忍者ブログ

おもいつくままに

色々と止まらなくなり、ひとまず置き場所をつくりました。

5 ■ 梅雨の道行

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

5 ■ 梅雨の道行

そろそろ投稿と思っていたのに、あまりにも短い話なので挫折しました……
いつもと同じ、一緒に飲みに行く感じで。







雨がやまない。
今夜行こうと決めていた店は、まだ少し先にある。
駅の改札を抜けたものの、出るに出られず、足は止まっていた。
このまま小降りになるのを待つべきか、悩んでいた時だった。

「本郷さん?」

思いがけず、声をかけられた。
視線をむけた先に、傘をさした力石がいる。
どこから、どうやってくるのか、力石は、いつも不思議な現れ方をする。

「まさかおまえと、こんなところで会うとは……」
「どこ行くんだ?」
「天ぷら……」
「ああ、ちょっと先だな」

悔しい。
また、力石も知っている店のようだ。

「入る?」
「店? もちろん……」
「いや、傘に」
「え」

おもむろに、力石が傘を差し出してきた。
一瞬、身体がひいてしまう。

「そこ、俺も行くよ」
「何?」

これは、本心なんだろうか。
俺が傘を持っていないから、わざとそんな風に言っているのではないのか。
まさかここで、敵の情けに触れるとは。

じっと、力石を見つめてしまった。

「本郷さん、行こう。いい冷酒が入ったって聞いてるよ」
「おお……天ぷらには、冷酒がいい、よな」

その噂は、俺も聞いてきた。
力石に先導される形になるのは、とにかく口惜しい。
けれど、このまま雨がやむのを待っていたら、店が閉まってしまいそうだ。

「じゃあ、お言葉に甘えて」
「どうぞ」

力石の差し出す傘の下に、そっと身体をすべりこませた。
とはいっても、並ぶと、俺も力石も、半分くらい傘からはみ出している。
なんだか、おかしい。

「なあ、力石。結局、濡れるんじゃないか?」
「それでも、ここでやむのを待つよりは、天ぷらと冷酒に近づくよ」
「まあ、そう、だな」

こいつは、俺の胃袋を掴みにきやがる。
頷いて、歩き出した。
ゆっくりと、あたりも動きだす。

「……梅雨も、もう明けるかな」

黙って歩くのも気まずい。
俺から普通の話を切り出した。
昼間、そんなニュースを見た気がする。

「そうだな。そしたら、一気にビールの季節だな」
「おお、いいねえ。ビールに天ぷらも悪くないぞ」
「ビールだったら、串カツだろ。そういえば、いい店があるんだよ」
「へえ」

降る雨が、全く気にならないくらい、話が白熱した。
力石のすすめるいい店を、素直に聞けた気もする。
もちろんそれは、今夜行く店に入るまでの間だけれど。


「意外と近かったね」
「すまん、力石。助かった」
「いやいや。せっかくだから、天ぷら楽しもう」
「冷酒もな」
「何がいいかな」

傘をたたむ力石の、濡れている肩を払ってやった。

「本郷さん」
「ん?」
「そっちこそ、濡れてるだろ」
「ああ、俺は大丈夫……」

同じように、肩を払われる。
何やらくすぐったい。
当たり前だけど、力石の手は濡れていた。
やはり、今夜の雨はやみそうにない。

「入るよ」
「お、おお」

店に入ると、おしぼりがあるから、大丈夫だろう。
俺は、ポケットに手を突っ込んで、すっかり拭いた気になっていたのだった。

拍手

PR

コメント

カレンダー

03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30

プロフィール

HN:
タケル
自己紹介:
本力にどハマりしました。
そしてドラマ版を見たら、本郷可愛さにグッと胸掴まれて……(萌えは勝手です)結局、二人が好きなのだと、自分で納得。

小話は「■ 本力」「□ 力本」分けてみました。
ほぼ変わりはないけど、ひとまずの目安にしていただけたらです。
(小話が増えてきたので、自分の確認の意味も込めて、番号も振ってみました)

とにかくもう、二人が可愛くて(格好よくても含まれる)たまらんので、日常っぽい短い話や、覚え書き等、こそっと置いていきます。

※ 原作の感想は、金曜の朝頃、バレはないように萌え語ります……(この発散もしたくて作ったブログなので)


つぶやき @takerun_001
pixivID 18019731
サークル 本郷格好委員会

1