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おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

6 ■ 酔っぱらいの向かう先

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6 ■ 酔っぱらいの向かう先

ちょっと酔いすぎた本郷さんというのは、かなり好きです。それを見守る力石もいい。
今回、一部下ネタあり(非エロのしょ〜もない系)
そのうち、力石を潰したいんですが、このままだと難しいな……










「よう、ゴキゲンだな」

最悪、だ。

一瞬で酔いが回ってしまった。
立ち上がったものの、ペタリとまた腰を落としてしまう。
なんと。真横に、力石が座っていたのだ。

ビールを飲みながら、力石が、ニヤリと笑う。
ここしばらく、この状況はよくあったけれど、今夜ぐらい最悪な出会い方もないだろう。

「あ、れ? そこにいた、っけ?」

入り口に背を向けて座っていたせいで、入ってきた力石に全く気付けなかった。
それ以前に、気持ち良く酔っていたのは大きい。

「ずいぶん前からな。本郷さん、酔っててちっとも気がつかなかっただろ」
「お……おお……」

日中の暑さにたえきれず、冷たいビールを堪能した。
ポテトサラダの強烈な誘惑にはじまり、色々と止まらなくなった。
こんなにも美味しい食べ物と酒の組み合わせじゃ、酔うなという方が無理だ。

「ほんと、本郷さんの酔い方は楽しいね」
「そ、そんなことは、ない、ぜ、と思う、よ……」
「向かいに座ろうかと思ったんだけど、まあ、こっちで見物させてもらった」
「余計なことを……」

こんな近くにいたのに、なんという敗北。
力石は、ずるい。とにかくずるい。
どうしてここまで、酔わずにいられるんだろう。
美味しい食べ物の記憶が、恥ずかしさに変わっていく。

「ああ、そうだ。本郷さん、トイレはその奥だぜ」
「何……」
「さっきから、何度も言ってたから」

忘れていた。
俺は、トイレに行こうと立ち上がり、力石を見つけたのだ。

そっと立ち上がった俺は、肩をすくめるようにして、力石の横をすり抜ける。
その瞬間、クスリと笑われた気がした。

さっき俺が、おしっこ、と、小学生でも言わない言葉を繰り返していたのも、聞かれていたのだ。

衝撃に、足元がふらつく。
力石に気づかれないように、そろそろと歩いた。



トイレまでの道のりが、やけに長く感じられた。

クソ、クソ、クソ。
便器にむかって激しく後悔したけれど、もうどうしようもない。
どうして俺は、ここまで酔ってしまったのか。
見てるなら、止めろ、力石。




トイレから戻ると、力石は焼酎を呑んでいた。

「あ、それは芋?」
「そう。ちょっと芋の甘いのが呑みたくて」
「へえ……」
「本郷さんもいく?」
「いや、俺は焼酎は……」

座って気がついた。
俺の席は、力石の隣だったはずなのに、普通に、力石の前に座ってしまった。
力石も、何事もなかったように受け入れる。

「一緒に呑もうか、本郷さん」
「……お、おお」
「って、もう酔っぱらってるから、無理っぽいな」

笑顔が憎い。

「酔ってないよ。さましてきたから、まだ呑めるぞ」

力石が吹き出した。

「本郷さん、そういうのは、食べる席で言う話じゃないぜ」
「……へ?」
「トイレで出してきた、っていうんだろ?」
「おまえなあ!」

そんなつもりは全然ない。
でも、そうともとれる言い方をしてしまった。
下品だ。
しかし、言葉のわりに、力石は嬉しそうに笑っている。

仕切り直しだ。

「軽く……俺は冷酒、いくぜ」
「ほう、いいね。じゃあ、俺もつきあうとするか」
「……あ」
「何?」
「おまえって、俺より呑んだこと、ないんじゃないか?」

力石が目を丸くした。

「俺は、ベロンベロンになるまで呑むことあるけど、おまえがそこまで呑んだ姿は見たことがないぞ」
「……そうかな? 結構呑むけど」
「よし。呑め」
「え?」
「俺が許す。酔い潰れろ。力石は、酔い潰れたらいい」
「おいおい、本郷さん……」

ぐらりと、視界が傾いた。

「本郷さん!」
「あ、大丈夫。酔ってない……」

傾いた視界を、ちゃんと自分で直せた。
きちんと座り直して、力石の顔を見る。

「……大丈夫かなあ……」



しばらく待ったけれど、俺の冷酒は来なかった。
どうやら注文は通ってなく、代わりにしじみ汁が来た。

「これ、俺?」
「本郷さん、これ飲んだらいい」

柔らかく優しい味のしじみ汁に、俺は気が遠くなりそうだった。
ゆっくり、じっくりと飲み干した。
その間、力石はじっと俺を見つめていたようだ。

「潰れるまで、は、また改めて。今夜だと、本郷さん、俺にかなわないだろ」
「な、に……」
「すいません、お勘定、お願いします。この人の分も一緒に」

何、いらんことを言い出すんだ、と言った俺の声は、力石に届かなかった。
多分、言葉にならなかったのかもしれない。
席を立った力石が、会計を済まそうとしている。
それを俺は、ぼんやりと見ていた。

どうも今夜の敗因は、トイレから出て、一気に酔いが回ったことだろう。
悔しい。
力石の出現も、俺のバランスを崩した。

「本郷さん、帰れる?」
「……ちょっと待て、力石」

ようやく席を立って、力石の後を追いかけた。

「何?」
「これ、持っていけ」

財布を、力石につきつけていた。

「……これは、いらないよ」
「いいから、取っとけ」
「これもらったら、本郷さん、帰れないだろ」
「お……」
「近いうちに、ご馳走してくれよ」
「むう……」

コートのポケットに、財布を押し込まれる。
ポン、ポン、と、肩までたたかれる始末だ。

「ほんとに、大丈夫? 送ろうか?」
「いい、ほんとにいい。ほら、歩いてるだろ」

帰巣本能というのか、口調も身体も酔っているのに、足は普通に動いている。
ダテに呑んだくれているわけじゃない。
俺は、ちゃんとわかっている酔っぱらいなのだ。

この動きを見て、力石も納得したようだ。

「それじゃ、また」
「おお、そのうち」

わざとらしく、バタバタと手を振って、力石を見送った。
力石の姿が消えてから、俺は、しじみ汁の優しい味は、どこから来ているのか……なんて考えながら店を後にしていた。

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プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
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サークル 本郷格好委員会

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