとなく、納得してしまう。

「俺を、ちゃんと覚えていてくれよ」
「……うおっ!」

力石の唇が、俺の涙の跡をたどり始めた。
くすぐったくて、変な声が出る。

「こ、こいつ、こら!」
「塩っ気が足りないとは思わないけど、追加するにはちょうどいいかな。ね?」
「勝手に取るな! 俺の塩分だ!」

調子に乗って、舌まで伸ばしかけていた力石が、じっと俺を見る。
ガラスに映る視線は、直接見るより身体にくる。

「じゃあ、改めて。本郷さんの塩分、俺にくれよ」

より強引になった舌が、俺の目元をゆっくり撫でて、時々くすぐるように頰と鼻の先に触れ、口唇まで降りて来た。
言葉も、声すら出ない。

「……本郷さんの泣いてる理由が、わかるようになりたい」
「絶、対に……それ、無理。俺にもわからないんだから……」
「うん。本郷さんにわからなくても、俺はわかっていたいんだ」
「……意味が……」

俺自身のことを、この俺がわからないのに、力石がどうわかると言うんだろう。

なすがままで、力石と口づけを繰り返す。

「……本郷さん、手に力が入りすぎだ」

ふと気づけば、俺は、握りこぶしを固めたまま、直立不動で立ち尽くしていた。
ガラスに映る姿は、恐ろしいくらい、力石に抱き寄せられている。

「……ビールが、苦かった……」
「え? そうなんだ。それだけ?」
「おお……」

苦いのは、ビールのせいだけではない。
けれど、そこを突き詰めていくと、また俺は泣いてしまいそうだ。
そして、きっと力石に舐められる。
いや、舐められるのはいいけれど、舐められたくはない。
難しい、言葉の言い回しだ。

「本郷さん?」
「あ、いや、なんでもない」

喉の奥で、力石が笑う。
こいつは、笑う時もクールだ。
さっきまであれほど憎かったのに、力石がそばにいるのはいい。
いないと探してしまう俺は、きっと酔っているのだ。
そうしておこう。

「じゃあ、飲み直しに行こうか」
「……燗酒がいい」
「え。ビールじゃないのか」

さっきの店で、力石が飲んでいた燗酒は、たまらなく美味そうだった。
店を変えるのなら、真似をした事にはならないだろう。

「まあ、本郷さんが飲みたいなら」

俺を抱き寄せていた腕が離れた途端、何やら肩のあたりが冷えて来た。
力石の手から帽子が帰って来て、俺の頭にかぶせられる。
これも悪くはないけれど、帽子は、俺の好きにしたい。
そっと、自分で向きを直した。
ガラスが目の前にあるのはいい。

「よし……」
「似合うな、本郷さん」
「おお」

空くのを待っていたかように、力石が、俺の手を掴んできた。
指が絡んで、離れない。

「で? この手は?」
「本郷さんが、泣かないように」
「泣いてないって」
「はいはい」
「……燗酒だぞ、さっきより美味そうなやつ!」
「わかってる」

もっと文句を言おうと思ったけれど、力石が笑っているのを見てやめた。
やっぱり、俺の方が幼稚な気がしてくる。

「まあ、苦いビールでもいい、けど」

小さな声で言ったのに、力石には聞こえたようだ。
笑いながら、よりきつく、俺の手を握りしめてきた。




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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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